公開日:2025.05.30更新日:2025.05.30

海外旅行とワクチンに関するアンケート調査|渡航前のワクチン接種は必要?


近年、グローバル化の進展とともに海外旅行者数が急増する中、渡航先での健康管理に関する意識も高まっています。

特にコロナ禍を経験した私たちにとって、ワクチン接種の重要性は以前にも増して認識されるようになりました。

しかし、実際に海外旅行前にどのようなワクチンを接種すべきか、またその必要性についての認識は個人で差があります。

本調査では、直近1年以内に海外へ渡航した日本人旅行者84名を対象に、海外渡航前のワクチン接種に関する意識と実態を徹底分析。

「必須」と考える人から「不要」と判断する人まで、その背景にある理由とともに探っていきます。

アンケート調査の概要

このたび、実施したアンケート調査の概要は以下のとおりです。

 

調査テーマ
海外旅行とワクチンに関する調査
調査方法
オンラインアンケート
調査対象
回答者総数:109名

 

回答者109名のうち、直近1年以内に海外旅行へ出かけたという人は84名でした。

今回は、こちらの84名を対象に、海外旅行とワクチンに関してさらなる調査を行いましたので、結果をご紹介します。

どの国に旅行した?人気の渡航先ランキング

※複数回答可

この結果からは、近距離で親しみやすいアジア圏の国々が人気である一方、欧米やそのほかの地域への渡航は限定的であることが読み取れます。

アジア諸国が多数ランクインしている背景には、地理的・文化的な近さや航空便の利便性があると考えられます。

もっとも渡航者の多い台湾は、観光・ビジネスの両面で人気の高いエリアです。

一方、アメリカも観光・留学・出張など多目的な渡航先としての地位を確立しています。

韓国は第3位にランクインしており、日本国内でもトレンドとなっているK-POPや韓国グルメなど文化的な影響が反映されていると考えられます。

ヨーロッパ方面はイギリス、イタリア、ドイツ、フランスなどが含まれるものの、それぞれ少人数にとどまっており、渡航コストや距離が要因と推測されるでしょう。

旅行の目的が観光中心の場合、費用と時間のバランスからアジア圏が選ばれやすいのかもしれません。

ワクチン接種の有無とその割合

そもそもトラベラーズワクチン(海外渡航者ワクチン)とは、海外へ渡航する前に、渡航先で流行している感染症から身を守るために接種するワクチンのことです。

「直近1年以内で海外旅行をした」と回答した84名に渡航前のワクチン接種の有無を質問したところ、過半数が「接種していない」という回答でした。

厚生労働省検疫所「FORTH」と「日本内科学会雑誌」によると、海外では日本ではあまり見られない黄熱、A型・B型肝炎、狂犬病、髄膜炎菌性髄膜炎などの感染症リスクが高まります。

これらの感染症は一度感染すると重症化する可能性が高く、途上国では適切な医療が受けられないこともあるため、事前の予防がもっとも効果的です。

特に農村部への長期滞在や医療活動、動物との接触がある場合はリスクが増大します。

科学的根拠に基づくと、予防接種によってA型肝炎や黄熱などの感染リスクを大幅に低減できることが実証されています。

また、WHOも渡航者へのワクチン接種を推奨しており、感染症の国際的な拡散を防ぐ公衆衛生対策として位置づけられています。

旅行先や滞在期間、活動内容に応じた適切なワクチン接種は、安全で健康な海外渡航を実現するための基本的な準備といえるでしょう。

参考:厚生労働省検疫所「FORTH」

日本内科学会雑誌

ワクチンの接種別分布

※複数回答可

このアンケート結果からは、旅行者が渡航先のリスクに応じた予防接種を選んでいることが分かります。

もっとも多く接種されているのは狂犬病ワクチンで、アジアやアフリカの一部地域で命に関わる深刻な感染症となっていることから、アジア圏への旅行者に選ばれていると考えられます。

実際、タイへの旅行者が接種済と回答していました。

続いて、三種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風)や肺炎球菌、日本脳炎(国産)など、重症化リスクが高い感染症に対するワクチンが上位にランクインしています。

一方でマラリア予防薬、髄膜炎ワクチン、ポリオ、日本脳炎(輸入)は限定的となっていました。

なお、それぞれがどんな特性のワクチンなのか、「ワクチンNavi」では詳細に紹介しているので、気になった方はチェックしてみてください。

ワクチン接種しないことで想定されるトラブル

ワクチン接種をせずに海外渡航した場合、以下のようなトラブルが想定されます。

これらのトラブルを避けるためにも、渡航前に必ず医療機関を受診し、渡航先の感染症情報や自身の健康状態などを考慮して、適切なワクチン接種を検討することが重要です。

感染症にかかる可能性がある

ワクチン未接種による感染症リスクは、近年特に警戒すべき状況となっています。

2024年以降、日本国内での麻疹感染者が急増し、海外渡航者から持ち込まれたウイルスがワクチン未接種者を中心に広がっています。

麻疹は感染力が非常に強く、未接種者の約9割が感染するとされ、肺炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こす危険性もあります。

かつて「排除状態」だった日本も、予防接種率の低下により再流行の兆しが見られ、特に1972~90年代生まれの成人層で抗体保有率が低下しています。

感染拡大は学校や職場の一時閉鎖などの社会的影響も大きく、ワクチン接種は自身と周囲を守る社会的責任といえます。

参考:厚生労働省|麻しんについて

野生動物と接触があった際に危険にさらされる

狂犬病は発症すればほぼ100%死亡する極めて危険な感染症です。

日本では1957年以降国内発生がありませんが、タイなどのアジア諸国やアフリカでは今も「身近な脅威」として多くの死者が出ています。

実際に2006年には、フィリピンで犬にかまれた日本人旅行者が帰国後に発症して死亡した事例もあります。

狂犬病ウイルスは動物の唾液から傷口に侵入し、犬や猫だけでなく牛や野生動物からも感染の可能性があります。

発症前であれば暴露後予防(PEP)で救命できますが、日本では免疫グロブリンが入手しにくく、輸入ワクチンも限られているため、事前の予防接種がもっとも確実な対策です。

特にアジア圏への渡航者は、動物との接触に注意するだけでなく、ワクチン接種で命を守ることが強く推奨されています。

参考:厚生労働省|狂犬病

接種証明がなく留学(入学)や病院での面会ができない

海外旅行を検討している人の中には、留学も兼ねて考えている人もいるでしょう。

留学を計画する際は、予防接種状況が重要視されます。

国や大学によっては、入国時や入学時に特定のワクチン接種証明の提出が義務付けられており、麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘、B型肝炎、破傷風、ジフテリアなどが要求されることがあります。

これらの証明がない場合、入学許可や寮への入居が認められないケースもあるのです。

日本の大学が提供する海外プログラムでも、現地の条件に従い接種記録の提出が必要となることが多く、未接種ではプログラム参加自体ができなくなる可能性があります。

渡航後に現地で追加接種を求められると、高額な医療費や時間的負担が生じ、留学計画に支障をきたしかねません。

特にコロナ禍以降、感染症対策要件が強化され、健康証明の確認が厳格化している傾向です。

パスポート同様、必要な予防接種は早めに完了しておくことが不可欠です。

ワクチン接種して良かったと感じたことは?

今回のアンケート調査で「渡航前にワクチン接種をした」と回答した人たちに、「接種してよかった」と感じたことを聞いてみました。

海外旅行前にワクチンを接種したことで、安全面・心理面での効果が実感されていることが分かります。

実際、ワクチン接種には多くのメリットがあります。第一に、感染症から自分の命と健康を守ることができます。

黄熱や狂犬病、A型肝炎などの重篤な感染症を予防することで、安心して海外渡航や生活を楽しめるでしょう。

「虫が多かったので(ワクチン接種)しておいてよかった」という声があるように、例えばマラリアの流行地域においては、蚊(ハマダラカ)によるマラリア感染のリスクが大きいです。

マラリアは寄生虫によって引き起こされ、刺されることで感染が広がります。

生命を脅かす疾患で、特にアフリカ、東南アジア、西太平洋地域で発生率が高いです。

ワクチン接種しておくことで、マラリアやほかの蚊を媒介とする疾患への感染リスクを低減でき、安全に旅行を楽しむことができます。(参考:厚生労働省検疫所FORTH|マラリアに注意しましょう!

また、「ワクチンを接種した」という病院での体験そのものが与える安心感もあります。

診療を受ける際には丁寧な問診と予防接種についての詳しい説明があり、接種後のスケジュールや記録カードも提供されるので、今後の計画が立てやすくなります。

場合によっては日本国内での製造販売承認を得ていない未承認ワクチンも対象となるため、不安を感じる人もいるかもしれませんが、接種時には看護師が丁寧に対応してくれるので、不安や緊張が和らぐでしょう。

さらに、医療体制が不十分な地域でも安全に過ごせるという利点があります。

発展途上国や地方では適切な医療が受けられないことがあるため、事前の予防が重要です。

それだけでなく、海外で病気やケガをした場合は医療費が非常に高額になる可能性があります。

入院や手術を伴うケースでは、1,000万円以上も請求されたという事例もあるほどです。

日本のような公的保険制度がないため、治療費は全額自己負担となり、同じ病気でも病院によって費用が大きく異なります。

ワクチン接種は、後に大きな経済的損失を生まないための事前投資ともいえるでしょう。

自分がワクチンを接種することで感染源にならず、子どもや高齢者、持病のある方など脆弱な人々を守る「集団免疫」にも貢献できます。

ワクチンは個人の健康だけでなく、社会全体を守る重要な予防策なのです。

まとめ:これから海外旅行を考えている方へ

海外旅行は新たな文化や景色との出会いをもたらす素晴らしい経験ですが、その安全を守るためにワクチンの接種を強くおすすめします。

渡航先の感染症リスクから身を守るだけでなく、万が一の動物咬傷にも備えられます。

特に東南アジアなど人気の渡航先では、日本ではまれな感染症が身近に存在することを忘れないでください。

接種は費用と時間がかかりますが、「安心できて旅行が楽しめた」という声にあるように、不安なく旅を楽しむための投資です。

事前の医療機関受診と適切なワクチン接種で、あなたの大切な旅の思い出を健康面のトラブルから守りましょう。

旅のしおりと同じくらい重要な、旅の安全パスポートとしてのワクチン接種を忘れずに。

\ ワクチン接種を検討ならこちら! /おすすめクリニックをみる

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記事担当:ワクチンナビ編集部

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