公開日:2024.03.04更新日:2024.05.02
狂犬病とは?症状・ワクチンについて
日本は狂犬病の自浄国であるため、狂犬病の発症事例はここ数十年ありません。しかし、まだ多くの国には感染の脅威があり、自浄国以外に渡航をする際は、命を守るためにもワクチンを接種することが大切です。
狂犬病は、一度発症すると完治することはなく、ほぼ100%亡くなりますが、万一ウイルスを保持した動物との接触があっても、ワクチンを接種していれば発症の抑制に高い効果が期待できます。
以降では、狂犬病はどのような感染症なのか、症状やワクチンなどについて詳しく解説します。
狂犬病とは?
狂犬病は、犬や猫、コウモリ、キツネ、アライグマなどの野生動物が感染源の感染症です。
発症すれば致死率がほぼ100%の非常に危険な感染症であり、すべての哺乳類に感染するリスクがあります。
一般的な潜伏期間は1〜3か月ですが、なかには発症するまでに数年かかったケースもあります。
発症するのは中枢神経がウイルスに感染したタイミングです。
脳までの距離が遠い末梢神経線維に感染した場合、ウイルスがゆっくりとしたスピードで脳に向かうため、潜伏期間が長くなる傾向があります。
発症までに猶予はありますが、野生動物に嚙まれたり引っ掻かれたりしても病院の受診をしないままでいると、発症リスクが高まります。
感染源にあてはまる動物と何かしらの接触がある場合は、速やかに病院を受診し治療を受けましょう。
治療方法は「暴露後ワクチン接種」といい、発症予防を目的とするワクチンを規定回数接種します。
日本では、初回接種日を0日として数えて、3・7・14・30・90日後の合計6回の接種が推奨されています。
WHOが推奨しているEssen法では、初回接種日を0日として数えて、3・7・14・28日の合計5回の接種としています。
狂犬病の原因
狂犬病の原因となるのは「狂犬病ウイルス」という、脳炎を起こすことで知られるウイルスです。
狂犬病ウイルスは一般的に、ウイルスに感染している動物の唾液に存在します。
主な感染経路は、狂犬病ウイルスに感染している動物に咬まれ、傷口からウイルスが侵入するパターンです。
ただ、目口の粘膜、傷口を舐められ感染するパターンもあるため、渡航先の犬や猫と触れ合った際に咬まれていないからと安心はできません。
加えて、人から人への感染はなく、ほとんどが犬からの感染です。
たとえば、感染者と同じ空間で過ごし、感染者がくしゃみや咳をしたとしても空気感染はしませんし、一緒に銭湯や家のお風呂に入ったとしてもほかの人に感染することはありません。
よって、日常生活では感染拡大の心配はありません。
しかし、狂犬病ウイルス感染者から角膜移植を受けたケースでは人から人への感染が認められているため、100%感染しないとは断言できません。
狂犬病の症状
主にみられる症状は以下のとおりです。
- 頭痛
- 発熱
- 嘔吐
- 疲労感
- 筋肉痛
- 倦怠感
- 興奮
- 不安
- 幻覚
- 錯乱
- 攻撃的状態
- けいれん
- 恐水・恐風症
- 呼吸停止
- 昏睡
発症の初期症状は発熱、頭痛、倦怠感といった風邪のような症状です。
そのため、感染していると気がつかずに過ごしてしまい、症状が進行してしまうケースも考えられます。
症状が進行すると脳が炎症を起こし、興奮や不安、錯乱などの神経症状があらわれ、最終的には昏睡状態に入り呼吸が停止します。
狂犬病は発症前に検査で感染しているかを調べられず、臨床診断ができません。加えて、有効な治療法が発見されていないため、発症したら治す手段がないのです。
発症させないためにも、感染予防対策と、感染が疑わしい場合の速やかな対応が非常に重要となります。
狂犬病ワクチン接種と予防方法
ワクチンの種類や料金の目安、副反応、予防方法について解説します。
出張や旅行などで渡航する予定がある人は、ワクチンに関する知識や予防方法の知識が必要になるため、ぜひ最後まで目を通してください。
・狂犬病ワクチンの種類と料金目安
ワクチンの種類は以下の3つです。
- 組織培養不活化狂犬病ワクチン
- ラビピュール筋注用
- Verorab®︎(国内未承認)
上記のうち、皮下注射の「組織培養不活化狂犬病ワクチン」と筋肉注射の「ラビピュール筋注用」は国内承認を受けており、日本国内で受けられるポピュラーなワクチンです。
一方「Verorab®︎」は国内承認がまだされておらず、医師が直接輸入している医療機関でなければ基本的に受けられません。
また、接種後に副反応を起こした場合、公的な保証を受けることはできません。
ワクチンの費用は自由診療であるため医療機関によって異なりますが、当院の場合、1回につき19,800円で接種可能です。
2024年1月現在、補助制度は整備されていませんが、会社によっては海外赴任など特別な条件下で一部負担してくれるケースもありますので、一度相談してみてください。
・狂犬病ワクチン接種スケジュール
渡航前に受けるワクチンは全部で3回接種する必要があります。
ワクチン接種が完了するまでに期間を要するため、早めに予定を立てなくてはなりません。
初回接種を受けた後、2回目は1週間後に接種し、3回目はさらに3~4週間後に接種する必要があります。
当院では、咬まれる前の接種スケジュールは0・7・21日または0・7・28日で設定しています。
咬まれた後の場合は、未接種の人と過去に接種を完了している人で異なり、スケジュールは以下のとおりです。
- 咬まれた後(未接種):0・3・7・14・28日の5回接種
- 咬まれた後(接種済み):0・3日の2回接種
また、傷が深かったり、海外から紹介状をもらい接種が途中になっていたりする場合は、0・3・7・14・30・90日の6回接種で対応しています。
・狂犬病ワクチン接種の副反応
狂犬病ワクチンの副反応は、一般的なワクチン接種で見られる症状以外の報告事例はありません。
発症する可能性のある副反応には、発熱や発赤、注射部分のしこり、疼痛があります。
一過性の症状であるため、上記の症状が見られても心配はいりません。
ただし、ゼラチンアレルギーを持っている場合、狂犬病ワクチンに含まれるゼラチンにアレルギー反応を起こす恐れがあります。
アナフィラキシーショックを起こす可能性があるため、必ず医師に相談してから接種するようにしてください。
・狂犬病の予防方法
効果的な予防方法は「動物にむやみに近づかない」「ワクチン接種をする」の2つです。
自浄国はほんの一部であり、ほとんどの国にいる野犬や野良猫を含むさまざまな動物は、狂犬病ウイルスを保持している可能性があります。
珍しい動物に出会った際や動物が好きな人は触れ合いたくなるかもしれませんが、むやみに近づかず、距離を置くようにしてください。
とはいえ、距離を置いていても急に動物に襲われて感染してしまう可能性があります。
渡航前にワクチンを接種しておけば、万一動物に咬まれて24時間以内に暴露後接種ができなかった場合でも、発症リスクの軽減が可能です。
ワクチンを接種することは、考えられるさまざまな感染リスクから身を守るためにも必須といえるでしょう。
水痘・帯状疱疹の感染リスクのある地域
狂犬病の感染リスクはほとんどの国の地域であります。
日本から近いところでは中国や台湾が挙げられ、ほかにも、アフリカ地域に属するアルジェリアやケニアなどの国でも見られます。
アメリカ地域では、ボリビアやブラジル、ペルーなどで感染が報告されています。
厚生労働省が指定する自浄国は以下のとおりです。
上記以外の国では感染リスクがあると考えて、予防に努めましょう。
Q&A
狂犬病に関するよくある質問
- 狂犬病の動物に噛まれたら何時間以内に処置が必要?
- 24時間以内の処置が必要です。
- 日本で狂犬病で亡くなった人は何人ですか?
- 1956年は1人、2020年は1人です。 しかし、2020年は国内で狂犬病を発症したわけではなく、渡航先で感染し国内で亡くなったという状況です。
- 日本では狂犬病は発生していますか?
- 日本国内における人の狂犬病の発生は、昭和31年(1956年)が最後です。 また、動物においては昭和32年(1957年)の猫での発生を最後に発生していません。 現在、日本は自浄国に指定されています。
この記事の監修者
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著者
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記事担当:笹倉 渉
MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。
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各国で流行している感染症
渡航先の近くで流行している、または、今後国内で発生するリスクのある感染症を予習しておきましょう。
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ゆとりをもってワクチン接種を。
渡航先や目的によって予防接種の種類はさまざま。
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