公開日:2025.10.09更新日:2025.10.09

海外旅行と感染症リスク「よくある病気と注意が必要な国・地域は?」


コロナ禍が落ち着き、海外旅行を計画する人が増えていますが、渡航先によっては日本ではほとんど見られない感染症にかかるリスクがあります。例えば、東南アジアではデング熱や腸チフス、アフリカではマラリアや黄熱が今も流行しており、旅行者が発症すると重症化する場合もあります。安全に旅行を楽しむためには、出発前に流行している感染症や必要な予防策を知り、準備を整えておくことが欠かせません。

この記事では、海外旅行で特に注意したい代表的な感染症と、リスクの高い国や地域を分かりやすく解説していきます。

海外旅行で注意すべき感染症

厚生労働省検疫所の「海外へ渡航される皆さまへ」でも紹介されているように、渡航先で注意すべき感染症には大きく分けて4種類あります。

分類 感染症 主な流行地域 特徴・注意点
蚊が媒介 デング熱 東南アジア、中南米、アフリカ 高熱・関節痛・発疹。ワクチンは一部地域のみ。蚊よけ必須。
マラリア アフリカ、インド、南米、東南アジア 発熱・悪寒。重症化で死亡リスク。予防薬が有効。
ジカ熱/チクングニア熱 中南米、アフリカ、アジア 妊婦は胎児への影響に注意。蚊よけが最重要。
黄熱 アフリカ、中南米 ワクチン接種必須国あり。イエローカードが必要。
動物由来 狂犬病 アジア、アフリカ 致死率ほぼ100%。動物との接触回避。予防接種を検討。
鳥インフルエンザ/MERS アジア、中東 家畜市場・動物接触で感染リスク。
人から人 麻しん(はしか)/風しん 世界中 感染力極めて強い。ワクチン接種歴の確認必須。
ポリオ アジア、アフリカ 根絶目前だが再流行地域あり。追加接種が推奨される場合も。
エボラ出血熱/エムポックス アフリカ 高致死率。WHOが随時流行状況を更新。
食べ物・水 コレラ、A型肝炎、腸チフス 衛生状態が悪い地域全般 水や生ものが感染源。加熱食品・ボトル水が安全。

感染症リスクが高い国

特定の国や地域では、感染症の流行状況や医療体制の不足により、旅行者が深刻な影響を受ける可能性があります。そのため外務省は国ごとに危険度を区分して発表しており、渡航計画の重要な判断材料となります。

どの国に行くかによって、注意すべき感染症は大きく変わります。安心して旅行を楽しむために、リスクの高い地域を事前に押さえておきましょう。

主なリスク地域

海外旅行先によっては、特定の感染症リスクが非常に高い地域があります。外務省の「感染症危険情報」では、国や地域ごとの状況を4段階で提示しており、渡航判断の目安として活用できます。

旅行先によって、かかりやすい病気や注意が必要な感染症は異なります。安心して旅行を楽しむために、リスクが高い地域をあらかじめ知っておくことが大切です。

地域 主な感染症リスク
アフリカ マラリア、黄熱、エボラ出血熱
アジア デング熱、腸チフス、マラリア(インド・東南アジア)
中南米 マラリア(ブラジル・ペルー)、デング熱(アルゼンチン)
中東 MERS(サウジアラビア)、食中毒・水系感染症(一部地域)

こうした感染症リスクは、渡航前の準備である程度防ぐことが可能です。予防接種や最新の感染症情報の確認を行いましょう。

渡航前には、厚生労働省検疫所「海外へ渡航される皆さまへ」を確認し、自分の渡航先で必要な予防接種や注意事項を把握して準備を整えてください。

外務省「危険情報一覧」を活用

外務省は、感染症の発生状況や現地の医療体制、さらに治安・安全問題などを総合的に判断し、国や地域ごとに4段階の危険度を発出しています。

レベル1:十分注意してください

レベル2:不要不急の渡航は止めてください

レベル3:渡航は止めてください

レベル4:退避してください

最新のレベル分布が、外務省の「危険情報一覧」にて国・地域別に一覧で掲載されています。定期的に更新されるため必ず直前に確認してください。2025年7月25日時点で掲載されている事例を紹介します。

レベル 国・地域 該当地域/備考
レベル4:退避してください。渡航は止めてください。 インド

ジャンム・カシミール準州及びラダック連邦直轄領・管理ライン(LoC)付近

渡航中止勧告のもっとも強いレベル。該当地域にいる人は退避が求められている。
ナイジェリア

北東部(ボルノ州・ヨベ州・アダマワ州)

ボルノ州など複数州で「一切の渡航を止めてください」という状況。
イラク

複数県(例:ニナワ県、キルクーク県、サラーハディーン県など)

地域ごとにレベル4とレベル3と混在しており、特にいくつかの県で非常に厳しい危険度。
イスラエル

ガザ地区及び境界周辺地域、レバノンとの国境地帯など

軍事衝突などの治安・安全問題が絡むため、医療・感染症以外の危険性も含めて退避勧告が出されている。
レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告) インド

ジャンム・カシミール準州(スリナガル近辺など、LoC以外の地域)

一部地域はレベル4、それ以外でもリスクが高いため渡航中止推奨。
メキシコ

ゲレロ州チルパンシンゴ市及びその周辺地域

スポット的にリスクが非常に高い地域が指定されている。
ナイジェリア

北部・北東部の他州など複数地域

レベル4地域の周辺や複数州でレベル3指定。
ロシア

ウクライナとの国境周辺地域

戦争・紛争の影響も含め、危険度が非常に高い。
レベル2:不要不急の渡航は止めてください インド

スリナガル近辺以外の一部地域(例:ジャンム・カシミール準州スリナガル近郊など)

メキシコ

シナロア州など複数州

ナイジェリア

連邦首都圏(アブジャ市等)など比較的都市部の一部地域

イスラエル

ガザ地区等レベル4地域以外の国境付近以外の地域

レベル1:十分注意してください インド

大都市部(デリー、ムンバイ、ベンガルールなど)全般地域

中国

新疆ウイグル自治区・チベット自治区(外出等の際に注意を払うことが求められている)

アメリカ合衆国

特に危険情報なし。通常の注意を払うことが求められている。

海外旅行前にできる感染症対策

海外旅行では、日本では見られない感染症にさらされる可能性があります。しかし、出発前に適切な準備をしておけば、感染リスクは軽減できます。

まず基本となるのは、予防接種歴の確認です。厚生労働省検疫所の「海外へ渡航される皆さまへ」では、渡航先ごとに必要なワクチンがまとめられています。黄熱やA型肝炎、狂犬病、腸チフスなど、地域によっては渡航前の接種が推奨されている場合があるため、余裕を持って確認しましょう。

また、マラリア流行地域に渡航する場合は、WHOが推奨する予防薬の服用が有効です。予防薬は現地到着前から服用を開始する必要があるため、医師に早めに相談してください。

蚊による感染症を防ぐための対策も欠かせません。虫よけスプレーの使用や長袖・長ズボンの着用、就寝時の蚊帳の利用など、日常的に実践できる工夫でリスクを大幅に減らせます。

さらに、食事や飲料の管理も重要です。首相官邸の「海外での感染症対策」でも強調されているように、未加熱の食べ物や生水、氷などは避け、できるだけ加熱された食品と密封されたボトル飲料を選ぶことが基本です。

そして忘れてはならないのが、外務省の「危険情報一覧」の確認です。国や地域ごとの危険度が随時更新されているため、必ず出発直前にチェックし、状況に応じて計画を見直しましょう。

旅行中・帰国後の注意点

旅行中は、体調の変化に注意することが大切です。発熱や下痢、発疹などの症状が出た場合は「ただの疲れ」や「食あたり」と自己判断せず、現地の医療機関を早めに受診しましょう。特にマラリアやデング熱などは初期症状が風邪に似ており、放置すると重症化する危険があります。

帰国後も油断は禁物です。感染症には数日から数週間の潜伏期間があるものもあり、帰国後しばらく経ってから症状が出るケースもあります。体調不良を感じたときには、必ず「渡航歴」と「滞在した地域」を医師に伝えてください。これにより、医療機関が適切に診断・対応できる可能性が高まります。

また、東京都の「海外旅行者・帰国者のための感染症予防ガイド」や、厚生労働省検疫所のチェックリスト(旅行前旅行後)を参考にすることで、旅行中から帰国後までの体調管理に役立ちます。特におすすめしたいのが、厚生労働省検疫所のチェックリスト(旅行前旅行後)の活用です。旅行前の準備の漏れ、症状の見落とし、受診の遅れを防ぐことができるでしょう。

安全で楽しい旅行を実現するためには、「旅行前の準備」だけでなく、「旅行中の注意」と「帰国後の観察」をセットで考えることが重要です。

まとめ

海外旅行は楽しい体験をもたらしますが、渡航先によっては感染症リスクが高い地域があります。出発前の準備と現地での行動次第で、多くの感染症は防ぐことができます。

安全な旅行のためには、以下の点を出発前に必ず確認してください。

チェックリスト

確認・準備内容 ポイント 公的情報リンク
外務省「感染症危険情報」 国・地域ごとの危険度を4段階で提示。最新情報を必ず直前に確認。 外務省:危険情報一覧
厚労省検疫所「海外へ渡航される皆さまへ」 渡航先で必要な予防接種や注意事項を把握。 FORTH:海外へ渡航される皆さまへ
予防接種・薬の準備 黄熱、A型肝炎、狂犬病、腸チフスなど。マラリア流行地域では予防薬を服用。 厚生労働省検疫所:チェックリスト(旅行前
蚊よけ・衛生対策 虫よけスプレー、長袖・蚊帳の利用。生水や氷を避け、加熱済み食品と密封飲料を選ぶ。 首相官邸:海外での感染症対策
帰国後の体調管理 潜伏期間を考慮し数週間は注意。発熱や下痢があれば医師に渡航歴を伝える。 厚生労働省検疫所:チェックリスト(旅行後
自治体や国際機関の情報 東京都の資料も参考に。 東京都:感染症予防ガイド

 この記事で紹介した感染症と予防接種について正しく理解し、渡航前には主治医や専門の医療機関に相談して必要な対策を取ることが大切です。特に出発までの日数に余裕を持って準備することで、安心して旅行を楽しめます。

「ワクチンナビ」では、最寄りのトラベルクリニックを検索できるので、渡航先やスケジュールに合わせて接種計画を立てておくと安心です。

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記事担当:ワクチンナビ編集部

「ワクチンNavi」 は渡航前に確認しておきたい感染症の情報や、旅行・渡航に役立つ豆知識など様々な情報を発信しております。

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