公開日:2025.10.28更新日:2025.10.28

カナダの医療費は本当に無料?旅行者・滞在者が知っておくべき制度と注意点


「カナダは医療費が無料」と聞いたことがあるかもしれません。実際、カナダでは州ごとに公的医療保険制度(Medicare)が整備されており、居住者は医師診療や入院などを無料で受けられます。しかし、旅行者や短期滞在者はこの制度の対象外で、医療費は全額自己負担となる場合があります。

この記事では、カナダの医療制度の仕組みと医療費の目安、そして渡航前に備えるべき保険・予防接種について解説します。

カナダの医療制度

カナダでは、州ごとに公的医療保険制度(Medicare)が整備されており、一定の条件を満たした居住者は、医師の診療や入院・手術などの医療上必要とされるサービスを無料で受けられる仕組みが基本となっています。

ただし、すべてが無償というわけではありません。 次のような制約があります。

  • 各州・準州によって加入条件や給付範囲が異なる(居住期間、住所登録、継続的な滞在などが必要)
  • 公的保険の対象外となる、必要と認められない医療や、歯科・処方薬・救急車・個室利用などは自己負担になることが多い
  • 州外や国外で受診した場合、公的保険の補償は「緊急時」に限定され、支払い上限も「州内での料金水準」を超えないなど制限がある

参考 カナダ政府 How publicly funded health care coverage works

州別公的保険制度の仕組みと補償範囲

カナダの医療制度は、国全体で共通の基本方針のもと、各州や準州がそれぞれ運営しています。州によって加入条件や補償範囲が異なり、受けられる医療サービスにも差があります。

ここでは、カナダの公的保険制度の仕組みと、どのような医療が補償対象となるのかを分かりやすく整理します。

州の医療保険の運用と公的補償の仕組み

カナダの医療制度は、連邦政府が基準と資金を提供し、各州・準州が運用と給付を担当する仕組みになっています。この制度は Canada Health Act(カナダ保健法) に基づいており、全国的な枠組みを維持するため、以下の原則が定められています。

原則 内容
非営利運営 民間の営利を目的とせず、公共の利益を重視して運営されること
普遍的補償 所得や職業に関わらず、すべての住民を補償対象とすること
医療必要性の原則 医療上必要と認められたサービスのみを対象とすること
無料提供の原則 患者負担金を設けないこと

州保険でカバーされる医療と対象外の医療

カナダの公的保険は、あくまで「医療上必要なサービス」のみをカバーします。以下の表は、主な補償対象と自己負担が必要な医療の例を比較したものです。

区分 補償対象となる主なサービス 対象外または自己負担となるサービス
医師による診療 州内のクリニックや病院での一般診療 美容目的の処置
入院・手術 緊急入院、手術費用(標準病棟) 私的病棟・特別室の利用
検査・診断 医学的検査、画像診断など 院外処方薬(州により対象外)
その他 救急車・医療搬送・産前ケア(州により異なる)
州外・国外受診 緊急時のみ一部補償 通常診療や長期治療は自己負担

州外・国外受診の補償範囲

多くの州では、州外や国外で受けた医療の補償は限定的かつ条件付きです。代表的な州ごとの補償内容は以下のとおりです。

 

オンタリオ州(OHIP)の場合

  • カナダ国内の他州や国外で受けた緊急医療は補償対象
  • ただし、補償額には上限があり、外来は1日あたり最大50カナダドル、入院(ICU等)は最大400カナダドルまでとなっているため、実際の医療費を全額カバーできないケースが多い
  • 州外での診療には事前承認が必要となる場合も

参考 オンタリオ州政府 OHIP coverage while outside Canada

 

ブリティッシュコロンビア州の場合

  • 州外・国外での医療は、「緊急時の医療」に限り一部補償される
  • 補償額は、同じ治療を州内で受けた際の費用が上限
  • 処方薬・救急車・理学療法・カイロプラクティックなどの非医師提供サービスは補償対象外

参考 ブリティッシュコロンビア州政府 Medical Benefits Outside of B.C.

 

こうした制限により、州保険だけでは州外・国外での高額医療費を賄えない可能性があります。そのため、旅行保険や民間医療保険を併用することが前提とされています。

旅行者・非居住者の医療費

カナダでは、旅行者や短期滞在者などの非居住者(non-residents)は公的医療保険(州制度)の対象外となります。そのため、診療・入院・救急医療などの費用は全額自己負担が原則です。

医療費の目安(非居住者の場合)

実際の医療費は都市や病院の等級によって異なりますが、主要医療機関が公表している料金例は次のとおりです。

医療サービス 費用の目安(カナダドル) 出典
外来診療(クリニック・一般診察) 約 $930 Queensway Carleton Hospital
緊急室(ER)受診 約 $930 同上
画像検査(MRIなど) 約 $2,030 同上
検査(血液検査など) 約 $360 / 検査 同上
一般病棟入院 約 $2,990 / 日 同上
ICU(集中治療室) 約 $4,049 / 日 同上
救急車・医療搬送 約 $240 / 回 Almonte General Hospital

高額医療の事例とリスク

カナダでは、旅行者や非居住者、または保険未加入の新規居住者が医療を受けた場合、全額自己負担となるのが一般的です。そのため、入院や手術などを伴うと非常に高額な医療費を請求されるケースがあります。

実際の料金例

医療サービス 料金(カナダドル) 出典
外来・緊急受診 約 $930 Queensway Carleton Hospital
一般病棟(入院) 約 $2,990/日 同上
ICU(集中治療室) 約 $4,049/日 同上
MRI検査 約 $2,030 同上
血液検査・検査費用 約 $360 同上

医療費を抑えるための保険と備え

カナダ滞在中の医療費リスクを軽減するには、渡航前に十分な補償内容を備えた保険を選ぶことが重要です。

特に旅行者や新居住者は、公的保険の対象外となる期間があるため、以下のポイントを確認しておきましょう。

確認ポイント 内容・概要 注意点・補足
キャッシュレス診療対応 保険会社が病院へ直接支払う方式。自己立替が不要で、救急時もスムーズに受診可能。 一時的な高額支払いを避けたい場合に有効。訪問者向け保険の多くで採用。
高額医療・搬送費の補償 入院・手術・緊急搬送・エア・アンビュランス・帰国搬送などを補償。 一般病棟 約2,990ドル/日、ICU 約4,000ドル/日、救急車 約240ドル/回。費用が数十万円~百万円規模になることも。
保険料の目安 訪問者向け医療保険は月額約50~400カナダドルが一般的。 年齢・既往症・補償額・滞在期間で金額が変動。複数プランの比較を推奨。
州保険の待機期間対策 永住者・就労ビザ取得者は州保険適用までに数週間~3カ月の待機期間がある場合あり。 この期間は全額自己負担のため、「ギャップ期間」を補う民間保険の加入がおすすめ。
補償範囲・除外項目の確認 ワクチン接種、歯科、定期健診、慢性疾患治療、眼鏡、救急車などは補償対象外が多い。 契約前に除外項目・支払条件を必ず確認。

渡航前の準備で安心のカナダ滞在を

カナダでは医療制度が整備されている一方、旅行者や短期滞在者は公的保険の対象外となり、診療や入院で高額な医療費が発生する可能性があります。

現地での不安を防ぐためには、出発前の準備が何より大切です。まずは、医療費を補償できる海外旅行保険や訪問者医療保険を確認しましょう。キャッシュレス診療や救急搬送費用をカバーできるプランを選ぶことで、もしものときも安心です。

さらに、感染症予防のためのワクチン接種も重要です。A型肝炎、B型肝炎、破傷風、インフルエンザなど、渡航先や滞在期間に応じた予防接種を受けておくと安心です。

ワクチンナビでは、渡航目的や地域に合わせて最寄りのトラベルクリニックを検索できます。費用やスケジュールを早めに確認し、万全の体制でカナダ滞在を迎えましょう。

この記事の監修者

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記事担当:ワクチンナビ編集部

「ワクチンNavi」 は渡航前に確認しておきたい感染症の情報や、旅行・渡航に役立つ豆知識など様々な情報を発信しております。

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