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公開日:2025.05.15更新日:2025.05.15
近年、国際的な移動はますます活発になり、妊娠や出産を海外で経験する人も増えています。
海外での出産や育児は、魅力的な側面がある一方で、複雑な問題もある点は否めません。
海外渡航を予定している方が安全かつ健康な海外での妊娠・出産を迎えるために、信頼できる情報源に基づいた情報を提供します。
アメリカの大手保険会社の調査では、アメリカの出産費用は以下のとおり報告されています。
分娩方法 | 総医療費(平均) | 保険加入時の自己負担(平均) |
正常分娩 | 約1万9,000ドル | 約3,000ドル |
帝王切開 | 約2万6,000ドル | 約3,500ドル |
日本の出産費用は、明治安田生命の調査によると2021年度時点で約47.3万円です。
日本の出産費用と比較して、アメリカの出産費用は非常に高額であることが分かります。
アメリカで出産する場合の注意点としては、民間保険のネットワーク外の病院を選ぶ、あるいは無保険の場合、請求が数万ドル増える可能性があることです。
駐在員向けの企業保険には充実した産科補償が付くことが多いですが、プランによって上限や自己負担が異なります。
赴任前に必ず補償範囲を確認しておきましょう。
海外で出産しても、日本の健康保険に加入していれば「出産育児一時金」(2023年度から一律50万円)が申請できます。
支給を受けるには健康保険組合へ「健康保険出産育児一時金支給申請書」を提出し、次の書類をそろえる必要があります。
必須書類 | ポイント |
海外の医療機関による出生証明書(医師または助産師の署名入り) | 医療機関名・担当医名が明記された原本。翻訳が必要な場合は翻訳者の署名・連絡先を付記。 |
渡航を証明する書類(パスポート、ビザ、航空券の写しなど) | 出産時期に実際に渡航していた証拠として提出。 |
医療機関照会への同意書(協会けんぽ指定様式) | 保険組合が海外医療機関に確認連絡を行う際の同意を示す書類。 |
出生証明が取れない場合は、戸籍謄本や出生届受理証明書など「出産した事実を示す書類」に、医師・助産師の証明を添付できない理由を記載した書面の提出が求められるため、注意してください。
また、支給が決定するまでには、書類に不備が見つかったり、保険組合が海外の医療機関へ照会を行ったりする関係で、手続きだけで数カ月かかる場合があります。
証明書が外国語で発行されている場合は、必ず翻訳文を添付し、翻訳者の署名・住所・電話番号を記載しなければなりません。
なお、申請期限は原則として出産日の翌日から2年間に設定されているため、余裕を持って準備を始めておくと安心です。
出産前後のサポート体制や入院期間、母乳指導の受け方などは国によって大きく異なります。以下の表では、日本とアメリカの違いと準備のポイントをまとめました。
日本 | アメリカ | ポイント |
健診回数多め、公費補助あり | 保険ネットワーク内OB/GYN(産婦人科専門医)を予約 | OB/GYN(Obstetrician/Gynecologist)は産婦人科医を指す英語と覚えておくと、現地で医師や病院を探す際にスムーズ |
分娩後5~7日入院 | 正常分娩なら48時間で退院 | 退院翌日から家族・ドゥーラ(妊娠や出産、産後の母親をサポートする専門家)などのサポートが必要 |
助産師中心の母乳指導 | 産後ケアは外来または自費サービス | 授乳や抱き方を動画で予習しておく |
日本と比べてアメリカは「健診回数は少なめ・分娩後の入院期間は短い・産後ケアは自己手配」といった特徴があり、出産前後に求められるサポート体制の確保が重要です。
安心して出産を迎えるためには、保険の補償範囲を確認した上で、退院翌日から利用できるサポート体制を渡航前に整えておく必要があります。
また、母乳指導や育児情報をオンライン教材などで先取りしておくと、現地での戸惑いを減らせます。
こうした準備を進めれば、医療体制の違いを乗り越え、海外でも安心して新しい命を迎えられるでしょう。
妊婦が一部の感染症にかかると、重症化や胎児の先天性障害のリスクが高まるため、妊娠前後に免疫を確認し、必要なワクチンを適切なタイミングで受けることがとても大切です。
ここでは、特に注意すべき代表的な感染症と推奨される対策をまとめました。
感染症 | 母子への影響 | 推奨対策 | 参考 |
風疹 | 妊娠初期感染で先天性障害 | 妊娠前に抗体検査+MMRワクチン | 風しんについて 厚生労働省 |
B型肝炎 | 母子感染・慢性肝炎 | 妊婦健診でHBs抗原検査、陽性なら出生直後にHBIG+ワクチン | B型肝炎ワクチン 厚生労働省 |
百日咳・破傷風 | 新生児の重症化 | 妊娠27~36週にTdap1回 | Tdap Vaccination for Pregnant Women CDC |
インフルエンザ | 妊婦は重症化しやすい | シーズン前に不活化ワクチン | Guidelines for Vaccinating Pregnant Women CDC |
風疹・麻疹・黄熱などの生ワクチンは妊娠中に接種できないため、妊娠を意識した時点で計画的に済ませておく必要があります。
妊娠期間は免疫バランスが変わり、母体だけでなく胎児も感染症の影響を受けやすくなります。
事前の抗体検査で風疹や麻疹の免疫が十分でないと判明した場合は、先天性障害を防ぐためにも早めに接種しておきましょう。
妊娠が判明した後でも、取るべき対策は残っています。
B型肝炎のスクリーニングや、妊娠27~36週に推奨されるTdap、シーズン前のインフルエンザ不活化ワクチンなど、時期ごとの推奨接種を主治医と相談しながら進めてください。
また、感染源は家庭内に潜むこともあります。家族全員の接種歴を確認し、不足分を一緒に接種しておけば、妊婦や新生児へのリスクを低減できます。
さらに海外渡航の予定がある場合は、黄熱やA型肝炎など地域特有の感染症にも注意が必要です。
遅くとも出発3カ月前までにトラベルクリニックで相談し、必要な接種スケジュールを立てておくと安心です。
厚生労働省検疫所 FORTH は「複数回接種が必要なワクチンが多いので、出発の3カ月以上前に医師と相談」と案内しています。
以下は、妊娠を予定・あるいは妊娠中の渡航者が無理なく接種を完了できるよう逆算したスケジュール例です。
出発までの残り日数ごとに「何のワクチンを、どの順番で受けるか」を整理してあるので、主治医やトラベルクリニックと相談しながら調整してください。
時期 | 主なタスク | 補足 |
90 日前 | 抗体検査、妊娠判定前ワクチン(MMR・水痘) | 生ワクチンは妊娠前のみ可 |
60 日前 | 1 回目:A型肝炎・B型肝炎併用ワクチン | A型は2 回接種、B型は3 回 |
40 日前 | 2 回目:A型肝炎、破傷風ブースター | 破傷風は10 年ごとのブースター必須 |
30 日前 | 3 回目:B型肝炎、インフルエンザ季節前接種 | 妊娠週数を医師に報告 |
20 日前 | 予防接種証明書の発行 | 渡航先入国時に提示を求められる国がある |
海外で出産・育児を予定しているご家庭が「いつまでに、何を」済ませておくべきかを逆算したチェックリストです。
妊娠週数と渡航予定日を基準に、保険やワクチンの準備、公的給付の書類手配から産後サポートの確保までを網羅しています。
各項目の「期限の目安」を参考に、主治医・保険会社・航空会社など関係先と早めに連携しながら計画的に進めましょう。
カテゴリー | やること | 期限の目安 |
保険 | 産科カバー範囲・自己負担上限の英文証明を入手 | 妊娠20週まで |
公的給付 | 出産育児一時金用の書類をダウンロード、翻訳者を確保 | 妊娠24週まで |
航空会社 | 妊娠後期搭乗可否(36週制限など)を確認 | 妊娠28週まで |
ワクチン | 予防接種予約・接種間隔管理 | 渡航12~3週前 |
産後サポート | 家族の渡航日程、ドゥーラ/ナニー手配※ | 出産1カ月前 |
外貨管理 | クレジットカード限度額・外貨建医療費の決済方法を設定 | 渡航2週前 |
※ドゥーラ:妊娠や出産、産後の母親をサポートする専門家
※ナニー:乳幼児の育児や教育を専門とする職業で、主に家庭内で子どもを預かる人
海外で出産する場合、費用は日本の何倍にも跳ね上がりますが、企業や民間保険、出産育児一時金を活用すれば自己負担を抑えられます。
アメリカでは退院が早く、産後ケアは自己手配が基本です。
渡航90日前から風疹・B型肝炎・Tdapなどの接種計画を立て、書類翻訳や航空会社への確認、家族やドゥーラの支援体制も同時に整えれば、異国でも安心して出産を迎えられるでしょう。
出産準備は余裕を持って準備を開始することが重要です。
まずはワクチンナビで最寄りのトラベルクリニックを検索し、家族全員の接種計画を立てましょう。
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