公開日:2024.03.14更新日:2024.05.02

百日咳とは?症状・ワクチンについて


季節を問わず一年を通して発症する「百日咳」は、子どもがかかりやすい感染症として知られています。

しかしながら、子どもだけでなく、幼い頃に受けたワクチンの効果が弱まった大人の発症増加が問題となっており、子ども特有の病気というイメージは覆りつつあるのが現状です。

また、オーストラリアやイギリス、アメリカにおいても子どもや大人関係なく発症率が上がっている傾向にあり、渡航する際にはワクチン接種で予防することが大切です。

本記事では、病気の特徴や原因、症状を解説したのち、予防策のためのワクチンについて解説します。

百日咳とは?

咳が約100日(約3か月)続くことが由来で名付けられた感染症で、5類感染症に指定されています。

百日咳に感染することで発病し、大人と子どもでは症状のあらわれ方が違うのが特徴です。

大人は軽症で風邪のような症状で済むため、発病していることに気づかない場合が多いです。百日咳特有の症状や重症化は、子どもや高齢者によくみられます。

百日咳菌の感染や発病は人のみであり、動物が病原菌を保有することはありません。

診断は咽頭ぬぐい液を採取する検査で行います。

ただし、大人は診断が困難であるため、培養検査に加えて百日咳菌の遺伝子検査や血液検査も必要です。

治療にはマクロライド系の抗菌薬が使われ、約1週間内服を続けることで徐々に感染力が失われていきます。

妊娠中に感染をした場合の抗菌薬治療は、妊娠期間や経過などを考慮し、リスクが低いと判断された場合のみ適用されます。

百日咳の原因

百日咳菌という病原菌が気道に付着し、毒素が産生されることで激しい咳が起きます。

感染力は強く、主な感染経路は飛沫感染と接触感染です。

まれに、感染者の嘔吐物に触れることで感染した例もあるため、嘔吐物を処理する際は手袋を着用するなどの注意が必要です。

完全に菌を死滅させない限り感染力は無くならないため、服薬途中で治療を終えてしまったり、治療を受けていなかったりすると感染を拡大させることになります。

予防接種の効果が薄れた人の発病率が高いことから、感染はワクチン接種で予防できると考えられます。

百日咳の症状

感染すると最大3週間の潜伏期間があり、発症後は症状が6〜10週間程度続くのが一般的です。

症状の経過は「カタル期」「痙咳期」「回復期」に分けられます。

カタル期は通常の風邪のような症状があらわれるのが特徴です。

くしゃみや食欲不振、夜間の乾いた咳、声枯れなどが主な症状で、まれに発熱を伴うことがあります。

痙咳期はカタル期の10日〜14日後くらいにみられるようになり、咳の頻度や重症度が増加します。

具体的には1回の呼吸で5回以上連続して咳が出たり、深い呼吸のタイミングで「ヒュー」という笛のような音が鳴ったりするのが特徴です。

咳が出ている最中もしくは出終わった後に、粘り気の強い痰が出ることもあります。

乳児では、笛のような音の代わりに、チアノーゼのない窒息発作を起こす傾向にあります。

回復期に突入すると、徐々に症状が軽くなっていきます。

発作性の咳がぶり返すこともありますが、気道が上気道の感染によって刺激を受けたために誘発されることによるものです。

基本的には上記の経過を辿っていきますが、重度の発作によってさまざま影響を受けることもあります。

たとえば、脳出血や眼・皮膚・粘膜の出血、脳炎を起こすことによる知的障害や麻痺、臍ヘルニア、気管支肺炎などです。

また、中耳炎を起こすケースもしばしばみられます。

気管支肺炎は高齢者に多く命を落とすことがあるため、経過観察をしっかり行うことが重要です。

百日咳ワクチン接種と予防方法

百日咳は重症化したり、最悪の場合命を落としたりすることもあるため、発病させないことがとても重要です。

本項では、発病を予防できるワクチンの種類や料金、副反応、その他の予防方法について解説します。

どの国でも流行している感染症なので、仕事やプライベートで海外に行く予定の人も、ぜひ最後まで目を通しましょう。

・百日咳ワクチンの種類と料金目安

ワクチンの種類は、三種混合ワクチンまたは四種混合ワクチンです。

三種混合ワクチンは追加接種で用いられ、四種混合ワクチンは定期接種で用いられます。

三種混合ワクチンには「T-dap」と「DTP」の2種類がありますが、両方ともジフテリア・百日咳・破傷風の予防が対象です。

四種混合ワクチンはジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオの予防が可能です。

追加接種の対象である三種混合ワクチンは自由診療のため、自己負担での費用が発生します。

当院の場合、T-dapは1回14,960円、DTPは1回4,950円で接種可能です。

四種混合ワクチンは生後2か月~90か月であれば、定期接種として公費補助により無料で接種できます。

自費で接種をする場合、当院では1回14,300円で接種可能です。

・百日咳ワクチン接種スケジュール

ワクチンの接種スケジュールは、三種混合ワクチンと四種混合ワクチンで異なります。

三種混合ワクチンの場合、基本的にいつ受けても大丈夫です。

ただし、ジフテリアと破傷風の混合ワクチンを受けた場合は、5年以上あけて接種したほうが副反応が出にくいといわれています。

四種混合ワクチンの場合、全部で4回の接種が必要です。

1回目は生後3か月、2回目と3回目は3〜8週間をあけて接種し、4回目は3回目を受けてから6か月以上あけて接種します。

百日咳のワクチンの効力は永久ではなく、5〜10年で低下する傾向にあるため、定期的な追加接種が推奨されています。

また、妊娠した際にも都度の接種が推奨されており、20週以降、とくに27〜36週に接種することが望ましいです。

・百日咳ワクチン接種の副反応

主な副反応の症状には、注射箇所のしこりや発赤、腫れがあり、ときに発熱もあらわれることがあります。

可能性は限りなく低いですが、百日咳の成分により重篤な副反応を引き起こす恐れもあります。

具体的には、脳症や高熱、アレルギー反応やアナフィラキシーショック、卒倒またはショック、発熱のあるまたは発熱のない痙攣発作などです。

・百日咳の予防方法

未就学児は、定期接種の四種混合ワクチンで予防が可能です。

しかし、接種済みでも感染する事例があるため、感染症対策を常日頃から行うことも大切になります。

定期接種の範囲外の年齢の子どもや成人の場合は、任意接種にはなりますが三種混合ワクチンの接種により予防が可能です。また、手洗いやうがいといった感染症対策も大切です。

とくに、感染者が家族にいる場合や妊娠中の場合は、予防のために追加接種を受けることが推奨されています。

百日咳の感染リスクのある地域

2009年以降、ヨーロッパやアメリカオーストラリア、南米で患者数が増加傾向にあることが報告されています。

日本も例外ではなく、世界各国で感染リスクがあると考えておきましょう。

Q&A

百日咳に関するよくある質問

百日咳はどこから感染するのですか?
グラム陰性桿菌である百日咳菌が感染の要因ですが、一部はパラ百日咳菌が原因となることもあります。 感染経路は飛沫感染や接触感染です。
アメリカでは百日咳の予防接種はどのように行われていますか?
アメリカを含む諸外国では、4歳〜6歳でDPTワクチン(小児用三種混合ワクチン)、11〜12歳以降はTdapワクチン(10歳以上用三種混合ワクチン)を接種します。また、妊婦や赤ちゃんとの接触が多い医療従事者や保育関係の職業の人にもTdapの接種を推奨しています。
百日咳は問題になっていますか?
現在、乳幼児期に実施される定期接種の効果が落ちている成人の発症が問題になっています。 過去10年間と比較しても発症報告数が増加しており、とくに20歳以上の発症数が増加傾向にあります。 長引く咳が見受けられる場合は、百日咳やその他呼吸器感染症を疑い、早めに受診するようにしましょう。

この記事の監修者

著者

記事担当:笹倉 渉

MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。

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