公開日:2024.03.04更新日:2024.05.02

水痘・帯状疱疹とは?症状・ワクチンについて


水痘・帯状疱疹は同じウイルスで発症する病気であること、ワクチン接種で予防できることから、同じ病気なのか別の病気なのか混乱する人が多いです。たしかに同じウイルスが原因ではありますが、症状や特徴に大きな違いがあります。

本記事では、水痘と帯状疱疹の違いを紹介しつつ、ワクチンや予防方法について解説します。

水痘・帯状疱疹とは?

水痘はいわゆる水ぼうそうのことを指し、全身にかゆみを感じる水疱ができるのが特徴です。

水痘は子どもがかかりやすい感染症として軽視されがちですが、合併症を引き起こすリスクや重症化して命を落とすリスクがあり、適切な治療を受けなくてはなりません。

日本においては毎年12月〜7月の間に発症報告が多く、8月〜11月は発症数が少ない傾向にあります。

帯状疱疹は、神経が通っている部分に沿って痛みを伴う発疹ができるのが特徴です。

できた水疱が破れかさぶたになると改善に向かっていきます。

合併症を起こすリスクがあり、顔面で発症した場合は眼耳に関連する疾患や顔面麻痺といった症状を引き起こす場合があり注意が必要です。

水痘・帯状疱疹は、患部の状態や症状、臨床経過で診断されます。

発疹を調べる検査もありますが、臨床の特徴的に診断しやすいため、基本的に必要ありません。ただし、帯状疱疹を繰り返し発症する場合は、免疫力が低下する疾患にかかっていないか検査をする場合があります。具体的には、HIV感染の検査、糖尿病の検査などを行います。

治療方法は抗ウイルス薬の投与を基準として行います。

症状によっては内服薬や塗り薬、注射などを投与し、帯状疱疹の場合は痛み止めも処方されます。

水痘・帯状疱疹の原因

水痘や帯状疱疹を引き起こす原因菌は、水痘ウイルスです。

水痘ウイルスの自然宿主は人間だけのため、基本的に動物や虫から感染することはありません。

感染力のレベルは麻疹ウイルスほど強くはありませんが、おたふくかぜの要因であるムンプスウイルス、風疹ウイルスと比べると強いとされています。

よって、家庭内感染が起こりやすく、発症確率は90%にも上るという報告もあります。

感染経路は、どちらの疾患も空気感染と接触感染です。

水疱のなかにはウイルスが存在しており、破れた水疱の汁に触れてしまったり、感染者と同じ空間で過ごしたりすることで感染します。

水痘はウイルス感染が発症原因ですが、帯状疱疹は加齢やストレス、過労などによる免疫低下が要因です。

水痘ウイルスは完治した後神経に潜伏するため、排除されることはありません。

そのため、免疫が低下すると潜伏しているウイルスが覚醒し、悪さをするようになって帯状疱疹を起こすと考えられています。

水痘・帯状疱疹の症状

水痘の潜伏期間は2週間くらいで、発熱症状と全身にかゆみを伴った水疱がみられます。

初期症状としては皮膚が盛り上がった皮疹がみられ、進行して水疱ができ、回復期に突入するとかさぶたができて治癒に向かっていく流れが一般的です。

ただし重症化するケースがあり注意が必要です。

敗血症や脳炎、肺炎を起こしたり、二次性皮膚感染症でA群溶連菌感染症を起こしたりすると死亡するリスクが高まります。

帯状疱疹は過去に水痘にかかったことがあり、免疫が低下しているタイミングで発症します。

主な症状は赤い斑点と小さな水ぶくれで、神経に沿って帯状に症状があらわれるのが特徴です。

発症部位は広く、顔や背中、脇腹から腹部にかけて多くみられ、免疫の低下具合によっては全身にみられることもあります。

完治しても神経痛が後遺症として残るケースがあり、強い痛みに苦しむ人も少なくありません。

水痘・帯状疱疹ワクチン接種と予防方法

水痘・ 帯状疱疹ワクチン接種と予防方法について解説します。

ワクチンの種類や料金の目安、接種のスケジュール、副反応、ワクチン以外の予防方法について知りたい人は参考にしてください。

・水痘・帯状疱疹ワクチンの種類と料金目安

それぞれに使用されるワクチンの種類に若干の違いはありますが、共通として生ワクチンの「水痘ワクチン」で予防可能です。

帯状疱疹の場合は別に「帯状疱疹ワクチン」も作られており、50歳以上または帯状疱疹の発症リスクがある18歳以上の人が対象のワクチンです。

発病する確率を下げたり、発病した際の症状を軽症化したりする効果が期待できます。

また、職場や家庭内で水痘の感染者が出た場合に、緊急接種として72時間以内に接種することも予防策として有効とされています。

当院の場合、水痘・帯状疱疹ワクチンを1回9,900円で接種可能です。

自治体によっては公費助成制度を受けられる所もあるため、確認してみましょう。

・水痘・帯状疱疹ワクチン接種スケジュール

水痘ワクチンは生後12か月以上の小児と成人で水痘の免疫を獲得していない人が対象です。

定期接種の場合は生後12か月〜36か月までが対象であり、36か月を過ぎると定期接種を受けることはできず、任意接種となります。

接種は2回行い、1回目の接種を受けた後3か月以上あけてから2回目を接種するのが標準ですが、6か月〜12か月あけてからの接種が望ましいです。

帯状疱疹ワクチンは、50歳以上の人が対象です。

基本的に接種回数は1回ですが、免疫の獲得が不明あるいは不十分であると判断された場合は2回接種します。

2回目を接種する場合は、1回目から3か月以上あけることとしていますが、6か月〜12か月以上あけてからの接種が推奨されています。

・水痘・帯状疱疹ワクチン接種の副反応

どちらのワクチンにも共通している主な症状は、注射部分のしこりやはれ、赤みです。

ただし、それぞれに特異的な症状があらわれるという報告もあります。

水痘ワクチンの場合は接種後1〜3週間あたりで発熱、まれに全身に水痘のような発疹が、帯状疱疹ワクチンの場合はかゆみや紅斑が出ることがあります。

・水痘・帯状疱疹の予防方法

どちらの疾患もワクチンを接種することで発病を予防できます。

加えて、帯状疱疹は、ストレスや過労などによる免疫低下も原因であるため、日常生活の過ごし方を意識することが大切です。

たとえば、疲れを感じたら体を休めたり労ったりすることを意識する、睡眠をしっかり取る、リラックスできる時間を作る、規則正しく1日3食の食事を取るなど、免疫を低下させないための対策をしていきましょう。

水痘・帯状疱疹の感染リスクのある地域

水痘・帯状疱疹は人を宿主にしたウイルスが原因であるため、世界中で感染リスクがあります。

もちろん、日本も例外ではありません。

とはいえ、日本や欧米、中南米、アジア、オーストラリアなどの34か国は水痘ワクチンの定期予防接種を実施しており、感染リスクは抑えられていると言えるでしょう。

定期予防接種を実施していない国は、東南アジアやアフリカ諸国で多くみられます。

 

Q&A

水痘・帯状疱疹に関するよくある質問

水痘と帯状疱疹は同じですか?
帯状疱疹は、水痘と同じウイルスが原因の病気ですが、病気そのものには違いがあります。 水痘は全身性の水疱が症状としてみられ、帯状疱疹は水痘が治癒した後に潜むウイルスによって神経に沿うようにして紅斑や水ぶくれがあらわれます。
水痘にかかっていない人は帯状疱疹になる?
水痘にかかったことがある人は、帯状疱疹になるリスクがあります。 ただし、実際には水痘にかかったことがない人でも帯状疱疹になる場合があります。 そのような事例では、胎児期にウイルス感染していたり、生後ワクチンによって感染していたりすることで、神経の中にウイルスが存在している場合が多いです。
帯状疱疹は出勤してもよいですか?
出勤しても問題ありません。 発症することによる出勤停止期間や出勤停止命令などはないため、出勤可能です。 しかし条件があり、水ぶくれのある場所をガーゼなどで覆っておかなくてはなりません。 また、発症時は激しい痛みが伴うため、可能であれば無理に出勤せず安静にしておくほうがよいでしょう。

この記事の監修者

著者

記事担当:笹倉 渉

MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。

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