公開日:2024.03.04更新日:2024.03.14
破傷風とは?症状・ワクチンについて
誰にでも感染・発症の可能性がある「破傷風」ですが、ワクチンや適切なケアによって予防することは十分に可能です。
発症すると神経系の症状が引き起こされ、場合によっては命を落とす危険性もあるため、発症を予防することが非常に重要です。
しかし、完全に感染を予防することは困難であり、世界中で感染・発症事例があることも事実です。
本記事では、病気の特徴や症状、原因を解説しつつ、予防のためのワクチンについても解説します。
破傷風とは?
体内に侵入した破傷風菌が神経毒によってさまざまな症状を起こす感染症で、五類感染症に指定されています。
破傷風は重篤化した場合、命を落とす可能性もある病気です。
破傷風菌が付着した傷口で増殖する際に、神経毒が作られます。
神経毒といえばフグに含まれるテトロドトキシンが思い浮かぶかと思いますが、同じような神経症状が出ます。
たとえば、けいれんや表情が引きつるなどです。
病原菌による感染症ではありますが、人を介して感染することはなく、汚染された土を介して創部から体内に侵入することが多いです。
ワクチンの普及によって発症するリスクは低くなっていますが、ワクチンを受けていない年代や、効力が切れて抗体が減少している年代の発症人数が高い傾向にあります。
よって、日本でも追加でワクチンを接種することが推奨されています。
B型肝炎の原因
破傷風に感染する原因としては、以下のものが挙げられます。
- ガーデニング作業や土遊び
- 虫刺され
- 歯科治療
- 慢性の潰瘍
- 薬の静脈注射
- ペットに咬まれる・引っ掻かれる
土からの感染は、手などに細かい傷がある状態で、動物や人の糞尿によって汚染された土を触った際に起こるのが一般的です。
人やその他動物の腸内に無害の常在菌として、破傷風菌は存在しています。
しかし、何らかの影響で栄養型の菌へと変わって増殖した際に神経毒が生まれ、脳神経や末梢運動神経などを毒してしまうことで破傷風が発症します。
破傷風は新生児にも発症します。
新生児が感染してしまう多くの原因は、ワクチンを接種していない母体が出産した場合です。
なおかつ衛生面が整っていない状態で臍帯処置が施された場合には、発症リスクが増大します。
新生児の発症や感染を防ぐには、母体のワクチン接種がとても重要です。
破傷風の症状
破傷風によって引き起こされる症状は、毒される神経によって異なります。
脳神経が毒された場合、痙笑や開口障害、喉のけいれん、嚥下の困難などが現れます。
開口障害は初期段階に現れやすいため、感染の可能性を疑う材料として念頭に置いておくべき症状です。
交感神経が毒された場合では、自律神経のバランスが乱れて頻脈や徐脈、高・低血圧などの症状が現れます。
末梢運動神経が毒されると、手足や腹部などのけいれんや硬直が見られるようになります。
症状の現れ方は頭部・全身性・局所性がありますが、よく見られるのが全身性で、あまり発症確率が高くないのが頭部破傷風です。
局所性は比較的軽症ですが、全身性は重症化して亡くなるリスクがあります。
ただし、頭部と局所性の場合でも全身性へと移行してしまうことがあり、軽症でも油断はできません。
加えて、破傷風は肺塞栓や骨折、誤嚥性肺炎といった合併症を引き起こすこともあります。
誤嚥性肺炎、肺塞栓は命に関わる病気であり、骨折も場所によっては命を落とす危険性があります。
命を守るためにも、ワクチンを含む予防方法をしっかりと知り、徹底的に対策することが大切です。
破傷風ワクチン接種と予防方法
破傷風ワクチン接種と予防方法について詳しく解説します。
誰にでも感染・発症する可能性があるため最後まで目を通し、自分の命や家族の命を守る行動ができるようになりましょう。
・破傷風ワクチンの種類と料金目安
ワクチンの種類は「トキソイド」です。
単体で接種することはなく、4種混合や2種混合としてほかのワクチン剤と混ぜて接種するのが基本ですが、病院や特殊な条件によっては単独で接種することも可能です。
定期接種には、生後3か月から7歳半までが接種できる4種混合と、11歳から12歳までが接種できる2種混合があります。
上記以外の小児や成人は任意接種となります。
定期接種の場合は国で義務化されていることもあり、無料で受けられます。
任意接種に関しては、当院では、4種混合と破傷風ワクチンの単独接種が可能です。
料金はそれぞれ4種混合が1回14,300円、単独が1回4,840円で受けられます。
・破傷風ワクチン接種スケジュール
初めてのワクチン接種から3〜8週間後に2回目のワクチン接種を受け、3回目は6か月以降なおかつ120〜180日後の間隔で受けることが推奨されています。
スケジュールの立て方は、1967年以前に生まれたか、1968年以降に生まれたかで異なります。
定期接種として定められていなかった1967年以前に生まれた人は、子どものときにワクチンを受けておらず基礎免疫がありません。
よって、まずは3回ワクチンを接種し、その後10年ごとに追加でワクチン接種を受けましょう。
1968年以降に生まれた人は定期接種が定められているため、子ども時代に接種して基礎免疫があります。
よって、最後にワクチン接種を行った日から10年経過したタイミングで、追加接種を受けることが推奨されています。
・破傷風ワクチン接種の副反応
副反応として注射した箇所の腫れやしこり、痛み、発赤といった症状が起こる可能性があります。
加えてまれに、発熱や悪寒、頭痛、ゼラチンアレルギーによるアナフィラキシーショックを起こす場合もあります。
副反応の症状は基本的に接種から30分以内に起こる傾向にあり、万一に備えて30分は医療機関の中、もしくは近くで安静待機をしてください。
・破傷風の予防方法
1968年以降に生まれた人は定期接種で基礎免疫があるため、10年に一度の追加接種で発症・感染を予防できます。
ただし、未成年で定期接種から10年経過していない人は効果が残っているため、追加接種を受ける必要はありません。
1967年以前に生まれた人は基礎免疫がなく、3回のワクチン接種が推奨されているため、1か月間隔で1回目と2回目を接種し、6〜12か月後に3回目を受けましょう。
ただし、過去にケガなどで破傷風トキソイドを接種したことがある人は3回の接種は不要なので、10年に一度の追加接種で問題ありません。
ワクチン以外では、ケガをした後すぐに流水でよく洗うことで予防できます。
軽いケガだと処置をしないこともあるかとは思いますが、破傷風菌は目に見えないためケガの見た目からでは感染の有無は分かりません。
ケガを放置せずしっかりとケアをすることが、破傷風を発症させないためには大切です。
破傷風の感染リスクのある地域(国名のみ)
破傷風菌は動物や人の腸内に存在していることもあり、どの国でも感染リスクがあります。
とくに途上国では発症数が多い傾向にあるため、渡航する際はワクチンで予防対策することが望ましいです。
2006年には世界全体で29万人が破傷風で亡くなっていると推定されており、亡くなった割合で多かった国はアジアやアフリカ、南米です。
出張や旅行などでアジアやアフリカ、南米に渡航する予定のある人は、とくに予防を徹底しましょう。
Q&A
破傷風に関するよくある質問
- .日本人は破傷風にかかる人が多いですか?
- 破傷風は土壌に広く生息する破傷風菌による感染症で、破傷風菌は動物や人の腸の中、また糞にも存在します。 破傷風菌は毒性の強い神経毒素を産生し、中枢神経を侵して命に関わる症状を引き起こします。 特に野外活動が増える季節に発生が多く見られます。
- 破傷風になりやすい人は?
- 1967年以前に生まれた中高年の人は、今までに1回も破傷風トキソイドを接種していないことが多く、発症するリスクが高いです。 この世代の人はご自身で医療機関に相談して、破傷風トキソイドを接種することをおすすめします。
- 破傷風はどこで感染する?
- 破傷風は土壌に広く生息する破傷風菌による感染症で、破傷風菌は動物や人の腸の中、また糞にも存在します。 破傷風菌は毒性の強い神経毒素を産生し、中枢神経を侵して命に関わる症状を引き起こします。 特に野外活動が増える季節に発生が多く見られます。
この記事の監修者
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著者
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記事担当:笹倉 渉
MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。
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