公開日:2024.03.14更新日:2024.05.02

風疹とは?症状・ワクチンについて


風疹は、発熱・発疹・リンパ節の腫れなどを特徴とする感染症です。

風疹は感染力が強く、日本国内でも1990年代前半までは大規模な流行がみられました。

本記事では、病気の特徴や症状、原因、予防方法について解説します。

風疹とは?

風疹は感染すると、小児よりも成人のほうが重症化する傾向にあります。

現在は、風疹ワクチンが幼児に対する定期接種の対象となり、全国的な流行は発生していません。

しかし、2011年頃からは「海外で感染した人が帰国後に国内で発症する」という例がみられたため、引き続き注意が必要です。

なお、風疹は5類感染症に指定されているため、風疹と診断した医師は直ちに保健所に報告する義務があります。

このようにして、行政では風疹の患者数と発生状況を把握しているのです。

また第2種の学校感染症に分類されるため、児童が罹患した場合は発疹が消失するまで原則として登校することができません。

その他、流行している地域に居住している場合や流行国に滞在した場合は、流行状況や行動歴などにより出席が一定期間停止になる場合があります。

風疹の原因

風疹の原因は、風疹ウイルスです。

感染力が強く、免疫を獲得していない集団で1人が風疹に罹患すると、5〜7人に感染が広がるとされます。

感染経路は飛沫感染で、罹患者の咳やくしゃみなどで飛散した飛沫を吸い込むことで、感染が起こります。

風疹の感染対策で注意すべき点は、2〜3週間の潜伏期と、感染しても症状が出ない「不顕性感染」です。

風疹は発疹がみられ始める頃から前後1週間は感染力があるとされ、症状のない期間でも感染力があります。そのため、発症してから隔離などの対策を行っても、既に感染が広がっている可能性があります。

風疹の症状

風疹の代表的な症状は、感染から2〜3週間後にあらわれる発熱・発疹・リンパ節腫脹です。

同じく発疹性感染症である麻疹(はしか)と症状が似ていますが、風疹は「三日はしか」という別名のとおり麻疹よりも症状が軽い傾向があります。

小児では症状が軽いものの、脳炎や血小板減少性紫斑病などの合併症が起こる可能性があるため注意が必要です。

成人も含めた風疹罹患者のなかで、こうした重篤な合併症を発症する割合は2,000人〜5,000人に1人程度です。

脳炎や血小板減少性紫斑病を発症した場合、入院が必要になることもあるでしょう。

また、成人が風疹になった場合は高熱や発疹が小児よりも長く続く他、罹患者が妊娠中だった場合は胎児が先天性の障害を抱えて出生する場合があります。

風疹による先天性の障害を「先天性風疹症候群」と呼び、障害があらわれる部位は眼・耳・心臓などです。

こうした先天性風疹症候群のリスクは、罹患した妊婦が妊娠1か月だった場合は50%以上、妊娠2か月の場合は35%ほどとされます。

風疹ワクチン接種と予防方法

風疹の予防にはワクチン接種が有効とされています。

ここからは、風疹ワクチンについての概要・料金目安・副反応などを紹介します。

・風疹ワクチンの種類と料金目安

風疹ワクチンは「生ワクチン」に分類されます。

生ワクチンとは、培養を繰り返すなどの方法で細菌やウイルスを弱毒化させたものです。

日本国内で風疹ワクチンとして接種されているワクチンは主に、「麻疹風疹混合(MR)ワクチン」です。

1回の接種で95%以上の人が免疫を獲得できるとされていますが、2回目の接種を受けることで、1回目では免疫が獲得できなかった人も含め99%の免疫獲得が期待されます。

また、感染や予防接種により免疫を獲得した場合も、数年をかけて徐々に免疫が低下していきます。

このような場合でも、追加でワクチンを接種することで、低下した抗体価を再び上げることが可能です。

風疹ワクチンは定期接種のため、対象となる年齢の人は費用が公費負担(無料)です。

一方、対象年齢以外の人については「任意接種」という扱いになるため接種費用は自費になります。

当院の場合、1回につき10,780円で接種可能です。

任意接種が推奨される人の例としては、下記が挙げられます。

  • 医療・教育・保育関係者
  • 海外渡航の予定がある人
  • 妊娠可能年齢の女性
  • 風疹抗体価が十分ではない妊婦の同居家族で、風疹の罹患歴がない人
  • 風疹の罹患歴はあるが抗体値が十分でない人
  • 風疹ワクチンの接種が2回未満の人

なお、前述のとおり妊娠中に風疹に罹患した場合は、先天性風疹症候群の子どもが出生する可能性が高まります。

しかし、妊娠中は風疹ワクチンを接種することができないため、多くの自治体が妊娠を希望する女性と妊婦の同居家族に対して、無料で風疹の抗体検査を行っています。

各自治体の事業内容や費用については、お住まいの自治体ごとに異なるため、詳細は居住地域の保健所などに確認することをおすすめします。

・風疹ワクチン接種スケジュール

公費で風疹ワクチンを接種できる「定期接種」のタイミングは下記のとおりです。

  • 1期:1歳時(生後12か月~24か月)
  • 2期:小学校入学前の1年間(5歳~7歳未満)

風疹ワクチンの接種を受ける際は、多くの場合、麻疹風疹混合(MR)ワクチンの接種となります。

そのため、風疹ワクチンの定期接種スケジュールは麻疹ワクチンと同じです。

上記以外の年齢の人は、接種が推奨される条件に当てはまる人であっても任意接種(自費)になります。

任意接種を受ける場合は、1回目と2回目の間隔は4週間以上あける必要があります。

なお、下記の人に対する風疹ワクチンの接種は禁忌です。

  • 妊娠中の人
  • 疾患などにより免疫機能に異常がある人
  • 別の病気に対して免疫機能を抑制する治療を行っている人
  • 麻疹風疹混合(MR)ワクチンに対して重篤なアレルギーがある人

ワクチンを接種できない人の同居家族は、ワクチンを接種できない人に風疹を感染させないためにワクチンを2回接種するなどの対策が必要です。

加えて、麻疹風疹混合(MR)ワクチン接種後2か月間は妊娠を避けましょう。

・風疹ワクチン接種の副反応

ワクチン接種後の副反応として多い症状は発熱です。

その他、薬疹が3%、風疹のような発疹が数%ほどみられます。

小児の場合は、発熱に伴うけいれん(熱性けいれん)が出現する可能性があるため注意が必要です。

こうした副反応の多くは1回目の接種後にあらわれます。

2回目の接種後は上記のような副反応は少なく、接種部位の発赤や腫れのみがあらわれるケースが多いです。

多くの場合、ワクチンに対するアレルギー反応である薬疹やアナフィラキシーショックなどは接種後数分〜数時間で出現します。

一方、副反応は接種後1週間以内に時間をかけて出現することが一般的です。

ただし、まれに接種後2週間ほどが経過してから発疹などがみられることもあります。

風疹ワクチンの重篤な副反応としては、アナフィラキシーショックの他に脳炎・脳症が挙げられます。

100万人〜150万人に1人以下と頻度は低いですが、命にかかわる可能性がある副反応です。

なお、これらは副反応として報告されていますが、ワクチン接種との因果関係が明らかでないケースも含まれています。

風疹ワクチンの製造にはニワトリの胚細胞を用います。

卵自体は使用していないため、卵アレルギーの人でも風疹ワクチンに対してアレルギーを起こすことはまれです。

ただし、アナフィラキシーショックなど重いアレルギー反応の既往がある人は、接種前に医師に相談することをおすすめします。

・風疹の予防方法

風疹の感染経路は飛沫感染のため、手洗い・うがい・マスクの着用は一定の効果が期待できます。

しかし風疹は感染力が強く、また症状が出ていない期間でも感染力がある場合があるため、生活習慣での予防は困難であり、風疹の予防にはワクチンの接種が効果的であるといえます。

風疹の感染リスクのある地域(国名のみ)

上記の国で感染の報告が多く上がっていますが、世界中どの国でも感染の可能性があります。

Q&A

風疹に関するよくある質問

妊婦が風疹にかかったらどうなる?
妊婦が風疹にかかった場合、母体にあらわれる症状は成人が罹患した場合と同様です。 ただし、胎児に先天性疾患などがあらわれることがあり、これを「先天性風疹症候群」と呼びます。
妊娠中に風疹にかかると胎児にどのような影響がありますか?
「先天性風疹症候群」があらわれる可能性があります。 先天性風疹症候群の主な症状は、先天性心疾患・難聴・白内障です。 またその他にも、網膜症・肝脾腫・血小板減少・糖尿病・発育遅滞・精神発達遅滞などがみられることもあります。
妊娠何週目までに風疹にかかると胎児に影響しますか?
妊婦が風疹に罹患すると胎児が「先天性風疹症候群」を発症する可能性があります。 先天性風疹症候群が発症する確率は、妊娠1か月:50%以上→妊娠2か月:約35%→妊娠3か月:約18%→妊娠4か月:約8%です。このデータから推測されるとおり、妊娠の初期に罹患するほど発症の確率は上がります。

この記事の監修者

著者

記事担当:笹倉 渉

MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。

Popular place

人気の渡航先

今後行く可能性が高い、
渡航先のワクチン情報をチェックしましょう。

ミクロネシア

マーシャル

ボスニア・ヘルツェゴビナ

Information

各国で流行している感染症

渡航先の近くで流行している、または、今後国内で発生するリスクのある感染症を予習しておきましょう。

マラリア

腸チフス

ヒトパピローマウイルス

Column

お役立ちコラム

更新日:2024.02.29

海外旅行の持ち物リスト!必需品とあったらいいもの

更新日:2024.02.29

海外で病気になったら?なる前に知っておく・準備しておくべきこと

更新日:2024.02.29

海外旅行で考えられる主な危険・リスクと、それへの対策リスト

更新日:2024.02.29

海外に薬を持ち込みできる?おすすめの薬などもご紹介

更新日:2024.02.29

海外旅行に行くのに必要な手続きは?行く前に要チェック

更新日:2024.02.29

海外出張の際に必要な持ち物リスト。持って行った方が良いものは?

Reservation

海外渡航前には
ゆとりをもってワクチン接種を。

渡航先や目的によって予防接種の種類はさまざま。
複数回摂取が必要なワクチンも。
以下よりワクチンのご予約が可能です。

ワクチン予約フォーム