公開日:2024.03.14更新日:2024.05.02

ムンプス(おたふく風邪)とは?症状・ワクチンについて


「ムンプス」という名前を聞き慣れない人も多いかもしれませんが、俗にいう「おたふくかぜ」のことをいいます。

3歳〜4歳ごろにかかりやすい感染症ではありますが、一度もかかったことがなかったり、ワクチンを接種したことがなかったりする人は、年齢を問わず感染するリスクがあります。

13歳以上になると合併症を引き起こす患者数が増加することもあり、不安な人はワクチンを接種することがおすすめです。

本記事では、病気の特徴や症状、原因と併せてワクチンや海外の感染リスク地域について解説します。

 

ムンプスとは?

ムンプスは「おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)」のことで、一度かかると永久的に免疫が成立する病です。

パラミクソウイルス科に属する「ムンプスウイルス」に感染することで、発熱を伴った唾液腺の腫れを発症します。

このウイルス自体は麻疹と比べて感染力はそれほど高くありませんが、耳下腺炎を発症する直前になると急に伝染力が強くなるのが特徴です。

おたふくかぜというと子どもが発症しやすい病気というイメージがありますが、発症したことがなく免疫を持っていない場合は成人でも発症します。

潜伏期間が長いことや症状が出ない場合があること、さまざまな合併症を起こしやすいことから、診断が困難な病気です。

とはいえ、診断方法自体はあり、臨床診断、ワクチン未接種の人の場合は血液検査、過去に接種している人は血清による抗体の上昇で確認ができます。

診断が確定した場合、まだ有効な治療法が確立されていないため対症療法を中心とした治療を開始します。

具体的には、発熱がみられる場合は解熱剤の投与、合併症により脱水を起こしている場合は輸液などです。

咀嚼による負担を軽減するために、おかゆやうどんなどの柔らかいものを食べたり、酸っぱいものを避けたりといった食事法を取り入れることも推奨されています。

 

ムンプスの原因

発症する原因は、ムンプスウイルスが含まれる飛沫や唾液に接触することによる感染です。

鼻腔や口腔からウイルスが体内に入り込むことが発症原因とされていますが、詳しい侵入経路は分かっていません。

唾液腺に腫れがあらわれる最長7日前には唾液腺の内部にウイルスが潜んでいますが、感染力が強くなるのは耳下腺炎が発症する直前です。

ムンプスウイルスの宿主は人間だけなので、感染症を起こすウイルスの宿主に多い、犬やコウモリといった動物でも保有することはありません。

よって、動物から人に移ることはありません。

 

ムンプスの症状

ムンプスは唾液腺の腫れが広く知られた症状ですが、感染しても1/3の人には腫れや発熱といった症状がみられません。

感染した場合、12〜24日の潜伏期間を経たのち、初期症状として頭痛や食欲不振、倦怠感、微熱、発熱などがみられることが多い傾向にあります。

唾液腺の腫れは2日目にピークを迎え、5〜7日間続きます。

唾液腺の腫れがみられるようになると発熱も悪化して39.5〜40℃にまで上がり、その状態が24時間〜72時間続きます。

そのあいだは非常に強い圧痛も加わり、咀嚼がつらく感じるでしょう。

症状が軽快するまでの期間は、1〜2週間くらいが一般的です。

唾液腺の他に、血中や尿中に、中枢神経系の感染が確認された場合は、髄液中にもウイルスが存在します。

合併症としては、精巣炎や卵巣炎、睾丸炎、髄膜炎、脳炎、膵炎があります。

まれではありますが、難聴、前立腺炎、腎炎、肝炎、心筋炎、乳腺炎、多関節炎を発症する場合もあります。

合併症は、思春期以降にムンプスを発症した場合に起こることが多いです。

 

ムンプスワクチン接種と予防方法

ワクチンの種類や料金目安、接種のスケジュール、その他予防法などをご紹介します。

ワクチンの接種を検討している人、また予防方法を知って実践したいと考えている人は、最後まで目を通してみてください。

 

・ムンプスワクチンの種類と料金目安

ムンプスの予防に使用されるワクチンの種類は「ムンプス生ワクチン」と「麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチン」です。

ムンプスのワクチンは、毒性の弱いウイルスをニワトリ胚細胞で増やして得たウイルス液を精製し、安定剤を加えたものを凍結乾燥させて製造されます。

生ワクチン、混合ワクチンともに任意であるため、定期予防接種とは違い費用がかかります。

当院の場合「おたふくかぜワクチン」の費用は1回6,600円です。

自治体によっては公費助成制度を設けているところがあるため、気になる人は現在住んでいる自治体に相談してみてください。

 

・ムンプスワクチン接種スケジュール

1度のワクチン接種でも終生免疫を手に入れることができますが、定期接種としている海外諸国では確実に予防するために2回ワクチンを接種します。

日本小児科学会も2回の接種を推奨しているため、より高い発症予防効果が欲しい人は2回接種することをおすすめします。

ワクチンを接種できる年齢は1歳以上であるため、大人であれば何歳でも接種可能です。

子どもにワクチン接種を受けさせる場合は、まず1歳になったら1回目を接種し、集団生活に入る5歳から6歳までには2回目を接種することが推奨されています。

大人がワクチンを接種する場合は、好きなタイミングで1回目を接種し、28日以上の日数をあけてから2回目を接種してください。

子どもの2回目のワクチン接種も、1回目の接種から28日以上あけていればいつでも接種できます。

 

・ムンプスワクチン接種の副反応

副反応として、接種2〜3週間後に発熱症状が出たり、耳下腺が腫れたりすることがあります。

また、数千人に1人の確率で接種後から16日前後に無菌性髄膜炎を起こすことがあり、発熱や嘔吐、小児の場合は不機嫌が続くといった症状がみられます。

まれではありますが、脳炎を起こす場合もあります。

その他、精巣炎や卵巣炎といったおたふくかぜの合併症を起こしたときに類似した症状が起きることもあります。

また、ワクチンによるアレルギー反応やアナフィラキシーショックを起こすこともあるため、注意が必要です。

 

・ムンプスの予防方法

ムンプスの感染経路は飛沫・接触感染であるため、手洗い、うがい、咳エチケットが予防に有効です。

ただし、完全に予防することはできないため、2回のワクチンで免疫を身につけることを推奨します。

また、ムンプスウイルスは消毒液への抵抗性がそれほど強くないため、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムで消毒することで不活性化の効果が期待できます。

 

ムンプスの感染リスクのある地域

ムンプスは世界中に存在している感染症であり、日本も例外ではありません。

ムンプスの流行を繰り返している国には、エジプト及びリビアを除くアフリカ諸国、東アジア地域の一部の国が挙げられます。

これらの国に旅行や出張に行く予定があり、ワクチン未接種または未感染で免疫を得ていない人は、渡航ワクチンを接種して予防に努めましょう。

Q&A

ムンプス(おたふく風邪)に関するよくある質問

ムンプスは空気感染しますか?
ムンプスウイルスは潜伏期から唾液に存在しているため、咳やくしゃみといった飛沫を吸い込んで感染します。 発病する数日前から主要症状が改善されるまで感染力があるため、他の人に移さないよう接触を避けなければなりません。 ウイルスの宿主は人だけですので、接触を避けることで感染拡大を予防できます。
ムンプス難聴の人は何人くらいいますか?
年間に700〜2,300人のムンプス難聴患者が発生しているといわれています。 また、その内の一部は両側性難聴と考えられています。
ムンプスはどのくらいで治りますか?
通常は1~2週間で自然治癒します。 確立された治療法はなく対症療法となるため、発病しないよう予防することが大切です。 加えて、ムンプスは唾液腺の腫れや発熱といった主症状だけではなく合併症を起こすリスクもあることから、予防に徹することが重要です。 日本では1歳以上の子どもから、任意予防接種ではありますが生ワクチンの接種が可能です。

この記事の監修者

著者

記事担当:笹倉 渉

MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。

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