公開日:2024.03.14更新日:2024.05.02

髄膜炎とは?症状・ワクチンについて


髄膜炎にはさまざまな種類の疾患があり、なかには命に関わる恐ろしい疾患もあります。

感染・発症原因も疾患によって異なる上に複雑であるため完全に予防することは難しく、世界中で発症事例が絶えません。

今回は、髄膜炎とはどのような病気なのか、特徴や原因、予防のためのワクチン、その他予防方法について解説します。

髄膜炎とは?

脳を守るため頭蓋骨と脳の間に存在している膜を「髄膜(ずいまく)」と言います。髄膜は「軟膜」「くも膜」「硬膜」の3つの膜から成り立っています。さらに、軟膜とくも膜の間には脳脊髄液(のうせきずいえき)が脳の形を維持するために存在しています。

髄膜炎は、脳を守るために存在している髄膜に細菌やウイルスが侵入し、炎症を起こした状態です。

「細菌性」と「無菌性」に大きく分類でき、無菌性はさらに細かく分類され「ウイルス性」「真菌性」「原虫性」と呼ばれることもあります。また、症状の現れ方に「急性」「慢性」「亜急性」「再発性」があります。

亜急性は徐々に進行する状態のことを指します。

無菌性の髄膜炎は、通常1週間くらいで治癒していき後遺症も残りにくいのが特徴です。一方の細菌性は致死率が数十%程度ある上に後遺症も残りやすく危険な病気で、診断は血液検査、脳脊髄液検査、画像検査で行います。これらは、炎症反応を確認したり原因菌やウイルスを確定したりするために必要な検査です。

治療方法は、無菌性と細菌性で異なります。

無菌性は多くの場合ウイルス性と想定し安静療養、嘔吐や頭痛で脱水のリスクがある場合は点滴を行います。ただし、無菌性であると診断が確定されるまでは抗生剤治療を行うケースもあります。細菌性の場合は、抗生剤の点滴治療が中心です。

髄膜炎の原因

細菌性と無菌性に分けて原因を解説します。

細菌性髄膜炎を起こす原因菌は以下の通りです。

  • 髄膜炎菌
  • インフルエンザ菌
  • 肺炎球菌
  • B群レンサ球菌
  • 黄色ブドウ球菌
  • 緑膿菌
  • リステリア菌 など

 

上記のような細菌を保有している人の咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込み、気道から血中や髄液に菌が侵入することで髄膜炎を発症します。

無菌性髄膜炎を起こす原因菌は以下の通りです。

  • 単純ヘルペスウイルス
  • 水痘帯状疱疹ウイルス
  • HIV
  • アルボウイルス(ウエストナイルウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルスなど)
  • リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(アレナウイルス)
  • 新型コロナウイルス など

 

上記ウイルスの感染者あるいは動物からの飛沫感染や接触感染、血液や汚物への接触、空気感染などにより血中や髄液に菌が侵入することで発症します。

ただし、新型コロナウイルスによる髄膜炎の発症は、水痘帯状疱疹ウイルスなど別のウイルスとの同時感染が原因の場合もあります。

 

髄膜炎の症状

髄膜炎の症状は細菌性と無菌性でよく似ていますが若干異なります。

無菌性は細菌性と比べて症状は軽く、発症や進行が緩やかです。

初期症状は、細菌性と無菌性ともに発熱や全身の倦怠感、頭痛、食欲不振、咳、嘔吐などが見られます。

ただし、急性細菌性髄膜炎の場合は初期症状の時点でけいれん発作が見られることがあったり、無菌性髄膜炎の場合は初期症状がない場合があったりします。

症状が進行すると、どちらのタイプも意識障害やけいれん発作といった命に関わる症状が現れ、予断を許さない状況に陥る場合も少なくありません。

 

このように、最初は軽い症状であっても、最終的には重篤化し亡くなってしまうリスクがあります。

命を守るためには、治療ではなく予防が非常に大切です。

 

髄膜炎ワクチン接種と予防方法

髄膜炎に関連するワクチン接種と予防方法について解説します。

髄膜炎の発症はワクチンの導入により激減傾向にあります。

年間1,000人近い細菌性髄膜炎発症が報告されていましたが、小児科においては2008年と2010年にワクチンが導入されてから報告数が減少しました。

ワクチンは予防の観点では大きく有効であることが示されたのです。

本項では、髄膜炎を予防できるワクチンの種類や接種スケジュール、副反応、その他の予防方法について解説します。

自分と家族の命を守るためにも、最後まで目を通してご確認ください。

 

髄膜炎ワクチンの種類と料金目安

ワクチンの接種により、一部の細菌性髄膜炎の発症予防が可能です。

細菌性髄膜炎の予防に役立つのは「髄膜炎ワクチン」「ヒブワクチン」「肺炎球菌」の3種類です。

細菌性髄膜炎の約80%はヒブと肺炎球菌によって引き起こされるため、これらのワクチン接種は予防に大きく役立ちます。

 

ヒブと肺炎球菌のワクチンは、乳幼児の定期予防接種の対象ですので、補助により無料で接種できます。

髄膜炎菌ワクチンは任意接種であり、当院では、1回につき25,300円で接種可能です。

 

・髄膜炎ワクチン接種スケジュール

髄膜炎ワクチンの接種スケジュールは、ワクチンの種類や初回接種の月齢・年齢によって異なります。

小児用肺炎球菌ワクチンは生後2か月から接種でき、初回接種が生後2か月〜6か月の場合は4回、生後7か月〜11か月の場合は3回、1歳は2回、2〜5歳は1回と決まっています。

初回接種を生後2か月〜11か月に受ける場合は4週間以上あけてから2回目以降を接種し、1歳の接種では1回目から60日以上あけてから2回目を接種しなくてはなりません。

 

ヒブワクチンも同じく生後2か月から接種可能で、初回接種が生後2か月〜6か月なら4回、生後7か月〜11か月なら3回、満1歳〜4歳なら1回です。

初回接種を生後2か月〜6か月で受ける場合は4週間〜8週間以上あけてから2回目と3回目を接種し、4回目は最終接種から7か月〜13か月後の1歳早期が望ましいです。

生後7か月〜11か月で初回接種の場合は、4週間〜8週間以上あけてから2回目の接種をし、3回目は最終接種から7か月〜13か月後の1歳早期に接種します。

髄膜炎菌ワクチンは2歳〜55歳まで接種でき、接種回数は1回のみです。

アメリカでは、感染確率が高い10代後半〜20代は定期接種の対象となっており、11〜12歳に1回、16歳で追加接種することが推奨されています。

 

・髄膜炎ワクチン接種の副反応

副反応の症状はワクチンの種類によって異なります。

小児用肺炎球菌やヒブワクチンに見られる副反応は、発熱や注射箇所の腫れやしこり、赤みです。

髄膜炎菌ワクチンは注射箇所の赤みや痛みが副反応として見られます。

アナフィラキシーショックなどの重篤な全身反応はまれです。

 

・髄膜炎の予防方法

髄膜炎の基本的な予防方法はワクチン接種です。

加えて、髄膜炎を起こした家族や友人などと長時間の接触がある場合は、ウイルスや細菌に感染している可能性があるため、曝露後化学予防の実施が推奨されています。

曝露後化学予防の方法には、内服薬や注射による薬の投与などがあります。

 

髄膜炎の感染リスクのある地域

細菌性髄膜炎の感染リスクがある地域は主にアフリカ中央部であり、髄膜炎ベルト地帯であるアフリカのセネガルからエチオピアです。

また、侵襲性髄膜炎菌感染症はヨーロッパのイギリスオランダスウェーデン、イングランドなどの諸国、オーストラリアで感染リスクがあります。

旅行や出張などでこれらの地域に行く予定のある人は、渡航前にワクチンを接種することを推奨します。

Q&A

髄膜炎に関するよくある質問

髄膜炎かもと思ったらどうしたらよいですか?
髄膜炎にかかった場合は、速やかに抗菌薬や抗ウイルス薬の投与、または脳のむくみや炎症を抑える治療が必要です。 重症や劇症型である場合は命を落とすリスクが高まり、後遺症が残る可能性もあるため、髄膜炎を疑ったらすぐに医療機関で診察を受けましょう。
.髄膜炎はどうやって感染するのですか?
髄膜炎菌は健康な人でも鼻や喉の粘膜に付着している可能性があります。 くしゃみや咳などにより分泌物に直接触れたり飛沫を吸い込んだりすることで感染します。 そして、体内に吸い込まれた髄膜炎菌が血流に乗り、髄膜まで運ばれると髄膜炎を発病します。
大人が髄膜炎になるのはなぜ?
細菌性髄膜炎の原因菌は、年齢や元々の持病によって異なります。 成人であれば肺炎球菌やインフルエンザ菌が原因となり、高齢者の場合は肺炎球菌や溶血性連鎖球菌B型、腸内細菌や緑膿菌が原因となることが多いとされています。

この記事の監修者

著者

記事担当:笹倉 渉

MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。

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