公開日:2024.03.14更新日:2024.05.02

麻疹とは?症状・ワクチンについて


麻疹とは「はしか」と呼ばれることもある、急性ウイルス性発疹症の一種です。

高熱などの後に特徴的な発疹があらわれる病気です。

本記事では、病気の特徴や症状、原因、予防方法について解説します。

麻疹とは?

麻疹は感染力が非常に強いため、集団感染のリスクが高い感染症とされます。

発症すると高熱や上気道炎症状、結膜炎症状などがみられ、それらに続いて特徴的な発疹が確認できます。

麻疹そのものの症状以外に、ウイルスによる炎症が広がり、肺炎や脳炎などの命にかかわる合併症が出ることもあるため注意が必要です。

合併症も含めると麻疹による死亡者数は多く、先進国でも罹患者1,000人に対して1人ほどの割合で死者が出るといわれています。

日本においては2000年代に若年層を中心とした大規模な流行がみられ、流行期間中に確認された麻疹による死亡者は年間で約20〜30人です。

これを受けて2008年より若年層に対する麻疹ワクチン接種の機会を設けるなど、予防接種の徹底を図りました。

こうした施策から、2009年以降は日本国内での若年層での大規模な流行は確認されていません。

なお、麻疹は厚生労働省の指定する第5類感染症です。

そのため、発生した場合は患者を診断した医師が速やかに地域の保健所へ報告する義務があります。

また、第2種の学校感染症に指定されているため、罹患した児童は解熱から3日を経過するまでは原則として登校することができません。

その他、流行地域に居住している場合や流行国に渡航歴がある場合も状況により登校が制限される可能性があります。

麻疹の原因

麻疹は、麻疹ウイルスによる感染症です。

麻疹ウイルスの感染力は非常に強く、下記のとおり複数の感染経路があります。

  • 空気感染
  • 飛沫感染
  • 接触感染

空気感染は、飛沫に含まれるウイルスが空中に長時間漂うことで起こります。

たとえ飛沫が飛散していないタイミングであっても、空気中のウイルスを吸い込んだ人に感染がみられるというものです。

これに対して飛沫感染とは、咳やくしゃみにより飛沫が飛散した瞬間に、周囲にいる人が空気とともに微細な飛沫を吸い込むことで起こります。

また接触感染とは、罹患者に接触したり、ウイルスが付着した手で触れられたものや患者の飛沫が付着したものに触れたりすることで起こる感染を指します。

麻疹の症状

麻疹には10〜12日ほどの潜伏期があります。

発症して最初にあらわれる症状は、咳や鼻水、発熱などの感冒症状です。

また、充血や目脂(めやに)などの結膜炎症状がみられることもあり、症状は徐々に強くなります。

上記の症状がみられる期間を「カタル期」と呼び、同様の状態が2〜4日ほど続きます。

カタル期の後半には、口腔粘膜に白色小斑点(コプリック斑)や溢血斑、発赤などがみられることが多いです。

カタル期を過ぎると、次に訪れるのは「発疹期」で、発疹期に入ると39℃以上の高熱や発疹が出現します。

高熱・発疹が3〜5日ほど続いた後に、症状は快方へ向かいます。

加えて、乳幼児の場合は、罹患者の3割ほどに下痢や腹痛などの消化器症状もみられます。

また、麻疹ウイルスは人体に侵入した後に、リンパ組織を中心として増殖します。

これにより、免疫機能が強く抑制されるという点に注意が必要です。

この免疫抑制により、麻疹に合併した感染症や炎症は重症化しやすいとされています。

麻疹の主な合併症は肺炎や脳炎、中耳炎で、なかでも麻疹肺炎と麻疹脳炎は麻疹の二大死亡原因とされています。

麻疹によって罹患者が肺炎になる確率は約6%で、脳炎になる確率は約0.1%です。

なお麻疹の合併症は、麻疹の発症中に合併するものだけではありません。

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる中枢神経疾患は、麻疹を発症してから平均して7年ほど後に発症する合併症です。

亜急性硬化性全脳炎を合併する人は、麻疹罹患者の数万人に1人程度とされています。

このように、麻疹治癒後に時間をおいて合併症があらわれる可能性もあるため、小児期の既往について記録などに残し、把握しておくことが大切です。

麻疹ワクチン接種と予防方法

麻疹は重症化するケースもあり、感染力も強い病気です。

そのため、日本では法律により麻疹ワクチンの接種が義務付けられています。

ここからは、麻疹ワクチンとはどのようなワクチンなのか、どのタイミングで接種するのかなどを解説していきます。

・麻疹ワクチンの種類と料金目安

麻疹ワクチンは「生ワクチン」に分類されます。

生ワクチンとは、培養を繰り返すなどの方法で細菌やウイルスを弱毒化させたワクチンです。

日本では、2005年以前は麻疹ワクチンの定期接種を「1回」としていました。

1回の接種でも、95%前後の人が免疫を獲得可能ですが、2006年以降は2回接種が推奨されています。

接種回数を2回にすることで、1回目の接種で免疫獲得に至らなかった人も免疫を獲得できると期待されます。

定期接種は特定の年齢層の乳児・児童を対象としていますが、下記の人は任意接種が推奨されます。

  • 医療・教育・保育関係者
  • 海外渡航の予定がある人
  • 家庭内に0歳児がいる人
  • 麻疹抗体価が十分ではない妊婦がいる家族
  • 麻疹の罹患歴がない人
  • 麻疹ワクチンの接種が2回未満の人

乳児・児童を対象とした定期接種は費用が公費で負担されるため無料ですが、任意接種は自己負担で費用が発生します。

当院の場合、1回につき10,780円で接種可能です。

・麻疹ワクチン接種スケジュール

公費で麻疹ワクチンを接種できる「定期接種」のタイミングは下記のとおりです。

感染予防のため、接種可能な年齢になったら可能な限り早期の接種をおすすめします。

  • 1期:1歳時(生後12か月~24か月)
  • 2期:小学校入学前の1年間(5歳~7歳未満)

上記以外の年齢の人は、接種が推奨される条件に当てはまる人であっても任意接種(自己負担)です。

任意接種を受ける場合は、接種年齢に定めはありません。

麻疹ワクチンのスケジュールを決める際は、1回目と2回目の間隔が4週間以上あくようにしましょう。

・麻疹ワクチン接種の副反応

麻疹ワクチンの主な副反応は下記のとおりです。

感冒症状に似たものが多く、一般的には接種後数日で軽快します。

  • 発熱・発疹
  • 鼻汁
  • 咳嗽
  • 注射部位紅斑・腫脹

上記の他に重篤な副反応として、アナフィラキシー、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、脳炎・脳症、けいれん、血小板減少性紫斑病などが報告されています。

なお、麻疹ワクチンはニワトリの胚細胞を用いて製造されていますが、卵自体は使用していません。

そのため、卵アレルギーの人でも麻疹ワクチンに対してアレルギーを起こすことはまれです。

ただし、アナフィラキシーなどの重いアレルギー反応の既往がある人は、接種前に医師に相談することをおすすめします。

・麻疹の予防方法

記事の冒頭で触れたとおり、麻疹は感染力が強く、感染経路も多様です。

間接的な接触感染に対しては手洗いが有効ですが、空気感染については手洗いやマスクでの予防は難しいでしょう。

このような点から考えると、麻疹の予防に効果的な方法は予防接種といえます。

なお、麻疹の感染者に接触した後であっても、72時間以内に麻疹ワクチンの接種を予防投与することで、発症を避けることができる可能性があります。

麻疹の感染リスクのある地域

【感染リスクのある地域】

  • アフリカ
  • アジア

【感染リスクのある国】

Q&A

麻疹に関するよくある質問

はしかと麻疹の違いは何ですか?
はしかは麻疹の別名です。 正式には麻疹と呼ばれますが、一般的には「はしか」と呼ぶことが多いです。
はしかは何で感染するのですか?
はしかは空気感染、飛沫感染、接触感染と幅広い感染経路から感染する病気です。 空気感染は飛沫感染と似ていますが、その場で咳やくしゃみにより飛沫が飛散した後も、ウイルスを含む空気を吸い込めば感染する可能性があります。
はしかは一度かかるとかからない?
麻疹に感染すると、多くの人は体内で麻疹ウイルスに対する抗体が作られるようになり免疫を獲得します。 そのため、罹患歴がなくワクチンも摂取していない人と比較すると感染しにくいでしょう。 しかし、感染歴があっても十分な免疫を獲得できない人もいるため、妊娠の予定がある人などは医療機関などで抗体価を調べることをおすすめします。

この記事の監修者

著者

記事担当:笹倉 渉

MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。

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