公開日:2024.03.14更新日:2024.03.14

ヒトパピローマウイルス(HPV)とは?症状・ワクチンについて


ヒトパピローマウイルス(HPV)は性交渉の経験がある人なら「50%以上もしくは80%以上の確率で一度は感染している」とも言われているウイルスです。

ヒトパピローマウイルスは感染しても自然に治ることが多いですが、がんやコンジローマなどの感染症を引き起こすこともあります。

また、性交渉による感染症の中でワクチン予防ができる珍しいウイルスです。

日本はそれほどワクチン接種率が高くはありませんが、海外ではワクチン接種率が増加傾向にあります。

本記事では、ヒトパピローマウイルスの特徴、原因、症状と併せてワクチン接種を含む予防方法、副反応について解説します。

ヒトパピローマウイルス(HPV)とは?

ヒトパピローマウイルスは、主に性交渉によって感染するウイルスです。

遺伝子のタイプは150種類以上にも上り、その内の16・18・31・33・45・52・58型はがんになりやすいことが分かっています。

16・18型は若年層の感染率が多いと言われており、知らない間に感染と自然治癒をし、一部の人は何度もこのルーティンを繰り返していると考えられています。

感染の有無を調べるための診断方法は、症状によって異なります。

たとえば、外性器にイボ状の突起がみられる場合は視診、内性器にイボがみられる場合は肛門鏡検査やコルポスコピーという方法が用いられます。

感染が確定した場合の基本的な治療方法は、基本的にレーザー、手術、電気焼灼術、凍結療法です。

場合によっては、外用療法を取り患部に軟膏薬を塗布することもあります。

ヒトパピローマウイルス(HPV)の原因

感染する主な原因は性交渉であり、男女関係なく、感染するタイミングは初めて性交渉を行った直後が多いです。

感染する性行為の内容に挿入の有無は関係なく、性器同士が接触するだけの場合や、オーラルセックスだけの場合であっても感染します。

オーラルセックスによる感染の場合は、口腔がんのリスクが上がります。

ワクチンを接種していない状態で性交渉をする人なら、一生のどこかのタイミングで8割の確率で感染すると考えられています。

よって、かからないためには性交渉が未経験の間にワクチンを接種することが望ましいです。

ウイルスの保持期間は一般的に感染してから数か月以内と言われているため、その期間中は周囲へ感染させる可能性があります。

自身が感染源である可能性を視野に入れ、性交渉をする際は感染予防対策を徹底することが感染を広げないために大切です。

ヒトパピローマウイルス(HPV)の症状

感染しても無症状であるケースが多いのが、ヒトパピローマウイルスの怖いところです。

感染しているにもかかわらず無症状で自然治癒することがほとんどであるため、知らぬ間に感染を広げている恐れがあります。

重症化すると、子宮頸がんをはじめとするさまざまながんや、尖圭コンジローマの症状があらわれます。

子宮頸がんにみられるのは、性交渉後の膣から生理のような出血、背中・足・骨盤の痛み、膣の不快感、おりものの不快臭、片足だけ腫れるといった症状です。

尖圭コンジローマの場合、外陰部や陰茎、肛門部など感染を起こした場所にイボの症状があらわれます。

イボ以外の症状がみられないため、女性はとくに見えない場所に発症すると気づかないケースが多いです。

なかには焼けるような痛みや不快感、痒みを感じることもあります。

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種と予防方法

ヒトパピローマウイルスの感染は気がつかない場合が多く、自覚症状があらわれたときにはがんや尖圭コンジローマに進行しています。

尖圭コンジローマで命を落とすことはありませんが、がんは命に関わる重い病気のため、なるべく感染しないようにすることが大切です。

本項では、ワクチンの種類や料金の目安、接種スケジュール、副反応とともに、他にできる予防方法について解説します。

国内外どこでも感染リスクがあるため、自分や家族を守るためにもぜひ最後まで目を通してください。

・ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの種類と料金目安

日本で打てるワクチンの種類は以下の3種類です。

  1. シルガード9
  2. ガーダシル
  3. サーバリックス

シルガード9は、9歳以上の女子を対象としています。

予防できる病気とウイルスのタイプは子宮頸がん(16・18・31・33・45・52・58型)、尖圭コンジローマ(6・11型)などのHPV感染症です。

ガーダシルは、9歳以上の女子・男子を対象としています。

予防できる病気とウイルスのタイプは、子宮頸・肛門がん(16・18型)、尖圭コンジローマ(6・11型)などのHPV感染症です。

サーバリックスは、10歳以上の女子を対象としています。

予防できる病気とウイルスのタイプは、子宮頸・肛門がん(16・18型)などのHPV感染症です。

ワクチンを接種するためにかかる費用は、医療機関によって異なるため正確な料金は直接医療機関に問い合わせる必要があります。

当院ではシルガード9の接種を実施しており、1回につき44,000円で接種可能です。

・ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種スケジュール

シルガード9は、年齢や接種回数によって接種スケジュールが変わります。

初回接種が15歳未満で2回接種の場合、2回目は初回から5か月以上あけて接種します。

同じく初回接種が15歳未満で3回接種の場合、2回目は初回から1か月以上5か月未満あけ、3回目は2回目から3か月以上あけます。

一方で初回接種が15歳以上の場合、接種回数は3回です。2回目は初回から1か月以上あけ、3回目は2回目から3か月以上あけて接種します。

ガーダシルは、年齢関係なく接種回数が3回です。

1回目と2回目の間を1か月以上あけ、3回目は2回目から3か月以上あけてから接種します。

サーバリックスは、ガーダシルと同じく年齢問わず接種回数が3回です。

1回目と2回目の間を1か月以上あけ、3回目は2回目から2.5か月以上かつ初回から5か月以上あけてから接種します。

もし、海外へ渡航前にワクチンを受けたい場合は、上記の通り2〜3回の接種が必要であるため、早めに計画を立てる必要があります。

・ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種の副反応

起こり得る副反応の症状は、注射箇所の腫れ・痛み・発赤、体の疲労感、頭痛、腹痛、筋肉痛、関節痛などが挙げられます。

ただし、まれに蕁麻疹や呼吸困難といったアナフィラキシーショック、手足が脱力するギランバレー症候群、嘔吐や意識レベルの低下があらわれる急性散在性脳脊髄炎が起きることもあります。

少しでも体調の異変を感じたら、速やかに接種を受けた医療機関を受診してください。

また、副反応は接種から30分後に出やすいため、接種後しばらくは医療機関の近くで過ごすことをおすすめします。

・ヒトパピローマウイルス(HPV)の予防方法

感染を予防する方法は「ワクチン接種」「避妊器具の装着」「オーラルセックスを避ける」ことです。

ほとんどの感染経路は性行為によるもののため、ワクチンを接種するか避妊具を使用するなどして直接分泌物に触れないようにすることが予防の要です。

また、不特定多数の相手や他にもパートナーがいる相手との性交渉を避けることも、予防には効果的です。

ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染リスクのある地域(国名のみ)

ヒトパピローマウイルスは宿主である人が性行為を行うことで感染するため、全世界で感染リスクがあります。

とくにヒトパピローマウイルスに関連する子宮頸がんが多いのは、中低所得者が多い国のため、アフリカ地域での発症が多いです。

ジンバブエやウガンダ、ザンビアなど多くの国でみられるため、アフリカ地域に赴く際はとくに感染に気をつけたほうがよいでしょう。

日本も発症数が多いため安心はできません。各自予防のためにできることを行っていきましょう。

Q&A

ヒトパピローマウイルスに関するよくある質問

ヒトパピローマウイルスはキスで移りますか?
ヒトパピローマウイルスはキスでも移ります。 他には、性交渉や手指の接触によっても感染します。
ヒトパピローマウイルスは風呂で感染しますか?
子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルスは、性行為やキスなどによって感染することはありますが、入浴やプール、動物などの人以外の環境から感染することはありません。
ヒトパピローマウイルスは性行為した相手が1人でも感染しますか?
子宮頸がんのほとんどは、性交渉を通してヒトパピローマウイルスに感染することが原因です。 よって、1人の相手とだけしか性行為の経験がない場合でも、感染のリスクはあります。

この記事の監修者

著者

記事担当:笹倉 渉

MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。

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