公開日:2024.03.04更新日:2024.05.02
B型肝炎とは?症状・ワクチンについて
肝炎にはいくつか種類があり、そのうちの一つが「B型肝炎」です。
B型肝炎ウイルスの感染経路は血液接触や性交渉などさまざまで、感染に気がつかないうちに肝不全やがんなどの重篤な疾患を引き起こしていることも少なくありません。
本記事では、病気の特徴や症状、原因、予防方法について解説します。
B型肝炎とは?
「HBV」というウイルスに感染し、引き起こされる急性肝炎です。
ウイルスに感染したタイミングやそのときの健康・免疫状態で、一過性感染になるか持続感染になるか決まります。
一過性はその名の通り、あるときを境に感染が治癒するものです。
持続感染は、ほぼ一生涯にわたって感染した状態が続きます。
ウイルスの感染経路は「垂直感染」と「水平感染」の大きく分けて二つです。
垂直感染は、母体がウイルスに感染しており出産時に産道から子どもへ感染することを指します。
水平感染は、母子感染以外の血液接触や体液による感染のことです。
2016年4月1日以降に生まれた赤ちゃんを対象に定期接種が開始されたため、ワクチンにより抗体を得ることができれば感染することはありません。
ただし、2016年4月1日以前に生まれた人はワクチン接種が義務化されていないため、感染のリスクがあります。
診断をするための検査には、抗体検査や抗原検査、ウイルスの遺伝子検査があります。
加えて、肝機能状態を調べるために血液検査を行ったり、肝臓に針を刺して組織を一部採取したりします。
治療方法は急性と慢性で違い、急性の場合は対症療法で対応し薬による治療は行いません。
よって、治療せずにウイルスが排除されるのを待つ形となります。
慢性の場合は完全排除が不可能であるため、それを踏まえた上での治療となります。
B型肝炎の原因
HBVは、遺伝子のタイプによってA~Jの9つに分類されています。さらに、地域ごとに特性が異なることが大きな特徴です。
A型には欧米型やアジア・アフリカ型、B型にはアジア型や日本型があります。
また、C型はアジア、D型は南ヨーロッパ・エジプト・インド、F型とH型は中南米に分布しています。
主な感染経路はウイルスに汚染された血液、唾液や分泌物といった体液です。
HBVが存在している血液や体液に接触し、体内にウイルスが侵入することで感染します。
感染を起こす要因として性行為、血液が付着した注射器の使い回し、タトゥーの施術、出産などが挙げられます。
なお、感染者との握手や抱擁、軽いキス、食器類の共用、入浴によって感染することはありません。
また、輸血による感染も日本においては報告件数が少ないです。
輸血剤は感染の有無を検査してから作るため、輸血によってB型肝炎に感染する確率は極めて低い状態になっています。
B型肝炎の症状
急性の場合は60日〜180日、慢性の場合は数十年の潜伏期間を経て症状が現れます。
急性では、初期症状に全身の倦怠感、食欲不振、疲労感といった症状が見受けられるのが特徴です。
初期症状が1週間くらい続いた後、吐き気・嘔吐、腹痛、黄疸、オレンジ色の尿といった症状が現れます。
ときに、紅斑や関節炎・関節痛を伴う場合や、無症状のまま完治する場合もあります。
急性を発症した際に恐れられているのは「劇症型肝炎」への移行です。
進行や症状が激しく、致死率は約70%と非常に高い確率に上ります。
慢性の場合は自覚症状がなくじわじわと進行していくのが特徴です。
気がついた時には重篤な肝炎や肝硬変、肝臓がんを患っていることもあります。
自覚症状がないまま、ウイルスが数年〜数十年と体内に存在し続ける状態のことを無症候性キャリアといいます。
肝がんを引き起こすのは慢性肝炎を治療しなかった場合です。
慢性肝炎は急性のように分かりやすい症状が現れないため、知らず知らずのうちに肝硬変や肝がんに進行する可能性があります。
慢性肝炎はウイルスの完全排除が難しいため、肝硬変や肝がんに進行させないための治療を行うことが多いです。
肝硬変や肝がんまでの進行を予防するには、検査で肝機能に異常がないかを調べるしか方法がありません。
通常の抗原検査や抗体検査では、ワクチン接種などで過去にウイルスが体内に入ったことがある場合は陽性となります。
よって、定期的な健康診断で血液検査を行い、肝臓の数値(ASTまたはGOT・ALTまたはGPT)、血清ビリルビンの数値をチェックすることが予防に繋がります。
B型肝炎ワクチン接種と予防方法
予防できるワクチン接種の種類や料金の目安、副反応に加えて、ワクチンのほかにできる予防方法について解説します。
出張や旅行などで海外に行く予定がある人、これまでワクチンを接種したことがない人は、ワクチンに関する知識や予防方法の知識を身につけることが大切になるため、ぜひ最後まで目を通してください。
・B型肝炎ワクチンの種類と料金目安
予防接種で使用される種類は、「B型肝炎ワクチン」または「HBワクチン」と呼ばれるものです。
世界180か国以上で使用されており、さまざまな製剤のなかでも安全性が高い製剤の一つに入ります。
当院の場合、1回につき4,950円で接種可能です。
・B型肝炎ワクチン接種スケジュール
4か月〜6か月の間にワクチンを3回接種することで、B型肝炎と肝がんの発症を予防できるとされています。
とくに、乳幼児期に3回接種した場合は、ほぼすべての人がB型肝炎ウイルスの免疫を獲得できます。
乳幼児の定期予防接種は、出生直後(できれば12時間以内)、生後1か月、生後6か月を目安に実施し、初回から3回の接種完了まで半年程度かかります。
1歳になると定期予防接種の対象外となり有料になるため、1歳になるまでに3回の接種を終わらせましょう。
とくに、肝炎ウイルスに感染している母親から生まれた赤ちゃんは、出生直後または12時間以内の接種が望ましいです。
母親が感染していないことが明らかで、出生直後に接種しない場合も合計3回の接種です。
2回目の接種は1回目から4週間あけてから行い、3回目は20〜24週間あけて行います。
・B型肝炎ワクチン接種の副反応
B型肝炎ワクチン(HBワクチン)は安全性が高いワクチンとして知られていますが、絶対に副反応が起こらないわけではありません。
起こる可能性のある副反応には、注射部分にしこりができる、腫れや痛みが出る、赤みが出るといった症状が挙げられます。
発症確率は低くありますが、アナフィラキシーショックや急性散在性脳脊髄炎を起こす可能性もあります。
・B型肝炎の予防方法
B型肝炎ウイルスは血液や体液に存在し、ウイルスに接触し体内にウイルスが入り込むことで感染します。
よって、性行為はコンドームなどの避妊器具を使用して行う、ワクチンを接種する、カミソリや歯ブラシといった体液や血液の付着リスクがあるものを他人と共有しないといった対策が効果的です。
B型肝炎の感染リスクのある地域
ウイルス自体は世界中で存在しているため、特別注意しなければならない感染リスクのある地域はありません。
地域によって遺伝子の異なる肝炎ウイルスが存在しているため、どの国へ渡航する場合にも感染リスクがあると考え、予防対策を徹底することが大切です。
Q&A
B型肝炎に関するよくある質問
- B型肝炎はどこから感染しますか?
- 主に血液や体液の接触で感染します。 よって、母子感染による事例や、集団予防接種での注射器の使い回しによる感染事例があります。 現在これらは、医療の進歩や行政の対策により報告が少なくなっています。
- B型肝炎は風呂で感染しますか?
- ウイルスが存在する血液や体液に接触し、体にそのウイルスが入ることで感染するため、出血がある状態で一緒に入浴するなどの場合でなければ感染はしません。
- B型肝炎キャリアは職場に伝えるべきですか?
- B型肝炎のキャリアを職場に伝える必要はありません。 また、事業者はウイルス検査をしてはいけないという決まりもあり、万一それを理由に内定を取り消すなどがあれば、違法となります。
この記事の監修者
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著者
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記事担当:笹倉 渉
MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。
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