公開日:2024.03.04更新日:2024.05.02

A型肝炎とは?症状・ワクチンについて


A型肝炎とは、A型肝炎ウイルスによって引き起こされる感染症です。

症状としては急な発熱や消化器症状、肝症状が見られます。

発展途上国など、衛生管理の行き届いていない地域での発症リスクが高いため、渡航前にワクチンを接種することが推奨されています。

本記事では、A型肝炎とはどういった疾患なのか、症状やワクチン接種、予防方法について解説します。

A型肝炎に罹患している家族がいる人やワクチン接種を検討している人は、ぜひ最後までご覧ください。

A型肝炎とは?

A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV=hepatitis A virus)によって生じる急性ウイルス性肝炎です。

全世界での罹患者は年間150万人と推定され、日本では年間100〜300事例が報告されています。

2018年は925例の報告があり、突出して発生が多い年となっています。

A型肝炎の流行は季節により変動があり、日本では冬から春、初夏にかけてが多く、秋は少ない傾向があります。

幼児期は感染しても軽症か、自覚症状がほとんどありません。

一方、肝疾患がある成人や高齢者が感染すると、肝障害が進行したり劇症化したりすることから、場合によっては死に至るケースもあります。

A型肝炎は、B型肝炎やC型肝炎と比較すると慢性化するリスクが低く、症状の改善が早いため予後も良好であることが特徴です。

また、一度感染すると抗体を獲得することから再発はありません。これを終生免疫といいます。

A型肝炎の原因

A型肝炎は、糞便から排泄されたA型肝炎ウイルスが体内に入ることで感染します。

主な感染経路は経口感染と糞口感染です。

経口感染汚染された食物や水などを摂取することにより起こる感染

糞口感染糞便を手指を介して経口摂取することにより起こる感染

これまでに国内で発生した事例の多くは、感染源が特定されていません。

しかし、ウイルスに感染した二枚貝(カキやアサリなど)を生や加熱不足で摂取したことが感染要因であると推定されている事例があります。

また、上下水道の整備が進んでいない国や地域では、水が汚染されている可能性があり、A型肝炎の発症リスクが高まります。

 

A型肝炎の症状

A型肝炎を発症すると次のような症状が現れます。

  • 急な発熱
  • 全身の倦怠感
  • 頭痛
  • 食欲不振
  • 嘔気・嘔吐
  • 褐色尿
  • 白色便・下痢
  • 黄疸(皮膚や眼球結膜の黄染)
  • 肝腫大
  • 腹部の不快感

初期症状は発熱や倦怠感、頭痛、筋肉痛などです。

このとき、インフルエンザを思わせるような強い悪寒を伴う高熱で発症することがあります。

その後食欲不振や嘔吐、白色便などの消化器症状が現れ、さらに数日後には黄疸や肝腫大といった肝症状が見られます。

A型肝炎イルスの潜伏期間は2〜7週間とされ、平均4週間です。

ウイルスが便に排泄されるのは発症の3〜4週間前からで、症状が改善した後も数ヶ月にわたって排泄されます。

そのうち最も感染力が強いのは、発症2週間前から発症1週間後です。

なお、A型肝炎の合併症には次のような疾患があります。

  • 急性肝不全(劇症肝炎)
  • 急性腎障害
  • 胆汁うっ滞性肝炎
  • 無石性胆嚢炎
  • 肝炎再燃
  • 溶血性貧血 など

 

A型肝炎ワクチン接種と予防方法

A型肝炎を予防するには、ワクチン接種が有効です。

また、手洗いを徹底することや衛生状態の悪い地域ではしっかりと加熱処理された飲食物を摂取することも、感染予防には欠かせません。

本項ではA型肝炎ワクチンの種類と料金目安、摂取スケジュール、ワクチンの副反応をご紹介するとともに、A型肝炎の予防方法についても解説していきます。

 

・A型肝炎ワクチンの種類と料金目安

A型肝炎ワクチンは、不活化ワクチンが一般的です。

日本では1994年に承認されたワクチンで、患者由来のA型肝炎ウイルスの粒子をホルマリン処理で不活化させています。

ワクチンには国産と輸入があります。

国産ワクチン

名称:エイムゲン®

摂取量:0.5ml

輸入ワクチン

名称:HAVRIX®,VAQTA®,AVAXIM®,EPAXAL®

(以降、輸入混合ワクチン)Twinrix®,ViaTim®

摂取量:0.5~1.0ml

当院では9,900円で接種可能です。

取り扱いワクチンに関しましては、当院までお問合せください。

 

なお、A型肝炎ワクチンの接種は任意ですが、以下にあてはまる場合には接種が推奨されます。

  • A型肝炎の中〜高頻度流行地域(アジア・アフリカ・中南米など)への渡航者
  • 介護職員や医療従事者などA型肝炎の感染リスクが高いと考えられる人
  • 患者家族などの濃厚接触者
  • 血友病患者など血液製剤の投与を受ける人
  • 慢性肝疾患や糖尿病などの基礎疾患によってA型肝炎が重症化するリスクがある人
  • 男性間性交渉者
  • 注射薬物使用者 など

特に、近年では日本のA型肝炎発症例は少ないものの、発展途上国では蔓延していることもあり、そういった地域に渡航・滞在する前に接種するトラベラーズワクチンが強く推奨されています。

 

・A型肝炎ワクチン接種スケジュール

A型肝炎ワクチンの接種スケジュールは、ワクチンが国産か輸入かによって変わります。

接種間隔や開始目安は次のとおりです。

国産ワクチン

接種回数:3回

接種間隔:1日目・2〜4週間後・24週間後

海外渡航前の接種開始目安1〜2ヶ月前

輸入ワクチン

接種回数:2回

接種間隔:1日目・6〜12ヶ月後

海外渡航前の接種開始目安2週間前

国産ワクチンは2回目の接種が終了したのち、2週間程度で免疫がつきます。

トラベラーズワクチンとして接種する場合は、海外に渡航する1〜2ヶ月前までに医療機関を受診し、接種を開始しましょう。

3回接種すると、その後およそ5年間は効果が持続します。

輸入ワクチンであれば1回目の接種で免疫がつくので、海外に渡航する2週間前に接種しておくとよいでしょう。

1回の接種でほぼ100%の抗体を獲得でき、1年以上の効果が見込めます。

さらに2回目の接種をすると、15〜20年以上の効果が期待できます。

 

・A型肝炎ワクチン接種の副反応

A型肝炎ワクチンは全般的に安全であり、特別な副反応はありません。

副反応が生じるとしても、他の感染症ワクチンと同様の症状が一般的です。

国立感染症研究所によると、10歳以上の健康人を対象とした臨床試験で、延べ接種例数2,710例中162例において副反応が認められています。

主な副反応と発症の割合は以下のとおりです。

全身倦怠感:2.8%

接種部位の疼痛:1.6%

接種部位の発赤:1.0%

発熱:0.6%

頭痛:0.5%

いずれも数日で消失する症状で、重篤な事例は報告されていません。

 

・A型肝炎の予防方法

ワクチン接種以外でできるA型肝炎の予防方法は、次の2つです。

  • 手洗いを徹底する
  • 飲食物を十分に加熱する

A型肝炎は症状が発症する前、また症状が消失した後もウイルスが糞便中に排泄されます。

周囲への感染を予防するためにはトイレ後や調理前、食事前などに手洗いを徹底することが大切です。

また、A型肝炎ウイルスは酸に強く、不活性化させるには85℃で1分以上の加熱が必要です。

アルコールの耐性も持っているため、アルコール消毒は効果がありません。

衛生状態の悪い地域では生野菜や生肉など、加熱処理を行っていない食物を摂取するのを控えましょう。

生水も汚染されている可能性があるため、ミネラルウォーターや沸騰させた水しか飲まないことで感染予防に繋がります。

 

A型肝炎の感染リスクのある地域

ヨーロッパや北米などを除くほとんどの地域で感染リスクがあります。

Q&A

A型肝炎に関するよくある質問

A型肝炎と他の肝炎の違いは?
肝炎ウイルスはA型・B型・C型・D型・E型の5種類あります。 主な違いとして感染経路が挙げられ、A型・E型が飲食物を介して感染するのに対し、B型・C型・D型は血液や体液を介して感染します。 このうち、B型・C型肝炎ウイルスの感染者は300万人以上いるとされており、国内最大の感染病ともいわれます。
A型肝炎ワクチンを接種できる医療機関はどこ?
A型肝炎ワクチンを接種できる医療機関を調べるには、厚生労働省検疫所のホームページにある「予防接種実施機関検索」が便利です。 施設名を直接入力する、あるいは住所から検索することも可能です。 A型肝炎のほか、B型肝炎や破傷風などさまざまなワクチン接種の実施有無を確認できますので、ぜひ利用してみてください。
A型肝炎の死亡率は?
A型肝炎の死亡率は0.3%程度とされています。 比較的軽症で経過する場合が多く、予後は良好な感染症です。 しかし、50歳以上では肝疾患が進行したり劇症化したりする場合があります。 合併症発症の頻度も高いため、死亡率は1.8〜5.4%に上昇します。

この記事の監修者

著者

記事担当:笹倉 渉

MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。

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