公開日:2024.03.14更新日:2024.05.02

ジフテリアとは?症状・ワクチンについて


人間の体には、目には見えずとも多種多様な菌が存在します。

それらのほとんどは、普段の生活に支障を与えることがない無害なものです。

しかし、なにかしらのきっかけによって、無害な菌がときに命すらむしばむ恐ろしい病気を発症させてしまうことがあります。

今回はジフテリアについてご紹介をさせていただきます。

ジフテリアという病気はどのようなもので原因はなにか、ワクチンや予防方法についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

ジフテリアとは?

ジフテリアとは、ジフテリア菌と呼ばれる細菌による感染症のことです。

ジフテリア菌は普段は喉をはじめ、常に体内に存在する常在菌ですが、まれに「毒素を出すジフテリア菌」が紛れ込み、この菌が吐き出す毒素によって体にさまざまな症状を引き起こしてしまいます。

1999年に確認された人を最後に、国内でジフテリア患者はいないと言われています。

国内では見ることがほとんどなくなりましたが、かつては年間8万人もの人が患い、そのうちのおよそ10%が亡くなりました。

このことから、大変危険な感染症であると言えるでしょう。

ジフテリアの原因

ジフテリアにかかる原因は、毒素を出すジフテリア菌によるものです。

くしゃみなどによる飛沫感染や濃厚な触れ合いによる感染が主な感染経路となっています。

大変まれではありますが、ジフテリアの患者の唾液などが付着したものを触ることで感染することもあるようです。

鼻や喉、皮膚の粘膜に菌が取りつき、潜伏期間は早ければ5日間に、遅くとも10日間ほどで、発熱や炎症などさまざまな症状を引き起こします。

ジフテリアの症状

主な症状としては発熱や体の怠さ、頭痛、喉の痛みなどがあります。

高熱になることは少ないです。菌が繁殖している箇所によっては鼻血や上唇の腫れ、喉に白い膜が作られていることが確認できることもあります。

悪化した場合、膜が気道を塞いで呼吸困難を引き起こす恐れがあり、大変危険です。

声が枯れたり、犬やオットセイの鳴き声に似た咳(犬吠様咳嗽)が出たりすることもあります。

また、恐ろしい合併症を引き起こすことがあり、心筋に炎症や障害が出たり、脳や抹消神経に麻痺などの障害が起こったりすることもあります。

この感染症の平均死亡率はおよそ10%ほどです。

特に5歳以下の子どもや40歳以上の大人がかかると症状が重くなる傾向があり、診断や治療を受けずにいると症状が急激に悪化し、最悪死に至る恐れがあります。

検査は複雑で、まず菌が繁殖している粘膜を採り、特別な培養方法で菌を増やしたり分離させたりします。

そこからさらに、専門施設において検査を行い、病気の確定となります。

このような工程が必要であるため、診断の確定には時間を要します。

そのため、ワクチンを受けておらず、症状が出ているといった場合は、医師の判断ですぐに治療を行うことがあります。

 

治療方法は、菌の毒素に対抗する抗毒素や菌の繁殖を抑える抗菌薬を点滴などで投与することが一般的です。

急激な病状の悪化が懸念されるため、特に抗毒素は医師の判断のもと、検査の確定が出る前に投与されることがあります。

また早期受診による治療がよいとされ、ジフテリアの流行している国や地域などへ赴いた際に熱が出た場合、すぐに医療機関を受診しましょう。

ジフテリアの症状が出ていない場合でも、ジフテリアと診断された人と長く過ごした場合などは、濃厚接触者として保健所から調査が行われます。

10日間ほどの経過観察の後、鼻や喉の粘膜を採取して菌の様子を確認し、処方された抗菌薬を服用することが必要です。

またワクチンを受けられていないといった場合は、ワクチンの接種も行われます。

ジフテリアワクチン接種と予防方法

ジフテリアに有効なワクチンと予防方法について、ご紹介いたします。

ワクチン接種の際の参考にしてみてください。

・ジフテリアワクチンの種類と料金目安

日本ではワクチンとして、以下のものを採用しています。

  • 四種混合(DPT-IPV)ワクチン
  • 二種混合(DT)ワクチン
  • 三種混合(DPT)ワクチン

四種混合(DPT-IPV)ワクチンは、ジフテリアの他に破傷風・ポリオ・百日咳も予防できます。

追加で二種混合や三種混合のワクチンを接種することで、100%の抗体を手に入れることが可能です。

効果は10年ほどと言われており、免疫効果を維持するためには追加の接種が推奨されています。

費用に関しては、定期接種の場合は無料で受けることができますが、任意接種の場合は自己負担での費用が発生します。

当院の場合、1回につき14,300円で接種可能です。

二種混合(DT)ワクチンは破傷風とジフテリアを予防することが主な目的です。

最初に四種混合(DPT-IPV)ワクチンまたは三種混合(DPT)ワクチンを受けた人が、2回目の予防接種としてこのワクチンを受けます。

費用は定期接種である場合は無料です。任意で受ける場合は、施設によりますがおよそ4,000円〜5,000円の費用負担が発生します。

三種混合(DPT)ワクチンは、百日咳とジフテリア、破傷風の予防が主な目的となっているワクチンです。

現在は四種混合(DPT-IPV)ワクチンが定期接種として認められており、三種混合(DPT)ワクチンは基本的に任意での接種となります。

また百日咳に対する予防効果は、早ければ4年ほどで弱まってしまうため、再度ワクチンを接種することがおすすめです。

当院の場合、1回につき4,950円で接種可能です。

・ジフテリアワクチン接種スケジュール

定期接種として、四種混合ワクチンと二種混合ワクチンを合計5回接種することが推奨されています。

初回の接種は生後2か月から受けることが可能で、12か月になるまでの間に20〜56日ほどの間隔をおいて3回受けましょう。

4回目は3回目を受けてから6か月以上の間隔をあけた上で行い、最後にワクチンの効き目が弱まり始める11歳ごろに追加接種として5回目を受けるようにしてください。

三種混合ワクチンの場合は、初回の接種を別種の定期接種である麻疹風疹ワクチンの2回目と共に、5歳~6歳で受けることがおすすめです。

3回目までは四種混合ワクチンを受けて、11歳で二種混合ワクチンではなくこちらのワクチンを受けるということもできます。

またどの年代の人でも受けることができ、11歳の頃に未接種である人や受けたかどうかが分からないという人でもこちらを接種することが可能です。

・ジフテリアワクチン接種の副反応

上述したそれぞれのワクチンを接種したことによる特異的な副反応は、一般的な副反応以外の報告が上がっていません

・ジフテリアの予防方法

ワクチンを受けることが予防には有効です。

ワクチンの接種でジフテリアにかかるリスクをおよそ95%減らすことができると言われています。

ただし、ワクチンの接種は適切なスケジュール管理が必要となります。特に未接種である場合はかかりつけの医師などに相談し、早めに接種をするようにしましょう。

ジフテリアの感染リスクのある地域

Q&A

ジフテリアに関するよくある質問

ジフテリアにかかる原因は?
毒素を出すジフテリア菌が喉などの粘膜に取りつき、繁殖することでジフテリアを発症します。 発熱などのさまざまな症状をもたらし、死に至る恐れがある危険な感染症です。
国内にジフテリアの患者はいないの?
有効なワクチンを接種する環境が整ったおかげで、現在ジフテリアと診断された人はいないと言われています。 しかし、国外では流行しているところもあり、流行が懸念される地域へ赴く際は注意が必要です。
ジフテリアの予防方法が知りたい。
現在はワクチンを接種することが有効な予防方法となります。 ワクチンは生後2か月から11歳の間で、定期的に接種するようにしましょう。

この記事の監修者

著者

記事担当:笹倉 渉

MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。

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