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公開日:2025.05.29更新日:2025.05.29
黄熱病はアフリカや中南米の一部地域で流行する感染症で、重症化すると命に関わる危険があります。特効薬はなく、唯一の予防手段がワクチン接種です。
多くの国では入国時に「イエローカード(予防接種証明書)」の提示が必要とされており、渡航前の準備が欠かせません。
本記事では黄熱病のリスクとワクチン接種のポイントを分かりやすく解説します。
黄熱病は、黄熱ウイルスを持った蚊(主にネッタイシマカ)に刺されることで発症する感染症です。人から人へ直接うつる心配はありません。
蚊に刺されてから3~6日ほどで、発熱・頭痛・筋肉痛・吐き気などインフルエンザに似た症状が現れます。
多くの人は数日で回復しますが、いったん熱が下がった後に再び高熱となり、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる症状)や腹痛、黒色の吐しゃ物、全身の出血などが起こる「中毒期」に入る場合があります。
この段階になると致死率は30~60%と非常に高く、命に関わります。
残念ながら特効薬はなく、治療は症状を和らげる対症療法のみです。したがって、発症を未然に防ぐことが何よりも重要になります。
黄熱病には、高い予防効果を持つワクチンがあります。流行地域に渡航する前に1回接種すれば、多くの場合生涯にわたって免疫が得られます。
流行国へ行く予定がある人は、出発10日以上前にワクチン接種を済ませ、イエローカード(接種証明書)を必ず携帯しましょう。
参考
「アフリカの赤道付近」と「中南米の熱帯ジャングル」は、黄熱病に注意が必要です。WHOは2023年時点でアフリカ34カ国、中南米13カ国を「黄熱リスク国」と指定しています。
地域 | おおまかな範囲 | 代表的な国・エリア |
アフリカ | サハラ砂漠より南、赤道を挟んだ熱帯地帯 | セネガル・コートジボワール・ガーナ・ナイジェリア・カメルーン・コンゴ民主共和国 ほか |
中南米 | パナマからアルゼンチン北部までの熱帯地域 | ブラジル(アマゾン流域)・ペルー・ボリビア・コロンビア ほか |
アジアや日本には黄熱の土着患者はいません。ただし媒介蚊(ネッタイシマカ)が一部に生息しているため、ウイルスが持ち込まれれば流行が起こる可能性はゼロではありません。
また、流行国からの帰国者が発症した場合、周囲の人は蚊に刺されないよう注意が必要です。
渡航予定がある人は出発10日以上前に黄熱ワクチン接種(イエローカード取得)を済ませましょう。未接種だと入国できない国もあります。
参考
黄熱病の流行地域(アフリカ・中南米など)に行く場合、多くの国では「黄熱ワクチンの接種」と、その証明となる「イエローカード(黄熱予防接種証明書)」の提示が求められます。
これは国際的に認められた公式の証明書で、接種日やワクチン情報などが記載されています。
このイエローカードがないと入国を拒否される国もあるため、周遊や乗り継ぎでも注意が必要です。
接種後、証明書は10日目から有効になるので、遅くとも出発の10日前までには接種を済ませておきましょう。
以前は証明書の有効期間が「10年」でしたが、2016年7月以降は生涯有効となっています。
古いイエローカードに有効期限が書かれていても、更新は不要です。ただし、紛失すると再発行が難しいため、大切に保管しておくことが大切です。
なお、健康上の理由でワクチンを受けられない人は、医師による「接種免除証明書」を用意することで入国が認められる場合もあります。
ただしその場合は黄熱病に対する免疫が得られないため、渡航の是非は慎重に判断しましょう。
黄熱病ワクチンは「生ワクチン」と呼ばれるタイプで、弱めた黄熱ウイルス(17D株)を使って体に免疫をつける仕組みです。
このワクチンは接種から10日で約9割の人に免疫ができ、14日後にはほぼ全員が予防できるといわれています。
基本的には一度の接種で一生効果が続くため、追加接種は原則不要です。
ただし、妊娠中に接種した人や免疫力が低下している人など、一部のケースでは追加接種が必要とされることもあります。
また、ごくまれに重い副反応(神経や内臓の障害)が起こることがありますが、発生率は非常に低く、安全性の高いワクチンとされています。
黄熱ワクチンは、どこでも受けられるわけではなく、指定された医療機関(空港内の検疫所や一部のトラベルクリニックなど)でのみ接種が可能です。
接種には予約が必要なため、渡航日が決まったら早めに予約をしておきましょう。
また、黄熱ワクチンはほかのワクチンとの接種スケジュールに注意が必要です。
麻しん・風しんなどの生ワクチンを接種する場合、間隔を4週間以上空ける必要があります。
一方で、インフルエンザやA型肝炎などの不活化ワクチンは、間隔を気にせず接種できます。
渡航までに必要なワクチン接種を確実に行うためには、トラベルクリニックでスケジュールを相談することをおすすめします。
黄熱病ワクチンは生ワクチンと呼ばれる、体に生きたウイルスを取り込んで免疫をつけるタイプのワクチンです。
そのため、体調や体質によっては接種できない人や注意が必要な人がいます。
黄熱病ワクチンを接種できない人
該当する人 | 内容と理由 |
生後9カ月未満の乳児 | 副反応のリスクが高い |
免疫力が低下している人(白血病、移植後、HIV、免疫抑制治療中など) | 生ワクチンのため、感染症の危険性がある |
発熱中・重い病気のある人 | 体調が悪いと副反応が強く出るおそれがある |
ワクチン成分に重度のアレルギーがある人(例:鶏卵) | アナフィラキシーの危険がある |
胸腺の病気がある人(重症筋無力症、胸腺腫の既往など) | 重篤な副反応が報告されている |
黄熱病ワクチンを接種するか慎重に判断すべき人
該当する人 | 内容と理由 |
心臓・腎臓・肝臓・血液の病気がある人 | 持病があると副反応のリスクが高くなる場合がある |
過去の予防接種で重い副反応があった人 | 再び強い副反応が出る可能性がある |
けいれんの既往がある人(乳児期の熱性けいれん含む) | ワクチン接種後の神経系の副反応リスクに注意が必要 |
免疫不全が疑われる人(近親者に該当者がいる場合含む) | 生ワクチンによる感染リスクがある |
妊娠中、または妊娠の可能性がある人 | 胎児への影響がはっきりしておらず、原則接種不可 |
65歳以上で初めて接種する人 | まれだが重い副反応の報告があり、慎重な判断が必要 |
妊娠中や持病がある人、高齢の方で黄熱病流行地への渡航が必要な人は、早めに医師へ相談し、接種の可否やリスクを十分に確認することが重要です。
必要に応じて「接種免除証明書」の発行や、渡航自体の再検討も考えましょう。
黄熱病のワクチン接種に加えて、現地での健康リスクを避けるためには、ほかのワクチン接種や感染症対策も大切です。
以下に、渡航者に推奨されるワクチンを紹介します。
発展途上国では水道や衛生管理が不十分な場所もあり、ウイルスに汚染された水や食べ物からA型肝炎に感染することがあります。
アジア、アフリカ、中南米などの地域へ渡航する場合は、A型肝炎ワクチンの接種が強く勧められます。
ケガをきっかけに感染する破傷風は、土壌に存在する菌が原因で、致死率も高い病気です。
日本では子どもの頃に予防接種を受けている方が多いですが、最後の接種から10年以上経っている場合は、追加接種を検討してください。
農作業やボランティア活動に従事する方は特に注意が必要です。
アフリカや中南米では犬、コウモリなどの野生動物との接触による感染リスクが高く、発症すればほぼ100%死亡する重篤な病気です。
野良犬の多い地域に滞在する方や動物との接触が予想される方には、事前の予防接種が推奨されます。
渡航先での感染症リスクに備えるため、黄熱病以外にも複数のワクチン接種が推奨されるケースがあります。
旅行内容や滞在先に応じて接種が必要なワクチンを検討しましょう。
ワクチン名 | 説明 |
B型肝炎ワクチン | 現地で医療行為を受ける可能性がある場合、または血液・体液に触れるリスクがある場合に推奨されます。 |
腸チフスワクチン | 衛生環境が不十分な地域(例:発展途上国の地方部など)で長期滞在・冒険旅行を予定している場合に推奨されます。 |
日本脳炎ワクチン | アジア地域(特に農村部や湿地帯)へ渡航し、屋外活動や長期滞在を予定している場合に推奨されます。 |
麻しん・風しん(MR)ワクチン | 過去の接種歴が不明または不十分な方。特に流行地への渡航前には、抗体検査と必要に応じた追加接種が望まれます。 |
黄熱病が流行する地域はマラリアの感染リスクも高い傾向があります。
マラリアに対するワクチンはありませんが、予防薬の服用や蚊に刺されないための対策(防虫スプレー、長袖着用、蚊帳の利用など)を徹底することでリスクを大きく減らせます。
参考
この記事で説明した感染症とワクチンについて正しく理解し、渡航前に主治医と相談して、必要な予防策を講じることが重要です。
まずは「ワクチンナビ」で最寄りのトラベルクリニックを検索し、渡航スケジュールに合わせた接種計画を立てておくと安心です。
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