公開日:2025.05.28更新日:2025.05.28

オーストラリアの医療費は高い?滞在前に知っておきたい医療制度


オーストラリアへの留学やワーキングホリデー、長期滞在を予定している方にとって、現地の医療制度や医療費の仕組みを理解しておくことは重要です。

オーストラリアは医療水準が高く、安心して治療を受けられる反面、外国人にとっては医療費が非常に高額になるケースもあります。

この記事では、オーストラリアの公的医療保険「Medicare」の概要から、留学生や滞在者が加入すべき保険、診察費用の目安、緊急時の対応方法までを分かりやすく解説します。

オーストラリアの医療制度「Medicare」とは

オーストラリアでは、「Medicare(メディケア)」と呼ばれる公的医療保険制度により、国民や永住者、特定の国からの滞在者は、公立病院での診察や入院を無料または低額で受けられます。

処方薬についても、公的補助があるため費用を抑えることができます。

ただし、日本はこの制度の対象国ではないため、日本人の旅行者や留学生にはMedicareの適用はありません。したがって、現地での医療費は原則として全額自己負担になります。

また、オーストラリアの医療制度では「かかりつけ医(GP)」を通じた診療が基本です。

専門医を受診したい場合でも、まずGPに相談し、必要と判断された場合に紹介状が発行される仕組みです。

このように、GPを起点とする「プライマリケア体制」が整備されている点は、日本との大きな違いといえるでしょう。

医療費の相場と医療水準

オーストラリアは医療技術や設備の面で世界的にも高い評価を受けており、医療水準は非常に優れています。

しかし、医療費は日本に比べて高額であるため、渡航前に料金水準を把握しておくことが重要です。

以下は、オーストラリアと日本における主な医療費や医療指標の比較です。

 

項目 オーストラリア(参考:2016年8月時点) 日本(参考)
救急車の料金 ① 公営:112,500円+走行加算170円/km

② 民営:通常利用しない

無料(全国共通)
初診料 約16,200円 約2,820円
病院部屋代(1日あたり) ① 個室:122,100円~124,300円

② ICU:463,700円

① 個室:30,000円~100,000円

② ICU:80,000円~100,000円

虫垂炎手術の治療費 ① 総費用:約1,039,400円

② 平均入院日数:3日

① 約600,000円

② 平均入院日数:4日

骨折治療費(橈骨末端閉鎖性骨折) 約58,200円 約20,000円
ファミリードクター制度 あり

*緊急時を除き、(歯科等一部を除き)全科診察可能な医師の診察を受け、その後必要に応じ専門医へ紹介

なし

*初診から専門医の受診が可能(ただし、総合病院等で紹介状が必要な場合あり)

乳児死亡率(1,000人当たり) 3人 2人
平均寿命 83歳 84歳

 

引用:オーストラリア(ゴールドコースト) 医療事情

オーストラリアでは、入院や手術が必要な場合の医療費が非常に高額になることがあります。

例えば、救急外来1回の受診だけでも数万円、入院すれば1日あたり数十万円の費用がかかることも珍しくありません。

「医療の質は高いが、費用も高い」という現地の実情をしっかり認識しておきましょう。

そのため、万一に備えた医療保険への加入も必要となります。

留学生・長期滞在者向けの保険制度「OSHC」

オーストラリアに長期滞在する場合、民間医療保険への加入は必須といっても過言ではありません。

特に学生ビザで渡航する留学生には、OSHC(Overseas Student Health Cover)、すなわち海外留学生健康保険への加入が義務付けられています。

OSHCは、「留学生向けのMedicare」に相当する保険制度です。留学生が現地で医療を受ける際に、オーストラリア国民と同等の保障を受けられるように設計されています。

Allianz CareやBupaなど、政府認可の民間保険会社が提供しており、加入手続きは大学や語学学校経由、または個人で行うことができます。

OSHCに加入していれば、GP(一般医)の診察や公立病院での治療費はプランに応じて補償され、キャッシュレスで受診できることもあります。

また、緊急時の救急車費用も補償対象に含まれるのが一般的です。

ただし注意が必要なのは、OSHCでは歯科・眼科・医薬品代が補償対象外となる場合があることです。

また、妊娠・出産に関する費用には12カ月の待機期間が設けられており、加入直後に妊娠が判明した場合は補償を受けられない可能性があります。

留学生以外の滞在者が加入すべき保険

ワーキングホリデーや就労ビザといった学生以外の長期滞在者も、渡航前に適切な医療保険への加入が強く推奨されます。

日本はMedicareの対象国ではないため、日本の海外旅行保険や現地の訪問者向け医療保険に加入して備える必要があります。

なお、企業派遣の駐在員であれば、企業が用意するグローバル医療保険に加入するのが一般的です。

保険に加入する際は、補償内容をしっかり確認しましょう。以下のような項目が保険に含まれているかが重要です。

  • 医科診療
  • 処方薬費用
  • 救急搬送費用
  • リハビリ治療
  • 本国送還費用

また、保険証券(加入証明書)は必ず携帯してください。

現地の医療機関で提示を求められることがあり、提示しない場合は全額自己負担となり、後の保険請求も煩雑になります。

短期の旅行者であっても、海外旅行保険への加入は不可欠です。

オーストラリア大使館も、「救急医療をすべてカバーできる保険に加入しておく必要がある」と警告を発しています。

参考:世界の医療事情 オーストラリア

医療費が高額な国では、保険は命綱です。安心して渡航生活を送るためにも、自分のビザや滞在目的に合った適切な保険に、必ず加入しておきましょう。

オーストラリアでの緊急時の対応方法

オーストラリアで急な病気やケガが発生した場合は、日本と同様に救急サービスに連絡します。緊急通報番号は「000(トリプルゼロ)」で、警察・消防・救急のすべてに対応しています。

携帯電話からは国際標準の「112」も使用可能です。英語で状況を伝える必要がありますが、落ち着いて話せば対応してもらえるので、ためらわずに通報しましょう。

ただし、救急車の利用は有料で、公営の場合でも「約11万円以上+走行距離に応じた加算」がかかります。OSHC(海外留学生健康保険)や旅行保険に加入していれば、この費用が補償されるケースもありますが、未加入の場合は全額自己負担となります。

オーストラリアの病院には、公立病院と私立病院があります。緊急時には通常、公立病院の救急外来を利用します。

救急外来ではまず看護師による「トリアージ」(緊急度の評価)が行われ、症状の重さに応じて診療の順番が決まります。

命に関わるような重症患者はすぐに対応されますが、軽症と判断された場合は数時間以上待たされることもあります。

オーストラリアでの出産費用

オーストラリアでは、永住者であれば公立病院での出産費用はMedicareにより全額無料となります。

しかし、留学生やワーキングホリデーなど、Medicareが適用されない外国人にとっては出産費用が非常に高額です。

分娩方法や入院日数によって異なりますが、公立病院での出産でも自己負担は1万豪ドル(約80~90万円)前後になることがあります。

参考:保険と出産について

OSHC(海外留学生健康保険)や一部の旅行保険では出産費用がカバーされる場合もありますが、多くの場合は1年以上の保険加入が条件となります。

妊娠の可能性がある人は、補償内容と待機期間を事前に確認し、早めに適切な保険に加入しておくことが重要です。

渡航前に受けておきたい予防接種

オーストラリアへの渡航にあたって、日本からの入国者に対して義務付けられた予防接種は基本的にありません。

黄熱病についても、直前に黄熱病流行国に滞在していなければ、ワクチン接種証明書の提示は求められません。

参考:世界の医療事情 オーストラリア

ただし、「義務がない=予防接種が不要」ということではありません。

現地での健康リスクを最小限に抑えるためにも、出発前に必要なワクチンを計画的に接種しておくことが重要です。

以下のワクチンは、日本国内で定期接種が推奨されています。

年齢相当のワクチン接種が済んでいるか、渡航前に必ず確認しましょう。

  • 麻しん・風しん(MRワクチン)
  • ジフテリア・破傷風
  • ポリオ
  • B型肝炎
  • 日本脳炎

特に麻しん(はしか)は世界的に流行が報告されており、オーストラリア国内でも感染事例があります。

免疫が不十分な方は、出発前にMRワクチンの接種を強くおすすめします。

また、以下のワクチンは、滞在地域や活動内容によっては必要となる場合があります。

  • A型肝炎:農場や牧場で働く場合、あるいは地方部への渡航時
  • 狂犬病:野生動物やコウモリに接触する可能性がある環境
  • 腸チフス:衛生環境に不安のある地域に長期滞在する場合
  • 日本脳炎:オーストラリア北部に長期滞在し、アウトドア活動を行う場合

必要なワクチンは人によって異なります。専門の医師による個別のアドバイスを受けるためにも、トラベルクリニックでの事前相談が有効です。

まずは「ワクチンナビ」で最寄りのトラベルクリニックを検索し、渡航スケジュールに合わせた接種計画を立てておくと安心です。

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記事担当:ワクチンナビ編集部

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