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公開日:2025.10.28更新日:2025.10.28

ハワイ旅行中に体調を崩したり、けがをした場合、日本とは異なる医療制度のため高額な治療費が発生することがあります。ハワイを含むアメリカでは、公的医療保険がなく、医療費は原則「自己負担または民間保険による支払い」となっています。救急搬送や入院となると数十万円~百万円を超えるケースも珍しくありません。
安心して滞在を楽しむためには、出発前の「保険加入」と「予防接種の準備」が欠かせません。この記事では、ハワイの医療制度と医療費の実態、そして旅行者が取るべき備えについて解説します。

ハワイはアメリカ合衆国の州の一つであり、医療制度も全米共通の「民間保険中心型のシステム」が採用されています。日本のような全国民向けの公的医療保険制度(国民皆保険)はなく、保険に加入していない人は医療費を全額自己負担する仕組みです。
そのため、ハワイの医療費は世界でも高い水準にあります。米国の医療比較サイト Sidecar Health によると、ハワイ州の医師初診料(無保険者価格)は平均約174ドル(約2万6,000円)。外科センターなどでの受診も平均132ドル(約2万円)とされており、いずれもアメリカ本土とほぼ同水準です。
また、Hawaii Pacific Health など州内の大手医療グループでは、治療前に費用の見積もりを提示する「Good Faith Estimate(善意見積もり制度)」を導入しています。これは2022年に全米で義務化された制度で、患者が予期せぬ高額請求を避けられるようにするための仕組みです。
ただし、実際の請求額が見積もりを上回ることもあるため、観光客や短期滞在者は渡航前に十分な補償内容のある海外旅行保険に加入しておくことが推奨されています。
アメリカでは、医療費請求の透明性を高めるため、2022年に「No Surprises Act(予期せぬ高額請求防止法)」が施行されました。
この法律に基づき、ハワイを含む全米の医療機関では、保険に未加入の患者や自費診療を希望する患者に対して、治療前におおよその費用を提示する「Good Faith Estimate(善意見積もり)」を行う義務があります。
Hawaii Pacific Healthなど主要な病院でも、公式にこの制度を導入しており、非緊急の診療・検査・処置などを受ける前に、予想される医療費の見積書を受け取ることができます。
この見積もりは、検査・薬・機器使用料などを含む「予想される総費用」を示すもので、患者があらかじめ経済的な負担を把握できるようにするものです。ただし、救急治療や追加検査など緊急性の高いケースでは、実際の請求額が見積もりを超える場合もあります。
米国政府(Centers for Medicare & Medicaid Services:CMS)の規定では、もし請求額が見積もりより400ドル以上高い場合、患者は正式に異議申し立てを行うことが認められています。
参考
Centers for Medicare & Medicaid Services(CMS) – Understanding Costs in Advance
Hawaii Pacific Health – Good Faith Estimate Information
ハワイ州には、他州にはない独自の制度として Prepaid Health Care Act(PHC法) が存在します。この法律は、週20時間以上働く従業員に対し、雇用主が健康保険を提供する義務を課すものです。この制度により、ハワイ在住の多くの労働者が、雇用契約を通じて健康保険を得ています。
一方、旅行者や短期滞在者はこの制度の対象外となるため、州の制度ではカバーされません。そのため、観光・短期留学・出張などでハワイを訪れる人々は、民間の海外旅行保険や訪問者医療保険に加入しておくことが強く推奨されます。

ハワイ州内の病院は、標準料金(Hospital Standard Charges/チャージマスター) を公開しています。例えば、The Queen’s Health Systems はウェブ上で標準料金を閲覧可能です。
ただし、これらは「病院が設けた請求ベースの料金」であり、実際に患者が支払う額(保険適用後額や自己負担額)とは異なると明記されています。
また、ハワイの病院は連邦政府(CMS)の規定により、標準料金をオンラインで機械判読可能な形式で公開する義務を負っています。これにより、患者は病院ごとの「請求ベースの料金表」を確認できますが、それが最終支払額ではない可能性がある点には注意が必要です。
ハワイでは、公的医療保険(Medicare/Medicaid)を利用できるのは、原則として米国市民や永住権保持者などに限られます。そのため、観光や短期滞在、留学目的で訪れる日本人旅行者は、医療費を全額自己負担するケースが一般的です。
特に注意すべきポイントは以下のとおりです。
| リスク項目 | 内容 |
| 救急搬送 | 有料で、搬送距離や医療処置の内容に応じて料金が決まります。ハワイ州の規定では、地上搬送の基準額が約400~450ドル前後、航空搬送は2,000ドルを超える場合があります(Haw. Code R. § 11-72-31)。 |
| 高額医療費の可能性 | 医療保険に未加入の旅行者は、入院・検査・治療費のすべてを自己負担する必要があります。重症治療や手術となると、数千ドル~数万ドル規模の請求になる例もあります。 |
| 医療搬送(本土・日本への帰国) | 医療航空搬送は、距離・機材・医療スタッフの帯同などにより非常に高額で、数百万円規模になることもあります。 |
こうしたリスクを踏まえ、ハワイ州観光局や在ホノルル日本国総領事館も旅行保険への加入を強く推奨しています。特に救急搬送・入院・帰国搬送まで補償できる保険を選ぶことで、現地での予期せぬ高額請求を防ぐことができます。
ハワイでは、アメリカの医療制度に基づき、保険未加入のまま受診すると高額な医療費が請求されるのが一般的です。観光や短期滞在で訪れる人は、渡航前に必ず海外旅行保険へ加入しておきましょう。
| チェック項目 | 詳細 |
| キャッシュレス診療に対応しているか | 保険会社が医療機関へ直接支払いを行う仕組み。自己負担を避けられるため、緊急時も安心です。主要な海外旅行保険ではこの形式を採用しています。 |
| 入院・手術・搬送費の補償上限 | アメリカの入院費は高額で、ハワイ州の病院では1日あたり数千ドルに達する場合があります。医療航空搬送の費用は数百万円程度になることがあるため、十分な補償上限を設定しましょう。 |
| 補償金額の目安 | 外務省および在ホノルル日本国総領事館は、ハワイなど海外渡航時に十分な補償内容を備えた海外旅行保険への加入を推奨しています。
ハワイでは医療費が非常に高額になることから、保険会社や旅行業界では「治療・救援費用1,000万円以上」を目安にすることが望ましいとされています。
特に、入院・手術・救急搬送・帰国搬送などの費用をカバーできる保険を選ぶと安心です。 |
| 除外項目の確認 | ワクチン接種、歯科、慢性疾患、定期健診、眼鏡、救急車利用などは補償外となる場合が多いため、契約前に詳細を必ず確認してください。 |
ハワイの医療水準は高い一方で、費用は日本よりもはるかに高額です。旅行者は公的保険の対象外であるため、万が一に備えた「海外旅行保険」と感染症予防の準備が不可欠です。
特に、渡航先での体調不良やけが、感染症リスクに備えて、予防接種(A型肝炎・破傷風・インフルエンザなど)を早めに検討しておきましょう。
ワクチンナビでは、渡航目的や地域に応じて最寄りのトラベルクリニックを検索できます。出発前に、保険・医療・ワクチンの3点をしっかり確認して、安心してハワイ滞在を楽しみましょう。
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