公開日:2025.10.28更新日:2025.10.28

「バリ腹」とは?原因・症状・予防・対処法を徹底解説


海外旅行先として人気の高いバリ島。しかし、現地では「バリ腹」と呼ばれる突然の下痢や腹痛に悩まされる旅行者が少なくありません。バリ腹は、日本とは異なる水質や衛生環境、気候の影響で発症し、医学的には「旅行者下痢」に分類されます。ほとんどの場合は軽症ですが、脱水や高熱を伴う重症化のリスクもあるため、正しい知識と備えが大切です。

この記事では、バリ腹の原因・症状・予防法・現地での対処法を解説します。

バリ腹とは?

海外旅行の人気スポットであるバリ島では、現地の食事や水が原因で体調を崩す旅行者が少なくありません。

その代表的な症状が「バリ腹」と呼ばれるもので、突然の下痢や腹痛に悩まされるケースが多く見られます。医学的には「旅行者下痢」に分類され、衛生環境や水質の違い、免疫の差などが発症に関係しています。

ここでは、バリ腹の定義や原因、発症の仕組みを解説します。

バリ腹の定義と名称の由来

「バリ腹」とは、バリ島の旅行中に発症しやすい旅行者下痢の俗称です。主に現地の水や食べ物に含まれる細菌やウイルスが原因で、突然の下痢や腹痛、吐き気、発熱などを引き起こします。

旅行者下痢は、バリ島に限らず、東南アジアや南米、アフリカなど、衛生環境が日本と異なる地域でよく見られる症状です。バリ島では旅行者の発症例が多く報告されていることから、「バリ腹」という呼び名が広まりました。

主な原因菌・ウイルス

バリ腹の原因はさまざまですが、もっとも多いのは細菌性の旅行者下痢です。主な病原体と特徴は以下のとおりです。

原因菌 主な感染源・特徴 症状・潜伏期間
大腸菌 旅行者下痢の代表的な原因菌。腸内で毒素を分泌し、水分の吸収を妨げる。 水のような下痢が特徴。発症まで6~24時間程度。
サルモネラ属菌 加熱が不十分な肉や卵に含まれる。 発熱や腹痛を伴う。潜伏期間は6~72時間。
カンピロバクター菌 鶏肉などが主な感染源。加熱不足で感染しやすい。 潜伏期間がやや長く、2~5日後に発症。下痢や発熱を伴う。
シゲラ属菌(赤痢菌) 汚染された水や食品を介して感染。人から人への感染も起こる。 血便や激しい腹痛を引き起こす。潜伏期間は1~3日。

 

そのほか、ウイルス性(ノロウイルス・ロタウイルス)や寄生虫性(ジアルジア、アメーバ赤痢など)による発症もあります。ウイルス性は感染力が強く、集団感染につながることもあります。寄生虫性の場合は発症までに数日~1週間ほどかかり、下痢が長引く傾向があります。

これらの病原体は、水道水や氷、生野菜、加熱が不十分な料理などを通じて体内に入ることが多いとされています。日本では安全と思われる食事や飲み物でも、現地の水質や衛生基準の違いにより汚染されている可能性があるため、油断は禁物です。

潜伏期間と発症メカニズム

バリ腹の多くは、汚染された水や食べ物を摂取してから6~24時間以内に発症します。腸内に侵入した細菌やウイルスが増殖し、腸管で毒素を出したり粘膜を刺激したりすることで、下痢や腹痛が起こります。

細菌性の場合は、腸内で分泌される毒素により水分の吸収が抑えられ、腸から水分が大量に分泌される「分泌性下痢」が生じます。

ウイルス性は腸粘膜の炎症によって吸収機能が低下し、水様便が続きます。寄生虫性の場合は、腸の中で長期間生息して炎症を起こすため、1週間以上症状が続くこともあります。

また、旅行者は現地の微生物に対する免疫を持たないため、ごく少量の菌でも発症しやすいのが特徴です。地元の人が問題なく食べられる料理でも、短期滞在者が体調を崩すことは珍しくありません。これは、現地の衛生環境や水質への「免疫の差」が原因と考えられています。

このようにバリ腹は、単なる「食あたり」ではなく、免疫の未適応によって起こる感染性の下痢症といえます。

バリ腹の症状、発症期間

バリ腹は、原因となる病原体や体調の違いによって、症状の出方や回復までの期間に差があります。主な症状としては下痢や腹痛、発熱などが多く、軽症であれば数日で自然に回復することもありますが、重症化すると脱水や血便を伴うこともあります。

ここでは、バリ腹の代表的な症状と発症から回復までのおおまかな経過を紹介します。

主な症状

バリ腹では、次のような症状が多く見られます。

  • 水のような下痢(1日3回以上)
  • 腹痛・けいれん
  • 嘔吐・吐き気
  • 発熱(38℃前後)
  • 全身のだるさ・食欲不振

血便や高熱、強い腹痛、脱水症状(尿量の減少・めまい・口の渇きなど)がある場合は、重症化している可能性があります。これらの症状が見られたときは、早めに医療機関を受診してください。

発症期間の目安

バリ腹の症状は、原因となる菌やウイルスの種類、体調や免疫の状態によって異なります。

一般的な経過の目安は次のとおりです。

重症度 継続期間の目安 対応の目安
軽症 1~3日程度 水分を摂取し安静にしていると、自然に回復することが多いです。
中等症 3~5日間 症状が続く場合は脱水に注意し、経口補水液などでこまめに水分を摂取します。症状が悪化する場合は医療機関へ。
重症 5日以上、または血便・高熱を伴う 速やかに医療機関を受診してください。必要に応じて検査や点滴治療が行われます。

 

多くのケースでは3~5日以内に症状が改善しますが、長引く場合や症状が強い場合は、細菌や寄生虫感染の可能性もあるため受診をおすすめします。

また、下痢が続くと体内の水分と電解質が失われるため、脱水症状を防ぐことがもっとも重要です。水やお茶ではなく、経口補水液やスポーツドリンクを少しずつ摂取すると効果的です。

なぜバリ島で発症しやすいのか

バリ島では、水道水が飲料基準に達しておらず、氷や生野菜、果物の洗浄に使われる水が汚染源となることがあります。

また、高温多湿の気候や雨季(11~3月)は食品の腐敗や細菌繁殖が進みやすく、食中毒や旅行者下痢が起こりやすい環境です。衛生管理の行き届いたレストランでも、水や氷の扱いには注意が必要です。

バリ腹の予防策

バリ腹は、適切な衛生対策と事前準備により、ほとんどのケースを防ぐことができます。特に飲食時の注意や日常的な手洗い、渡航前の備えが重要です。

ここでは、旅行中に意識したい具体的な予防ポイントを紹介します。

食事・飲料

バリ島では、水や食材を介して細菌やウイルスに感染することがあります。次の点を意識すると、バリ腹の発症を防ぎやすくなります。

注意点 補足
水道水を飲まない 歯磨き、うがいにもミネラルウォーターを使用します。
氷入りの飲み物を避ける 屋台やカフェの氷は水道水で作られている場合があります。
生野菜や果物は加熱・皮むきして食べる 洗浄に使われた水が汚染されていることがあります。
加熱が不十分な肉・魚介類を避ける 食材の中心までしっかり火が通ったものを選びましょう。

 

見た目が清潔なレストランでも、水や氷が原因で感染することがあります。食事中は「水と氷」に注意しましょう。

衛生習慣

旅行中は、手指を介した感染を防ぐために、日常以上に衛生管理を心がけましょう。

注意点 補足
食前・トイレ後の手洗い・消毒を徹底する 石けんまたはアルコール消毒を使用します。
ウェットティッシュや除菌スプレーを携帯する 外出先や屋外の飲食時に便利です。
十分な睡眠と休養をとる 免疫力を保つことで感染しにくくなります。

 

疲労や睡眠不足は腸の働きを弱め、感染しやすくなります。「休むこと」も大切な予防策です。

渡航前の準備

現地で体調を崩したときに備え、日本出発前から準備しておくと安心です。

準備項目 詳細
常備薬の持参 整腸剤、解熱鎮痛薬、吐き気止め、経口補水液などを携帯します。
旅行保険の確認 「治療・救援費用1,000万円以上」の補償があるプランが望ましいです。
病院リストを準備 保険証書とキャッシュレス対応病院のリストを印刷しておきます。

 

持病がある方は、英文の診断書や服用薬の成分リストを持参すると、現地での受診がスムーズです。

バリ腹になったときの対処法

万が一バリ腹を発症した場合でも、慌てる必要はありません。多くは軽症で、正しい対応をすれば数日で回復します。

ここでは、症状の程度に応じた自宅でのケア方法と医療機関を受診すべき目安を紹介します。

軽症時(自力で対応できる場合)

多くのバリ腹は軽症で、正しく対処すれば数日で回復します。

もっとも重要なのは脱水を防ぐことです。症状が軽くても、こまめな水分補給と十分な休養を心がけましょう。

対応内容 ポイント
水分補給 経口補水液(ORS)やスポーツドリンクを少量ずつこまめに摂取します。カフェインやアルコールは避けましょう。
食事 おかゆやスープ、バナナなど消化のよいものを少量ずつとります。油っこい料理や乳製品は控えます。
整腸剤・下痢止め 整腸剤を服用してもかまいません。ただし血便や高熱があるときは使用しないでください。

中等症~重症時の対応

次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。

  • 嘔吐が続く
  • 38℃以上の発熱
  • 血便が出る
  • 水分をとっても尿が出ない

バリ島には外国人旅行者向けの医療施設があり、日本語や英語で対応できる病院もあります。受診の際は、次の3点を持参しましょう。

  • パスポート
  • 海外旅行保険の証書
  • クレジットカード(キャッシュレス対応を確認)

必要に応じて、現地で点滴や抗生物質の投与を受けることができます。

症状が強い場合は、無理に移動せず、ホテルのフロントや保険会社のサポート窓口に相談してください。

回復後の注意点

症状が落ち着いても、腸内環境の回復には少し時間がかかります。回復後もしばらくは無理をせず、体を休めることが大切です。

対応内容 ポイント
腸内環境を整える ヨーグルトや味噌、納豆など発酵食品を少しずつとりましょう。
食事に注意する 脂っこい料理や生ものは数日間控えます。
帰国後の受診 下痢や倦怠感が続く場合は、寄生虫感染の可能性もあるため内科を受診します。

旅行前チェックリスト

出発前に以下のポイントを確認しておくと、旅行中の体調トラブルを防ぎやすくなります。

チェック項目 内容
飲料水 水道水は飲まない。歯磨きやうがいもミネラルウォーターを使用。
食事 加熱済みの料理を選び、屋台や生ものは避ける。
薬の準備 整腸剤、経口補水液、解熱鎮痛剤などの常備薬を携帯。
海外旅行保険 「治療・救援費用1,000万円以上」かつキャッシュレス対応のプランを確認。
医療機関の確認 滞在先周辺で日本語対応可能な病院を事前に調べておく。

 

現地で体調を崩した場合、早めに休養を取り、水分をこまめに補給しましょう。万一に備え、保険証書や病院リストはスマートフォンにも保存しておくと安心です。

正しい知識と準備で、安心してバリ旅行を楽しもう

バリ腹は、現地の水質や衛生環境の違いによって起こる「旅行者下痢」の一種です。誰にでも起こり得る症状ですが、食事や水の管理・衛生対策・渡航前の準備を徹底すれば、多くのケースは防ぐことができます。

出発前には、以下の基本的な対策を整えておきましょう。

  • 飲料水や氷、生野菜などの扱いに注意する
  • 整腸剤や経口補水液などの常備薬を準備する
  • 海外旅行保険と日本語対応の病院を確認しておく

また、バリ島では地域によってA型肝炎や腸チフス、狂犬病などの感染症リスクもあります。

ワクチンナビでは、渡航先や目的に合わせて最寄りのトラベルクリニックを検索できます。出発の2~3カ月前を目安にチェックし、万全の体調で安心して旅行を楽しみましょう。

この記事の監修者

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記事担当:ワクチンナビ編集部

「ワクチンNavi」 は渡航前に確認しておきたい感染症の情報や、旅行・渡航に役立つ豆知識など様々な情報を発信しております。

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