公開日:2024.03.14更新日:2024.05.02

マラリアとは?症状・予防薬について


「マラリアってどんな病気?」

「ワクチンや薬で予防できるものなの?」

マラリアは現在日本での発症はありませんが、暖かい気候の国を中心に発症事例が多い感染症です。

命を落とす恐れのある病気であるため、海外へ渡航する際は徹底した予防策を講じる必要があります。

本記事では、マラリアの特徴や症状、原因、予防薬をはじめとする予防方法について解説します。

 

マラリアとは?

マラリアは三大感染症の一つで、エイズと結核に並ぶ世界的な病気です。

三日熱マラリア・熱帯熱マラリア・四日熱マラリア・卵型マラリア・サルマラリアという5つのタイプがあり、特に重症化しやすいのが熱帯熱タイプです。

多くの地域で発生していますが、亜熱帯や熱帯地域はとくに感染者が多い傾向にあります。

発症の要因となるのは細菌やウイルスではなく、原虫とよばれる微生物です。

現在の日本では根絶されているため感染リスクはありません。

傾向として、繰り返し感染している人は軽度な症状で済むことが多いです。

ただし、熱帯熱マラリアは治療が遅れると短期間で重症化し、亡くなってしまう場合があります。

感染の有無は「血液塗抹標本」という、スライドガラスに血液を滴して染色し、顕微鏡で調べる検査方法が使われていました。

しかしこの検査方法には高い技量が必要であり、結果の信憑性が高くないため別の方法との併用が推奨されています。

現在ではもっと簡単に検査できる方法がみつかり、PCR検査や抗原検査が主流です。

治療には抗マラリア薬を使用し、ベースは内服による治療です。

しかし、重症化している場合は注射や座薬で治療することもあります。

薬の種類は複数あり、国や地域によって使用される薬が違います。

 

マラリアの原因

マラリア原虫に感染することで発症し、タイプによってそれぞれ原虫の種類が異なるのが特徴です。

現在人への感染が認められている原虫は、三日熱マラリア・熱帯熱マラリア・四日熱マラリア・卵型マラリア・サルマラリアです。

もともと、三日熱マラリア・熱帯熱マラリア・四日熱マラリア・卵型マラリアの原虫のみとされていました。

しかし、マレーシアのボルネオ島でマカク属のサルによる人の集団感染が問題となっていたことが2004年以降で明らかとなり、サルマラリア原虫の一種である「P.knowlesi」も人に感染することが判明しました。

原虫はハマダラカ種に含まれる蚊に存在し、刺されることで感染を引き起こします。

ハマダラカ種はおよそ400種類おり、人にマラリアを感染させる原虫をもつ種類はそのうちの30種類とされています。

原虫が血液中に入りこむと約45分で肝細胞に取り込まれ、数千個に分裂し、分裂後は肝細胞を破壊して再び血液中へと放たれて発症します。

人から人への感染はないため、感染者と一緒に過ごしたり濃厚接触をしたりしても移る心配はありません。

 

マラリアの症状

マラリアには三大症状と呼ばれる症状があり、熱発作、貧血、脾腫がみられるのが特徴です。

他にも、嘔吐、悪寒、高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、顔が赤くなる、呼吸不全、結膜の充血といった症状がみられることがあります。

潜伏期間はタイプによって以下のように異なります。

  • 熱帯熱タイプ:7〜30日
  • 三日熱タイプ:8〜30日
  • 四日熱タイプ:28〜37日
  • 卵形タイプ:11〜16日
  • サルタイプ:9〜12日

上記の潜伏期間を過ぎると、初期症状として悪寒や震えがみられ、その後に熱発作を起こすのが一般的な経過です。

熱発作とは、徐々に体温が上がる状態が1〜2時間継続した後、さらに熱が上がっていき顔面の紅潮や呼吸不全、結膜の充血、嘔吐、頭痛、筋肉痛などの症状が4~5時間続き、最終的に発汗とともに熱が下がっていく一連の症状のことです。

熱発作の間隔はマラリアのタイプによって異なります。

上記の症状の他にも、危険な合併症を起こすリスクがあります。

合併する可能性のある病気は、代謝性アシドーシス、重症貧血、低血糖、脳症、腎症、肺水腫、黒水熱などです。

 

マラリア予防薬と予防方法

マラリアの予防薬やその他の予防方法について紹介します。

・マラリア予防薬の種類と料金目安

予防薬の種類は以下のとおりです。

  • マラロン(アトバコン/プログアニル塩酸塩)
  • メファキン(メフロキン)
  • ビブラマイシン(ドキシサイクリン)
  • クロロキン
  • プリマキン(サノフィ)

少量を服用し続けることで予防効果が発揮されるため、予防薬として使用することが可能です。

これらの予防薬は医師の処方が必要であるため、ドラッグストアなどでは購入することができません。

流行地域に行く予定があり予防薬を服用したい場合は、取り扱いのあるクリニックを受診し薬を処方してもらう必要があります。

予防薬1錠の金額はクリニックによって変動するため、クリニックへの確認が必要です。

滞在日数によっても予防薬に違いが生じるため、負担費用は個人差が大きいです。

たとえば、マラロンは滞在中毎日1錠服用し、さらに流行地域から離れた後も1週間は服用する必要があります。

仮に滞在日数が10日であるとすれば、追加の1週間も含めて17日分の費用がかかりますが、滞在日数が3日であれば追加の1週間も含めて10日分の費用で済みます。

 

・マラリア予防薬の服用スケジュール

予防薬の服用スケジュールは年齢問わず同じですが、大人と小児で服用量が異なります。

マラロンを予防のために服用する場合、流行地域・国に入る前日から出国後1週間まで服用する必要があります。

服用量は、大人の場合1錠でよいですが、子どもの場合は体重によって異なるため医師の指示に従ってください。

また体重5kg未満の子どもは服用できません。

メファキンの場合、流行地域・国に行く1〜2週間前から服用を開始し、出国後は同じ曜日に週1回の服用を4週間続けます。

服用量は、大人の場合1錠でよいですが、子どもの場合は体重によって異なるため医師の指示に従ってください。

ビブラマイシンの場合、流行地域・国に入る前日から出国後4週間の間は毎日服用します。

子どもが服用する場合は8歳以上しか服用できません。

大人の服用量は1日1錠、子どもの場合は体重によって異なるため医師の指示に従ってください。

クロロキンの場合、流行地域・国に入る1〜2週間前から服用を開始し、出国後4週間まで毎週同じ曜日に服用しなければなりません。

服用量は、大人であれば毎週1回、子どもの場合は体重によって異なるため医師の指示に従ってください。

プリマキンの場合、流行地域・国に入る1〜2日前から服用を開始し、出国後1週間まで毎日の服用が必要です。

服用量は、大人であれば毎日1錠、子どもの場合は体重によって異なるため医師の指示に従ってください。

 

・マラリア予防薬の副作用

予防薬は副作用を起こす可能性があり、またその症状は薬によって異なります。

マラロン(アトバゴン/プログアニル合剤)

主な副作用:腹痛、吐き気・嘔吐、頭痛など

重篤な副作用:皮膚粘膜眼症候群、重度肝機能障害、アナフィラキシーなど

メファキン(メフロキン)

主な副作用:うつ症状、頭痛、倦怠感、不眠、胸やけ、めまいなど

重篤な副作用:重篤な精神障害、けいれんなど

ビブラマイシン(ドキシサイクリン)

主な副作用:光過敏、吐き気・嘔吐、食欲不振、発疹、発熱など

重篤な副作用:中毒性表皮壊死融解症、薬剤性過敏症症候群など

クロロキン

主な副作用:胃腸障害、視力障害、不眠、めまい、かゆみなど

重篤な副作用:網膜症など

プリマキン(サノフィ)

主な副作用:疹、かゆみ、吐き気、腹痛など

重篤な副作用:溶血性貧血、メトヘモグロビン血症など

 

・マラリアの予防方法

マラリアを予防するためには、ハマダラカ対策と薬による対策を並行して行うことが大切です。

ハマダラカは黒色を好み、また夜間に活動する特徴があります。

よって、長袖長ズボンを着用する、虫除けスプレーを使用するといった対策に加え、外出は日中に済ませる、黒色の服の着用を避けることも有効です。

 

マラリアの感染リスクのある地域

  • アジア
  • オセアニア
  • アフリカ など

上記のような中南米の熱帯・亜熱帯地域で流行しています。

蚊は暖かい気候や暑い気候の地域に生息する虫であるため、気温が高い国や地域に行く場合は要注意です。

Q&A

マラリアに関するよくある質問

マラリアはなぜアフリカに多い?
アフリカは蚊の寿命が長い上に人の血液を好んで吸血するためです。 感染および伝播は、降雨パターン、気温、湿度など、蚊の個体数や生息に影響を与える気候環境による影響も関連します。 よって多くの地域では、季節性で感染・伝播が起こり、雨期やその直後にピークを迎えます。
マラリアはなぜ日本でなくなったのですか?
もともと日本のマラリアは、戦争末期の強制移住によって沖縄で「戦争マラリア」(熱帯熱)が流行しました。 その際、マラリアを根絶させる家屋内DDT残留噴霧を行ったり、マラリア患者に治療薬を投与したりといった対応を行ったことが功を奏し、1960年代前半には根絶を実現しました。
マラリアで亡くなる人は何人ですか?
2021年のマラリアによる推定死亡者数は、619,000人に達しました。 2021年にはWHOのアフリカ事務局管轄地域が世界のマラリアの犠牲者の大部分を占め、マラリア患者の95%が同地域にみられました。 また死亡は96%、5歳未満の小児の死亡が約80%を占めていました。

この記事の監修者

著者

記事担当:笹倉 渉

MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。

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