公開日:2024.03.14更新日:2024.05.02
ポリオ(急性灰白髄炎)とは?症状・ワクチンについて
かつては日本で猛威をふるった恐ろしい病気も、目覚ましい医療技術によって根絶したものがあります。
しかし時代が進むにつれてその脅威が薄れてしまい、予防のためのワクチンを受ける必要性がないと感じる人もいます。
国内では根絶している病気でも、国外ではいまだ健在している病気もあります。
今回はポリオ(急性灰白髄炎)についてご紹介します。
現在国内にこの感染症の患者はいませんが、発症を防ぐためにワクチンを受けることは大切です。
ポリオがどういう病気なのか、治療法や予防について解説いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
ポリオ(急性灰白髄炎)とは?
別名「脊髄性小児麻痺」とも呼ばれる、ウイルスによる感染症です。
5歳以下の小児がかかりやすい傾向にあり、手足に麻痺が出る恐れがあります。
風邪とよく似た症状であるため、診断を誤った場合、運動障害などのさまざまな後遺症が残ってしまいます。
国内では1960年に大流行し、5,000人以上の患者がいたと言われています。
その後ワクチンが開発されて接種が進み、1980年を最後にポリオと診断された患者は出ておらず、2000年にWHOからポリオの根絶宣言を受けました。
また世界中でウイルスが少なくなり、現在ではごく一部の国でのみ確認されています。
ただし近年ではポリオウイルスを防ぐワクチンを受けておらず、免疫を持たない人もいます。
国外との交流が盛んな現在、免疫を持たない人が増えてしまうと再びポリオが流行するのではないかという懸念がされています。
ポリオ(急性灰白髄炎)の原因
ポリオはポリオウイルスが体内に取り込まれ、腸内で増殖することで感染します。
増殖したポリオウイルスは便とともに排泄されますが、その便に触れてしまうことで、他の人へと感染していきます。
発症する患者のほとんどは小児ですが、成人した大人がかかることもまれにあります。
現在はごく一部の国を除いて感染した例は挙がっていませんが、未だ根絶には至っておらず、ワクチンを受けなくなった地域では再度流行しているようです。
このように、免疫を持たない人が増えていくと世界的に流行してしまう恐れがあります。
ポリオ(急性灰白髄炎)の症状
ポリオウイルスに感染しても、そのほとんどが無症状に近い状態であることが多く、感染した人が知らない間に免疫を持つということがあります。
ポリオウイルスが体内に潜伏している期間は3日~21日です。
頭痛や体のだるさ、発熱などといった風邪のような症状が出ます。
しかし、およそ1,000人〜2,000人に1人という割合で、腸内のウイルスが増えすぎてしまい脊髄へと侵入することがあります。
重症化していくと呼吸器の筋肉、特に肺の筋肉が低下して呼吸不全となり亡くなる人もいます。
また発症すると、手足に麻痺が起こることがあります。
症状が治まっても後遺症として運動障害が残ってしまう恐れがある上、完治が大変困難です。
さらに発症から数十年という時間が経過した後に、不自然なまでの疲労や筋力の低下が起こる場合があります。
これはポストポリオ症候群と呼ばれるもので、さらに悪化すると肺を動かす筋肉を低下させていき、人工呼吸器を使わなければならなくなる恐れがあります。
長い時間をかけて命が脅かされる恐ろしい病気です。
小児がかかった場合の死亡率がおよそ5%ほどであることに対し、大人がかかった場合は特に重症化しやすい傾向にあるため、死亡率が30%にまで上がります。
ポリオに対する治療法は、現在確立されていません。
根気よくリハビリを行い、麻痺を緩和させていくことしかできないのが現状です。
ポリオの診断には腸液や髄液、便などから24時間以内に2回以上検体を採取して、PCR検査を行います。
症状と検査により、ポリオであると診断がされた場合は、速やかに役所へ届け出なければなりません。
患者が幼児や学生である場合、完治するまで学校や保育園への登校・登園は停止となります。
ポリオ(急性灰白髄炎)ワクチン接種と予防方法
本項では、ポリオワクチンの料金目安や接種スケジュール、ポリオの予防方法について解説いたします。
・ポリオ(急性灰白髄炎)ワクチンの種類と料金目安
ポリオに対抗するワクチンとして、不活化ワクチンである四種混合(DPT-IPV)ワクチンが採用されています。
四種混合(DPT-IPV)ワクチンは、ポリオの他にも破傷風・ジフテリア・百日咳といった四種類の感染症予防を目的として作られたものです。
定期接種に指定されているため、基本無料で受けることができますが、任意接種の場合は自己負担での費用が発生します。
当院の場合、1回につき14,300円で接種可能です。
また、ポリオのみの予防を目的とした不活化ポリオワクチンは、1回につき7,700円で接種可能です。
現在の四種混合(DPT-IPV)ワクチンは2012年に導入されたもので、それまでは飲むタイプのワクチンである生ポリオワクチンが使用されていましたが、不活化ポリオワクチンが導入されたことで切り替わりました。
生ポリオワクチンでは数十万人~数百万人に1人の割合で小児麻痺が起こる恐れがありましたが、不活化ポリオワクチンでは小児麻痺が絶対に起こりません。
・ポリオ(急性灰白髄炎)ワクチン接種スケジュール
一般的に生後2ヶ月から受けられる四種混合ワクチンで免疫をつけることになります。
四種混合ワクチンは受ける時期が1期と2期に分かれており、5回の接種が必要です。
1期では生後2か月〜12か月の間に3回、3回目から12か月~18か月あけて1回受け、合計4回の接種を行います。
2期では免疫の効果が落ち始める11歳前後で1回受けることになります。
不活化ポリオワクチンも生後2か月から接種が可能です。
不活化ポリオワクチンは合計4回接種する必要があり、まず3〜8週ほどの間隔をおいて3回受けてから、およそ1年後に4回目を接種します。
海外では、入学前に5回目を任意で受けるよう推奨されています。
・ポリオ(急性灰白髄炎)ワクチン接種の副反応
四種混合ワクチンにおいては、大きな副反応が出たことはありません。
不活化ポリオワクチンの副反応は、まれに注射を受けた腕の周辺が腫れるといったことが挙げられますが、こちらも大きな副反応はないとされています。
・ポリオ(急性灰白髄炎)の予防方法
有効な予防方法は、上述のワクチンを接種することです。
WHOはポリオが流行している国に4週間以上滞在する場合、たとえ予防接種を受けていても追加で受けることを推奨しています。
予防接種が完了していない人や予防接種を受けていない人は、滞在の期間に関わらず、国外へ赴く前にワクチンを受けて免疫をつけることが大切です。
また口からの感染が主であるため、ポリオが流行している国では食事の前に石鹸を用いた手洗いを徹底するようにしましょう。
ポリオ(急性灰白髄炎)の感染リスクのある地域
Q&A
ポリオ(急性灰白髄炎)に関するよくある質問
- ポリオはどういう病気ですか。
- ポリオウイルスにより引き起こされる感染症です。 ほとんどの場合は無症状ですが、脊髄にウイルスが侵入してしまった場合、手足の麻痺を起こしたり呼吸器の筋肉に影響を与えたりします。 最悪の場合死に至ることもあり、完治しても麻痺や運動障害が生涯残る恐れがある危険な病気です。
- ポリオの治療はどういうものですか。
- 未だポリオに有効な治療法は確立されていません。 そのため発症をさせないようワクチンを受けて、予防することがなにより大切です。
- 日本国内にポリオの患者はいますか。
- ワクチンを受ける環境が整っていったことで、2000年に日本はWHOよりポリオの根絶宣言を受けています。 しかし海外では未だ根絶に至っていないため、免疫を持たない人が増えれば再度流行する可能性があります。
この記事の監修者
-
著者
-
記事担当:笹倉 渉
MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。
Popular place
人気の渡航先
今後行く可能性が高い、
渡航先のワクチン情報をチェックしましょう。
Information
各国で流行している感染症
渡航先の近くで流行している、または、今後国内で発生するリスクのある感染症を予習しておきましょう。
Column
お役立ちコラム
Reservation
海外渡航前には
ゆとりをもってワクチン接種を。
渡航先や目的によって予防接種の種類はさまざま。
複数回摂取が必要なワクチンも。
以下よりワクチンのご予約が可能です。