公開日:2024.03.14更新日:2024.05.02
日本脳炎とは?症状・ワクチンについて
日本脳炎は、以前は子どもや高齢者が発症することが多かった、ウイルスによって引き起こされる疾患です。
今回は、日本脳炎の原因、症状、予防方法などについて詳しくご紹介していきます。
また、日本脳炎ワクチン接種に関しても解説しますので、まだ未接種の人はぜひ参考にしてください。
日本脳炎とは?
日本ではあまり聞かれなくなった日本脳炎ですが、世界的には1年間で約3〜4万人の発症が確認されています。
日本における患者数が少ない理由は、日本脳炎ワクチンの接種が国内で広まっているためです。
ウイルス感染症である日本脳炎は、蚊が媒介役となって人に感染します。
「高温多湿な気候」と「蚊が生息しやすい田んぼや沼に近い場所」は、日本脳炎が発生しやすい理由として挙げられます。
南アジアや東南アジアが日本脳炎の流行エリアといわれていますが、この他にオーストラリア北部やパプアニューギニアでも発生が確認されているようです。
また日本では、年間で数例の日本脳炎患者が北海道以外のエリアで報告されています。
日本脳炎の原因
人が日本脳炎ウイルスに感染することで、日本脳炎を発症します。
日本では、田んぼに生息するコガタアカイエカが日本脳炎ウイルスの媒介役となりますが、他国では別の種類の蚊が媒介します。
日本脳炎ウイルスの感染環は、日本脳炎ウイルスを持っている豚とその豚を吸血した蚊によって形成されています。
そして、ウイルスを保有した蚊が別の豚を吸血すれば、健康な豚が新たに日本脳炎ウイルスに感染し、人がウイルスを保有した蚊に刺されることで日本脳炎を発症するという仕組みです。
これまでのところ、日本脳炎の人から人への感染は認められていません。
日本脳炎の症状
急な発熱が日本脳炎の主な症状です。
その他に嘔吐、嘔気、頭痛などが見られ、脳炎症状である意識障害や精神症状が見られることもあります。
高齢者や子どもの感染の場合や、高熱をきたした人の場合では、重篤化しやすい傾向があり、パーキンソン病のような症状や精神発達遅延などの後遺症が残るケースも報告されています。
日本脳炎ウイルスの潜伏期間は、6〜16日程度です。
また日本脳炎に罹患した場合の死亡率は約20〜30%、そして全体の約30%に後遺症が残るといわれています。
日本脳炎ワクチン接種と予防方法
ここからは、実際に日本脳炎ワクチンを接種するときに知っておくべきことについて解説していきます。
そして、気になる接種後の副反応についてもご紹介します。
・日本脳炎ワクチンの種類と料金
日本脳炎ワクチンには、KMバイオロジクス株式会社の「エンセバック皮下注用」と阪大微生物病研究会の「ジェービックV」の2種類があります。
どちらのワクチンも、日本脳炎ウイルスの感染力を失わせた不活化ワクチンです。
製造方法は以下のとおりです。
まず日本脳炎ウイルス北京株をアフリカミドリザル腎細胞由来のVero細胞を使って増殖させます。
次に、それから得られた日本脳炎ウイルスをホルマリンで不活化し、超遠心で精製した後、最後に安定剤を加えて凍結乾燥させます。
製造過程で問題が生じたため、一時的に「ジェービックV」の製造が停止された時期がありましたが、現在は製造が再開されています。
基本的に、子どものときに接種する定期接種は無料となりますが、任意接種の場合には費用が発生します。
当院の場合、1回につき8,250円で接種可能です。
・日本脳炎ワクチン接種スケジュール
合計4回を通して定期的な接種が求められる日本脳炎ワクチンは、第1期と第2期の2つのタイミングで行います。
1〜3回目を接種する第1期の対象年齢は生後6カ月〜7歳6カ月までとなり、残り1回を行う第2期は9〜13歳未満です。
一般的に、1回目は3歳のときに接種し、2回目は1回目の日から7日間以上あけて行います。3回目は1回目を接種した日から6カ月以上経過してから接種します。
留意すべき点は、日本脳炎ワクチンの接種の積極的な推奨が控えられた時期があったことです。
1995年(平成7年)4月2日〜2007年(平成19年)4月1日生まれの人については、日本脳炎ワクチンの特例対象者になります。該当する人で日本脳炎ワクチンの接種を完了していない人は、20歳未満まで接種が可能です。
・日本脳炎ワクチン接種の副反応
日本脳炎ワクチン接種後に副反応が出やすいのは、生後6カ月〜7歳6カ月の子どもです。
主症状としては、注射した部位の腫れ、発熱、鼻水、咳などが挙げられ、接種後3日以内に見られる場合がほとんどです。
まれなケースでは、けいれん、アナフィラキシー、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などの重い症状が出ることもあります。
発熱については、1回目の接種後に見られることが多く、2回目以降の接種ではあまり見られません。
また、4回目に見られることがある症状は、注射部位の腫れです。
・日本脳炎の予防方法
日本脳炎を予防するためには、主に2つの方法があります。
1つめは、蚊に刺されないようにすることです。
日本国内において、日本脳炎ウイルスを媒介しているのは、コガタアカイエカという蚊です。
この蚊は、日が沈んだ後に活動が活発になることが分かっています。
そのため、外に出るときは長袖、長ズボンを着用し、虫除けスプレーをするなど防護した上で、田んぼや沼地の2km以内には極力入らないようにしましょう。
2つめは予防接種です。
日本脳炎ワクチンを受けておくと、日本脳炎にかかるリスクが約75〜95%下がるといわれています。
このことからも、ワクチン接種が日本脳炎の予防に有効であることが窺えます。
日本脳炎の感染リスクのある地域
上記のとおり、アジアでは東アジアから南アジアに渡るほとんどの国において、日本脳炎の発生が確認されています。
他にも、オーストラリアにあるクイーンズランド州、ビクトリア州、ニューサウスウェールズ州、南オーストラリア州でも日本脳炎の感染が報告されています。
Q&A
日本脳炎に関するよくある質問
- 日本脳炎の国内での発生数はどれくらいで、国内のどの地域で発生が多いですか。
- 国立感染症研究所の感染症発生動向調査によれば、国内での発生数は2005年以降、1年間で10人を超えていないことが報告されています。 また、九州、沖縄、中国、四国地方において、日本脳炎の患者数が多いことがわかっています。 逆に、関東、東北、北海道地方で発生するのはまれなケースのようです。
- 日本脳炎ワクチンの副反応の一つに含まれている急性散在性脳脊髄炎(ADEM)とは、どんな病気ですか。
- 日本脳炎ワクチンを接種した後に、まれに発症が見られる脳神経系の病気のことを急性散在性脳脊髄炎(ADEM)といいます。 ワクチンを接種して免疫力が強くなりすぎた結果、自分自身の体を攻撃してしまう自己免疫の状態に至ることが原因です。 ワクチンを接種した後、約1〜4週間以内に頭痛、発熱、運動障害、けいれんなどの症状が現れます。
- 日本脳炎ワクチンを接種した後、重い副反応が起こった場合の補償はどうなっていますか。
- 日本脳炎ワクチンは、予防接種法に基づく予防接種の一つです。 そのため、重い副反応が起こった場合には、予防接種健康被害救済制度により市区町村から補償金が支給されます。 上記の救済制度を利用したい場合には、市区町村での申請が必要になります。
この記事の監修者
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著者
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記事担当:笹倉 渉
MYメディカルクリニック渋谷の非常勤医。麻酔科標榜医・日本医師会認定産業医の資格を持つ。
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