公開日:2025.10.29更新日:2025.10.29

海外渡航の予防接種はいつから?必要なワクチンと準備スケジュールを解説


海外旅行や留学、出張などで海外に渡航する際は、出発前の予防接種(ワクチン接種)が欠かせません。国や地域によって流行する感染症が異なり、日本では見られない病気にかかるリスクもあります。そのため、「いつから接種を始めるべきか」を理解し、余裕を持って準備を進めることが大切です。本記事では、海外渡航前に受けておきたい代表的なワクチンと、出発までのスケジュールを分かりやすく解説します。

海外渡航前に予防接種が必要な理由

海外では、日本とは異なる衛生環境や医療体制のもとで生活することになります。そのため、現地で感染症にかかるリスクを減らすためには、出発前のワクチン接種が重要です。

詳しくは、厚生労働省検疫所(FORTH)の「海外渡航のためのワクチン(予防接種)」でも案内されています。

また、一部の国では予防接種証明書(イエローカード)の提示が入国条件となっています。

例えば、アフリカや中南米の国々には黄熱ワクチンの接種証明が義務づけられているところがあり、証明書がないと入国できない場合があります。

さらに、留学や駐在などで長期滞在を予定している場合は、学校や勤務先がワクチン接種証明の提出を求めることもあります。予防接種は、健康を守るだけでなく、入国や滞在の手続きを円滑に進めるためにも重要です。

予防接種はいつから始める?

多くのワクチンは、接種してから数週間~1カ月ほどで抗体が上昇し始めます。

ただし、ワクチンの種類や接種回数によって、免疫が十分につくまでの期間は異なります。A型肝炎・B型肝炎・日本脳炎・狂犬病などの一部ワクチンは、2回または3回の接種が必要で、1回の接種では完了しません。

米国CDCでは、旅行者に対して出発の4~6週間前までにトラベルクリニックなどで相談・接種を始めるよう推奨しています。英国 NHSでも、少なくとも6~8週間前に医師へ相談することを勧めています。

出発まであまり時間がない場合でも、最低でも1カ月前には接種を開始するのが目安です。CDCの案内でも、「旅行の少なくとも1カ月前に予防接種を受けることが望ましい」と記載されています。

一部のワクチンでは、短期間で効果を得られる加速スケジュール(accelerated schedule)が設定されています。例えば、狂犬病ワクチンでは0日・7日の2回法(暴露前2回法)が国際的に採用されており、出発直前でも接種できるケースがあります。

ただし、日本や渡航先のガイドラインによって接種回数や間隔が異なる場合があるため、必ず医師に確認してください。

参考

CDC The Pre-Travel Consultation

代表的なワクチンと感染症リスク

海外では、国や地域によって流行する感染症が異なり、必要となるワクチンも変わります。特に、熱帯・亜熱帯地域では蚊や動物を媒介とする感染症のリスクが高く、事前のワクチン接種が重要です。

以下では、主な感染症とその流行地域、渡航前に確認しておきたいワクチンのポイントを一覧にまとめました。

感染症 主な流行地域 ワクチンのポイント
黄熱 アフリカ・中南米 一部の国では、黄熱ワクチン接種証明書(イエローカード)の提示が入国条件。証明書は接種から10日後に有効となるため、出発の10日以上前までに接種を完了する必要があります。
狂犬病 アジア・アフリカ・中南米 主に動物(犬など)の咬傷により感染。発症後の致死率は極めて高く、暴露前予防接種が推奨されます。特に、動物との接触機会が多い地域・長期滞在者・医療従事者は要検討。
A型肝炎 東南アジア・中東・中南米 主に汚染された水や食品から経口感染。衛生状態の悪い地域では感染リスクが高く、渡航前にワクチン接種が強く推奨されます。2回接種で長期免疫が得られます。
B型肝炎 世界全域 血液や体液を介して感染。注射器の使い回し、医療処置、性的接触などが感染経路。医療行為を受ける可能性がある人や長期滞在者は接種推奨。通常3回接種で長期免疫を獲得。
日本脳炎 東南アジア・南アジア 蚊(主にコガタアカイエカ)によって感染。都市部の短期滞在ではリスクは低いものの、農村部や長期滞在者には接種が推奨されます。
腸チフス 南アジア・アフリカ・東南アジア サルモネラ菌による経口感染症。経口ワクチン(カプセル型)と注射型の2種類があります。ワクチンの効果は数年間持続しますが、衛生対策(食事・飲料の管理)も不可欠です。
麻しん・風しん 世界各地 感染力が非常に強いウイルス感染症。日本を含む多くの国で2回接種が標準。渡航者で抗体がない、または接種記録が不明な場合は追加接種が推奨されます。

 

厚労省検疫所「海外渡航で検討する予防接種の種類の目安(地域別)」では、渡航地域ごとに流行する感染症が掲載されています。

また、黄熱ワクチンは原則として検疫所や厚生労働省指定医療機関でのみ接種可能であり、対応機関は「黄熱ワクチン接種機関一覧」に掲載されています。

出発までのスケジュール例

海外渡航の予防接種は、ワクチンの種類によって接種回数や間隔が異なります。特に複数回接種が必要なワクチンは、出発直前では間に合わない場合もあるため、余裕を持ったスケジュール管理が大切です。

以下では、出発3カ月前からの一般的な準備スケジュールをまとめました。渡航先や滞在期間に応じて、医師と相談しながら計画を立てましょう。

時期 やること 内容
出発の3カ月前 トラベルクリニックで相談 渡航先・滞在期間・目的に応じて、必要なワクチンや感染症対策を医師に確認。複数回接種が必要なワクチン(A型肝炎・B型肝炎・狂犬病など)は早めの開始をおすすめします。
出発の2カ月前 1回目の接種開始 多回接種ワクチンを優先して接種開始。抗体形成までには数週間~1カ月かかるため、出発までの期間を逆算してスケジュールを立てます。
出発の1カ月前 追加接種・接種完了 2回目・3回目の接種を進めて、必要なワクチンをできる限り完了させます。ワクチンによっては加速スケジュール(accelerated schedule)が利用可能な場合もあります。
出発の10日前まで 黄熱ワクチンを完了 黄熱ワクチン接種証明書(イエローカード)は、接種から10日後に有効となります。多くの国で入国時に提示が求められるため、出発の10日前までに接種を済ませておきましょう。
出発直前 証明書・記録を確認 イエローカード(黄熱ワクチン証明)やほかの接種記録を必ず携行。現地で医療を受ける際や入国審査で提示を求められる場合があります。

 

予防接種以外で気を付けたい感染症対策

ワクチンで防げない感染症も多く存在します。特に、旅行先の環境や気候によって感染リスクが高まるケースがあるため、日常の行動や衛生対策が重要です。

以下では、旅行者がかかりやすい代表的な感染症と対策のポイントを紹介します。

感染症名 感染経路・特徴 予防方法 注意点
マラリア 蚊(ハマダラカ)を介して感染する寄生虫感染症。熱帯・亜熱帯地域で流行。 抗マラリア薬(予防薬)の服用と防蚊対策(長袖・長ズボン、虫よけスプレー、蚊帳の使用)。 予防接種はなし。薬の種類・服用期間は地域や滞在期間により異なるため、医師へ相談が必要。
デング熱 デングウイルスを媒介するヒトスジシマカなどの蚊により感染。昼間に活動する蚊が多い。 蚊の対策が中心。屋外では肌の露出を避け、虫よけ剤をこまめに使用。 ワクチンは一部国でのみ使用可。一般的な旅行者には推奨されておらず、自己防衛策が重要。
コレラ・旅行者下痢症 汚染された水や食品を介して感染。衛生環境の悪い地域で発生しやすい。 飲食衛生を徹底(生水・氷・生野菜を避け、加熱済み食品・密封飲料を選ぶ)。手洗い・消毒も有効。 コレラワクチンはあるが完全防御ではない。衛生管理がもっとも重要。

 

旅行先によって流行している感染症や警戒レベルは異なります。

外務省の「海外安全ホームページ」では、国や地域ごとの感染症リスクを確認できます。治安情報と併せて、出発直前に最新情報をチェックし、必要に応じて旅行計画を見直しましょう。

早めの準備が安全な旅行への第一歩

海外渡航の予防接種は、出発の3カ月前にトラベルクリニックに相談することをおすすめします。遅くとも1カ月前には接種を始められるよう、余裕を持ってスケジュールを組みましょう。

ワクチンによっては複数回接種が必要なものや、接種証明書(イエローカード)の発行に日数を要するものもあります。

また、渡航先によって推奨されるワクチンは異なります。厚労省検疫所「海外渡航のためのワクチン(予防接種)」や外務省「海外安全ホームページ」などの公式情報を確認しつつ、医師と相談して最適な接種スケジュールを決めることが大切です。

「ワクチンナビ」では、最寄りのトラベルクリニックを検索できるので、渡航先やスケジュールに合わせて接種計画を立てておくと安心です。

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記事担当:ワクチンナビ編集部

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