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公開日:2025.10.29更新日:2025.10.29

海外旅行は、非日常を味わえる貴重な体験ですが、体調不良や盗難、フライトの遅延など、思わぬトラブルに遭うリスクもあります。外務省の統計では、毎年1万件以上の日本人旅行者が現地で援護を受けており、多くが病気・けが・盗難などに関するものです。
本記事では、旅行前に知っておきたい海外トラブルの実例と、医療費・保険・感染症対策などの備えを分かりやすく紹介します。
海外旅行では、体調不良から盗難・フライトの遅延まで、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。
外務省の統計によれば、毎年1万件以上の邦人援護事例が報告されており、多くが「病気・ケガ」「事故」「盗難」「書類紛失」といった旅行中の予期せぬアクシデントに関係しています。
ここでは、特に発生件数が多く、旅行者が注意すべき代表的なトラブル事例を紹介します。
旅行中にもっとも起こりやすいトラブルの一つが、病気やケガです。
外務省の「海外邦人援護統計」によると、在外公館などが支援した邦人の援護件数は、毎年1万件を超える規模で推移しています。
例えば2022年の統計では、総援護件数14,454件、援護人数16,895人が報告されており、事故・災害や疾病、けがなど健康に関わる支援も一定数を占めています。
主な発生例としては、以下のものが挙げられます。
また、海外では医療費が高額になることが多く、救急搬送や短期入院で数十万円規模の費用が発生する場合もあります。ただし、国や地域による差が大きい点には注意してください。
旅行前のチェックポイント
国際線では、天候不良や機材整備、空港の混雑、ストライキなどにより、便の遅延や欠航が発生することがあります。日本航空(JAL)の公開データによると、2025年3月時点の国際線の定刻出発率は約82%であり、一定の割合で遅延が発生していることが分かります。
よくあるトラブルとしては、次のようなものがあります。
このようなトラブルは誰にでも起こり得ますが、事前の準備でリスクを大きく減らすことが可能です。
旅行前のチェックポイント
観光地や公共交通機関では、スリ・置き引き・クレジットカードの不正利用が多発しています。
外務省「海外邦人援護統計(2022年)」によると、日本人が海外で被害に遭った窃盗(盗難)関連の援護件数は年間約2,000件にのぼり、特にフランス・スペイン・イタリアなどの観光都市での報告が目立ちます。
よくある被害例
予防のポイント
パスポートの紛失や盗難は、海外旅行中に多いトラブルの一つです。外務省「海外邦人援護統計(2022年)」によると、日本人が海外で窃盗・盗難被害に遭った援護件数は年間約2,000件に上り、パスポート紛失・盗難も多く含まれています。
パスポートを失った場合は、現地警察で盗難・紛失届を提出し、その証明書を持って最寄りの在外公館(大使館または総領事館)で再発給や「帰国のための渡航書」発行を申請します。
申請には、警察の届出証明書、証明写真、本人確認書類(運転免許証など)が必要です。交付までには数日かかる場合もあります。
予防のポイント

海外旅行中にもっとも大きな出費につながるトラブルの一つが「医療費」です。軽い体調不良でも診察料が数万円、入院・手術となると100万円を超えるケースも珍しくありません。
特に旅行者は公的医療保険の対象外となるため、地域によっては救急搬送だけで高額請求を受けることもあります。
ここでは、国・地域別の医療費の目安と、万が一に備えるための保険対策を整理します。
海外での医療費は、国や地域、病院の等級によって大きく異なります。旅行者や非居住者は、公的医療保険の対象外となるため、診療費を全額自己負担するケースがほとんどです。
ここでは、実際に病院が公開している料金表や現地報道に基づく医療費の一例を紹介します。
カナダでは医療制度が州ごとに運用されており、州保険に未加入の訪問者は「Non-resident(非居住者)」料金が適用されます。
例えば、オンタリオ州オタワの Queensway Carleton Hospital(QCH) が公開している料金表では、次のような費用が示されています。
| 医療サービス | 費用(カナダドル) | 出典 |
| 外来・救急受診 | 約 1,191 CAD | Queensway Carleton Hospital – Without Health Insurance Fees |
| 一般病棟入院 | 約 3,810 CAD/日 | 同上 |
| ICU(集中治療室) | 約 13,764 CAD/日 | 同上 |
| 救急車搬送 | 約 240 CAD/回 | 同上 |
1カナダドル=約110円で換算すると、外来で約13万円、ICUでは1日あたり約150万円に相当します。短期入院や検査でも高額請求となることが多く、旅行保険の加入は必須といえます。
アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパなどでは、非居住者が公立病院を利用する際の料金体系が統一されておらず、各病院の「チャージマスター(標準請求額)」に基づいて算出されます。
これらの地域では、入院費が1日あたり数十万円~100万円を超えるケースもあり、救急搬送費や医療航空搬送費用は別途請求されます。
したがって、渡航前に「治療・救援費用」を十分にカバーできる旅行保険を準備しておくことが重要です。
特に重要なのは、海外旅行保険の補償内容です。目安として、「治療・救援費用1,000万円以上」の補償を備えたプランを選ぶと安心です。
渡航前のチェックリスト
海外では、治療費が日本よりもはるかに高額になるケースが少なくありません。外務省も「十分な補償内容を備えた海外旅行保険の加入は必須」と呼びかけています。
特に、以下の項目をチェックしておくと安心です。
| チェック項目 | 内容 |
| 治療・救援費用 | 入院・手術・救急搬送・帰国搬送などをカバー。上限は1,000万円以上が安心。 |
| キャッシュレス診療対応 | 病院が保険会社へ直接請求できる仕組み。現地での立て替え不要でスムーズに受診可能。 |
| 携行品損害 | スーツケース・スマートフォン・カメラなどの破損や盗難を補償。 |
| 旅行キャンセル・遅延補償 | 欠航や体調不良によるキャンセル費用をカバー。 |
| 24時間日本語サポート | 通訳や病院案内、家族への連絡などを日本語でサポート。 |
海外では、医療機関によって支払い方法や請求額が大きく異なることがあります。「キャッシュレス診療対応」や「救援費用補償」の有無は、渡航先での安心度を左右する重要なポイントです。
旅行前には、加入中のクレジットカード保険や旅行保険の補償内容を一度確認し、治療・救援費用の上限・対象範囲・除外項目をしっかり把握しておきましょう。
海外でトラブルに遭った際は、まず落ち着いて行動することが大切です。慌てて動くと二次被害を招くこともあるため、以下の順序で対処しましょう。
人混みや現場からすぐに離れ、安全な場所に移動します。盗難や暴行の被害に遭った場合は、犯人を追わず、身の安全を最優先にしましょう。
事件・事故・病気の際は、まず警察や医療機関に連絡し、必要な書類(診断書や届出証明書)を入手します。保険会社への連絡はできるだけ早く行い、サポート窓口やキャッシュレス提携病院の案内を受けましょう。
※緊急連絡先はスマートフォンや保険証書に保存しておくと安心です。
パスポート紛失や医療・法律関係の支援が必要な場合は、最寄りの在外公館に相談します。再発行手続き、医療機関や弁護士の紹介、家族への連絡支援などを受けられます。
現地で発行された領収書、診断書、警察届出証明書、宿泊・交通関連の記録などは、帰国後の保険請求やトラブル証明に必要となります。可能であれば、写真・メール・通話記録なども併せて残しておきましょう。
ポイント

海外では、日本と異なる感染症が流行している地域が多く、渡航先の衛生環境や気候、医療事情によってリスクが大きく変わります。
特に発展途上国や熱帯地域では、食事・水・蚊・動物などを介して感染する病気が多く、体調不良の多くは予防接種や健康管理で防ぐことが可能です。
出発前に、自分の体調と渡航先の感染症情報を確認し、必要に応じてワクチン接種を検討しましょう。厚生労働省の海外安全・健康情報サイト「FORTH」では、国や地域ごとに推奨されるワクチン・感染症対策が紹介されています。主な地域別の例は以下のとおりです。
| 地域 | 主な推奨ワクチン・感染症対策 | 備考 |
| 東南アジア | A型肝炎、腸チフス、破傷風、狂犬病 | 食事・水・動物を介した感染が多く、屋台や生水に注意。蚊媒介感染症(デング熱)対策も重要。 |
| 中南米・アフリカ | 黄熱、狂犬病、マラリア、A型肝炎 | 黄熱ワクチンは入国条件として求められる国もあり、国際予防接種証明書(イエローカード)が必要。マラリア予防薬の服用を推奨。 |
| 欧米・都市部 | インフルエンザ、麻疹・風疹、破傷風 | 渡航前に基礎免疫(定期接種)が最新かを確認。欧米では麻疹や百日咳の流行が見られることも。 |
一部のワクチン(例:狂犬病、A型肝炎、B型肝炎など)は複数回の接種が必要で、1回目から十分な免疫が得られるまで数週間かかります。このため、出発の2~3カ月前には医師に相談し、渡航期間や目的に合わせた接種スケジュールを計画的に立てることが大切です。
また、基礎疾患がある方や妊娠中の方は、接種できるワクチンが限られる場合があります。健康状態を踏まえて、専門の医師と相談しましょう。
海外旅行では、体調不良や盗難、フライト遅延など、思わぬトラブルに見舞われることがあります。しかし、出発前の準備と正しい知識があれば、多くのリスクを未然に防ぐことができます。
| ステップ | 内容 |
| ① 予防 | 渡航先の気候や衛生環境を調べ、必要なワクチンや常備薬を準備。感染症対策(A型肝炎・破傷風・狂犬病など)は早めの確認が大切です。 |
| ② 保険 | 医療費・救援費を補償する海外旅行保険に加入しましょう。特に「治療・救援費用1,000万円以上」「キャッシュレス診療対応」「24時間日本語サポート」があると安心です。 |
| ③ 対応 | トラブル発生時は落ち着いて行動を。警察 → 保険会社 → 領事館の順に連絡し、領収書や届出証明書を必ず保管します。 |
海外では、医療費や感染症、盗難などによる負担が日本よりもはるかに大きいのが現実です。旅行を安全に楽しむためには、次の2点を「旅行準備の基本」として押さえておきましょう。
ワクチンナビでは、渡航先や目的に合わせて最寄りのトラベルクリニックを検索できます。出発の2~3カ月前から、感染症予防・健康準備・保険の確認を始めて、安心して世界を楽しむ旅に出かけましょう。
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