公開日:2025.10.22更新日:2025.10.22

海外渡航の予防接種は当日でも受けられる?即日接種できるワクチンと注意点


海外出張や旅行の予定が急に決まると、「予防接種を受ける時間がない」と焦る方も少なくありません。ワクチンの種類によっては出発当日でも接種できる場合があります。ただし、免疫が十分にできるまでには時間がかかるため、できるだけ早めに行動することが大切です。この記事では、当日接種が可能なワクチンの種類や注意点、スムーズに受けるための準備について詳しく解説します。

出発直前でも間に合う?海外渡航時の予防接種

海外出張や留学、旅行の予定が急に決まると、「もう予防接種を受ける時間がないのでは」と不安になる方も多いでしょう。

実際、ワクチンによっては複数回接種が必要だったり、証明書発行に時間がかかったりすることもありますが、当日でも接種できるワクチンがあります。

出発直前にワクチン接種をしたい場合に頼りになるのが、海外渡航者向けのワクチン接種を専門に行う「トラベルクリニック」です。

トラベルクリニックとは?

「トラベルクリニック」とは、海外渡航者の感染症予防や健康管理を専門的に行う医療機関です。

主な診療内容には、以下のような項目が含まれます。

  • 渡航先や滞在期間に応じたワクチンの提案・接種
  • マラリア予防薬・高山病対策薬などの予防薬処方
  • 英文診断書や予防接種証明書の発行
  • 渡航先の感染症リスク情報の提供

全国の主要都市には、渡航外来を設けている病院や専門クリニックがあり、当日予約や即日接種に対応している施設もあります。

当日でも接種できる?

出発が迫り、「まだ予防接種を受けていないけれど、今からでも間に合うのだろうか」と不安に感じる方も少なくありません。ワクチンの種類やクリニックの在庫状況によっては、当日でも接種できるケースがあります。

ただし、すべての医療機関で対応できるわけではなく、接種してから抗体ができるまでには一定の時間が必要です。

ここでは、当日接種が可能なワクチンの種類や注意すべきポイントを紹介します。

当日接種が可能な場合

多くのトラベルクリニックでは、在庫があるワクチンに限り、当日接種に対応しています。

特に、A型肝炎・破傷風・インフルエンザなどは、即日接種できるケースが比較的多いとされています。また、狂犬病(暴露前2回法)や腸チフス(注射型)も、一部のクリニックで当日接種が可能です。

ただし、すべての医療機関で同じ対応ができるわけではありません。ワクチンの在庫状況や予約枠、診療体制によっては、当日の接種が難しい場合もあります。出発まで時間がない場合は、来院前に電話で確認しましょう。

当日接種が難しい場合

次のようなケースでは、当日に接種できない、または十分な効果が得られない可能性があります。

  • ワクチンの在庫がない、または取り寄せが必要な場合
  • 2回以上の接種が必要なワクチン(例:B型肝炎、日本脳炎など)
  • 接種証明書(イエローカード)が必要な黄熱ワクチン

特に黄熱ワクチンは、接種から10日後に証明書が有効となるとWHOの国際保健規則で定められています。そのため、出発直前の接種では入国条件を満たせないことがあります。このようなワクチンは、余裕を持って事前予約を行ってください。

免疫ができるまでの期間

当日接種できたとしても、すぐに免疫(抗体)が完成するわけではありません。多くのワクチンでは、抗体が十分に形成されるまでに2~4週間程度かかります。

CDC(米国疾病予防管理センター)は、旅行者に対して「出発の4~6週間前までにワクチン接種を開始するのが理想的」としています。

出発日が迫っているとしても、出発直前でも部分的な免疫を得られる可能性があるワクチン(例:A型肝炎、破傷風、インフルエンザ)もあります。「もう遅い」と諦めず、医師に相談して可能な範囲で接種しておきましょう。

当日接種をスムーズに受ける準備

出発直前でも、事前の確認と持ち物の準備をしておくことで、当日の接種をスムーズに進められます。

ここでは、当日接種を希望する際に押さえておきたい2つのポイントを紹介します。

1. 事前にクリニックへ連絡

トラベルクリニックは、予約制が一般的です。当日接種を希望する場合は、午前中のうちに電話で連絡し、ワクチンの在庫や接種可否を確認しておきましょう。

「当日予約・即日接種可」と記載があっても、混雑状況やワクチンの種類によっては対応できない場合があります。

2. 必要な持ち物を準備しておく

当日スムーズに受診するためには、次の書類をあらかじめ用意しておくと安心です。

  • 健康保険証
  • パスポート(英文証明書の作成時に必要)
  • 渡航先・滞在期間を記したメモ
  • 母子手帳(過去の接種歴を確認)
  • お薬手帳(既往歴や服薬情報を確認)

また、ワクチンの種類によっては既往症やアレルギーの有無を確認されるため、問診票を事前に記入しておくと、受付や診察がスムーズに進みます。

当日接種できるワクチンの一例

出発が間近でも、「どのワクチンなら当日に接種できるのか」を知っておくことは大切です。

ワクチンによっては、在庫があれば即日接種が可能なものもありますが、種類によっては複数回の接種や事前予約が必要な場合もあります。

ここでは、当日接種が可能なワクチンと、抗体ができるまでの目安を一覧で紹介します。

ワクチン名 当日接種の可否※ 抗体ができるまでの目安 備考・補足
A型肝炎 ◯(在庫があれば当日接種可) 約2~4週間 2回接種で長期免疫を獲得。出発直前でも1回目接種で一定の効果あり。
B型肝炎 △(接種は可能だが3回必要) 約3~4週間 3回接種が標準(0・1・6カ月)。出発直前の場合は短縮スケジュール(加速法)を医師に相談。
狂犬病(暴露前) △(0日・7日の2回法で短期対応可) 約2週間 0日・7日の2回法を採用する国もあり。ただし、国内すべての施設で対応しているわけではない。
黄熱 ✕(事前予約必須) 接種10日後に有効 接種証明書(イエローカード)は接種後10日で有効化(WHO国際保健規則)。指定医療機関でのみ接種可能。
日本脳炎 △(当日接種可だが2回必要) 約2~4週間 2回接種が原則(1~4週間間隔)。長期滞在者・農村部渡航者は早めに準備が必要。
腸チフス ◯(注射型は当日可) 約10~14日 注射型は1回接種で可。経口型は4回服用(1日おき)で即日完了不可。

「◯」=在庫・医師判断により当日接種可
「△」=接種は可能だが回数・間隔の関係で効果が限定的
「✕」=制度上・法的に当日完了が不可能

参考

費用の目安

海外渡航の予防接種は、原則として自費診療です。費用はクリニックやワクチンの種類によって異なりますが、以下が一般的な目安です。

ワクチン名 一般的な費用目安(1回あたり) 備考・補足
A型肝炎 約7,000~15,000円 2回接種で長期免疫を獲得。出発直前でも1回目の接種で一定の効果あり。
B型肝炎 約5,000~9,000円 3回接種(0・1・6カ月)が標準。短期滞在者は加速スケジュールを要相談。
狂犬病 約15,000~20,000円 暴露前接種(0日・7日または0・7・21日法)。施設によって料金・ワクチン種が異なる。
黄熱 約18,000~23,000円(証明書含む) 検疫所・指定医療機関のみで接種可能。接種10日後に証明書(イエローカード)が有効化。
腸チフス 約8,000~11,000円 注射型は1回接種、経口型は4回服用。海外出張者・留学生に推奨される。
日本脳炎 約6,000~8,000円 2回接種が基本。長期滞在者・農村部渡航者は早めの準備が必要。
インフルエンザ 約3,000~5,000円 シーズンごとに接種。渡航前でも即日接種可能。

そのほかの費用

ワクチン接種の費用以外にも、初診料や証明書発行料などが別途必要となる場合があります。

留学やビザ申請を目的とする場合は、英文証明書の作成費用が発生するケースが多いため、あらかじめ確認しておくと安心です。

以下に、代表的な追加費用の目安をまとめました。

項目 費用目安 補足
初診料・再診料 約1,000~3,000円 ワクチン代とは別に発生。
英文接種証明書作成料 約3,000~6,000円前後 留学・ビザ・出張時に必要。施設によっては10,000円を超える場合もあり。
相談料・診察料 約2,000~5,000円 渡航目的や地域に応じて医師が接種計画を立案。

 

各ワクチンの費用相場や追加料金の内訳を、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

海外渡航の予防接種の料金は?ワクチン別の相場と注意点を解説

当日でも諦めず、医師に相談を

出発が間近でも、当日接種で一定の効果が期待できるワクチンもあります。ただし、免疫が十分に形成されるまでには時間がかかるため、早めの受診を心がけましょう。

少しでも迷った場合は、まず医師に相談することが大切です。

「どのワクチンを受けるべきか分からない」「当日対応できるクリニックを探したい」という方は、「ワクチンナビ」から最寄りのトラベルクリニックを検索してみましょう。

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記事担当:ワクチンナビ編集部

「ワクチンNavi」 は渡航前に確認しておきたい感染症の情報や、旅行・渡航に役立つ豆知識など様々な情報を発信しております。

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