公開日:2025.05.28更新日:2025.05.28

妊娠中の海外旅行は大丈夫?旅行前に知っておきたいポイント


「妊娠中でも旅行を楽しみたい」と考える方は多いかもしれません。しかし、妊娠中の海外旅行には、体調の変化や万が一のトラブルに備えた入念な準備が欠かせません。

旅行に適した時期や飛行機の乗り方、渡航先の医療体制や持ち物のチェックまで、事前に確認しておくべきことは意外と多いものです。

この記事では、妊娠中に安心して海外旅行をするために知っておきたいポイントについて、分かりやすく解説します。

妊娠中の海外旅行に適した時期は?

妊娠中でも体調が安定していれば海外旅行は可能ですが、比較的適した時期は「妊娠中期(14~28週ごろ)」です。

この時期はつわりが落ち着き、流産のリスクも低くなり、体調が安定しやすいためです。

一方、妊娠初期(~12週ごろ)は流産リスクが高く、つわりも重くなりがちです。

また、妊娠後期(8カ月以降)は早産や陣痛の可能性が高まります。そのため、妊娠初期と後期は、長時間の移動は避けるのが望ましいとされています。

また、多くの航空会社では妊娠28週以降の搭乗に「医師の診断書」を求めており、36週以降になると基本的に飛行機に乗れない規定が一般的です。そのため、海外旅行は妊娠中期に計画すると安心です。

海外旅行の前に医師に相談を

妊娠中の旅行は、時期が適していても体調や妊娠の経過によっては控えたほうがよい場合があります。

例えば、持病がある方や、妊娠中に出血やおなかの張りが続いている方は、長時間の移動が体に負担をかける可能性があります。

旅行前には、必ずかかりつけの産婦人科で診察を受け、行ってもよいか医師の判断を仰ぎましょう。

その際には、出産予定日やおなかの赤ちゃんの状態、母体の健康などをチェックしてもらいます。

また、もし旅先で病院を受診することになった場合に備えて、英文の診断書や紹介状、母子手帳のコピーを持参しておくと安心です。これがあると、現地の医師にも正確に妊娠の状況を伝えられます。

自己判断で無理に旅行をすると、現地で適切な対応が受けられないリスクがあるため、必ず事前に医師に相談しましょう。

妊娠中に飛行機に乗る際の注意点

妊娠中に飛行機で長時間移動する際は、体への負担や健康リスクを十分に理解し、事前の準備が欠かせません。

特に注意したいのが「エコノミークラス症候群」です。これは、長時間同じ姿勢で座っていることで足の血流が悪くなり、血栓ができやすくなる状態で、妊娠中はそのリスクがさらに高まります。

血栓が肺に移動すると、命に関わる「肺塞栓症」を引き起こすおそれもあります。

予防のためには、フライト中は1~2時間ごとに軽いストレッチや歩行を行い、こまめに水分を摂取しましょう。

アルコールやカフェインは避けてください。着圧ソックスの着用や、ゆったりとした服装を選ぶのも効果的です。

乾燥を防ぐために水分を携帯し、シートベルトはおなかの下(腰骨あたり)で着用するようにします。

併せて、航空会社の搭乗規定も事前に確認しておくことが重要です。

多くの航空会社では、妊娠28週を過ぎると医師の診断書の提出を求められ、出産予定日が近い36週以降の搭乗は基本的に認められていません。

JALでは、出産予定日の28日以内は診断書が必要、7日以内では医師の同伴が求められるケースもあります。

参考:妊娠中ですが、飛行機に乗れますか。

フライトの往復で妊娠週数が変わることにも注意が必要です。

帰国時に週数が進んでいて搭乗できない、という事態を防ぐためにも、旅程を決める前に必ず産科医と相談し、診断書や必要書類をそろえておきましょう。

客室乗務員に妊娠中であることを伝えておけば、体調が急変したときにも適切にサポートしてもらえます。

海外旅行保険の補償内容を確認しよう

妊娠中に海外旅行をする場合は、万が一の事態に備えて、海外旅行保険への加入が欠かせません。

基本的に妊娠や出産に関する治療には公的保険が使えず、医療費は全額自己負担になります。

特に早産で赤ちゃんがNICU(新生児集中治療室)に入院することになれば、数百万円から数千万円に及ぶ高額な費用がかかる可能性があります。

そのため、旅行保険に加入する際には、妊娠中の治療や早産、流産が補償の対象になっているかどうかを必ず確認しましょう。

保険によっては、妊娠初期の流産や合併症は対象でも、出産予定日が近い場合の早産や通常の出産は補償されないことがあります。

渡航前に保険会社や代理店に問い合わせて、自分の滞在期間や妊娠週数に合った保険を選びましょう。

また、現在加入している医療保険やクレジットカードの付帯保険が、海外でも利用できるかどうかも確認が必要です。

クレジットカードの保険は、妊娠に関するトラブルが対象外となっていることが多いため、必ず確認しましょう。

万一の場合に備えて、クレジットカードの利用限度額も事前に引き上げておくと安心です。

海外では、治療前に保証金やデポジットを求められるケースもあるため、準備は念入りにしておきましょう。

緊急時の備えを忘れずに

妊娠中の旅行では、母子健康手帳と主治医の診断書が非常に重要です。

母子手帳には妊娠週数や健康状態が記録されており、現地で受診が必要になった際に役立ちます。

併せて、妊娠週数・出産予定日・合併症の有無などを記載した英文の診断書・紹介状を、主治医に作成してもらいましょう。そうすることで、海外の医療機関でも迅速な対応を受けやすくなります。

普段から服用している薬がある場合は、英文の薬剤情報(成分・用法)とともに持参しましょう。

妊婦が使用できる市販薬(アセトアミノフェンなど)も備えておくと安心です。

また、服装は締めつけの少ないものや羽織れる上着を選び、冷えを防ぎましょう。

履き慣れた靴、腹帯やサポートタイツなど、体調を支えるアイテムも準備しておくとよいでしょう。

海外には日本のような「マタニティマーク」がないため、妊娠中であることを伝える英語表記のカード(例:I am pregnant.)を持っておくと、緊急時に助けを求めやすくなります。

さらに、滞在先近くの参加に対応している病院の連絡先や、現地の救急番号、日本大使館・領事館の連絡先も控えておきましょう。

外務省の「たびレジ」に登録すれば、現地の感染症情報や緊急時の支援も受けやすくなります。

渡航先の医療体制や感染症リスクを確認

妊娠中に海外へ渡航する場合は、現地の医療体制と感染症のリスクを事前に確認しておくことがとても重要です。

例えば、先進国の大都市であれば医療環境が整っていて、妊婦健診や出産にも対応できる医療機関があることが多いです。

しかし、発展途上国や離島などでは、妊婦に対応できる病院が近くになかったり、医療体制そのものが不十分だったりする場合もあります。

また、日本の健康保険は海外では使えないため、診察や入院が必要になった際は、すべて自費で支払うことになります。

妊娠中の医療費は高額になることが多く、渡航前に十分な補償内容の海外旅行保険に加入しておくことが大切です。

さらに、現地で流行している感染症が妊婦や胎児に大きな影響を及ぼす可能性があるため、感染症の情報にも注意が必要です。

特に注意すべき感染症と対策は以下のとおりです。

 

感染症名 主な流行地域 妊婦へのリスク 対策
ジカウイルス感染症 中南米、東南アジアなど 胎児が小頭症などの先天異常を起こす可能性 流行地域への渡航を控える。
マラリア アフリカ、アジア、中南米 妊婦が感染すると重症化、流産や貧血のリスク 渡航は原則避ける。どうしても行かなければならない場合は医師に相談。
風しん 一部の海外地域 妊娠20週までの感染で胎児が障害を負うおそれ(先天性風しん症候群) ワクチン接種不可。手洗いやマスクなどの感染予防を徹底。
麻しん(はしか) 世界中で流行地域あり 妊婦が感染すると重症化や流産・早産のリスクがある 抗体がない場合は渡航を控える。

 

目的地の感染症情報は、厚生労働省の「FORTH(検疫所)」や外務省の「海外安全ホームページ」などで必ず確認しましょう。

感染症リスクが高い地域への渡航は、時期や場所を見直す判断も大切です。

妊娠中のワクチン接種について

海外では、妊婦や胎児に深刻な影響を及ぼす感染症が存在します。

これらの多くはワクチンで予防可能ですが、妊娠中は接種できないものもあり、より慎重な対応が求められます。

例えば、風しんは予防接種で防げる感染症ですが、「風しんワクチン」は生ワクチンのため妊娠中の接種は禁忌です。

妊娠20週ごろまでに風しんに感染すると、胎児が難聴や心疾患などの「先天性風しん症候群」を発症するおそれがあります。

妊娠前に免疫があるか抗体検査で確認し、免疫がなければ妊娠前に接種しておく必要があります。

同様に、麻しん(はしか)もワクチンで予防可能ですが、妊娠中は接種できません。

感染すると妊婦は重症化しやすく、流産や早産のリスクもあります。

抗体がない方は、妊娠中の渡航を控えるか、人混みを避け、手洗いやマスクで感染予防に努めましょう。

また、黄熱病もワクチンでの予防が基本ですが、生ワクチンのため妊婦には原則接種できません。

流行地域にどうしても行く必要がある場合は、妊娠中期以降に医師と相談の上で接種を検討することがあります。

参考:風しんについて(厚生労働省)

一方、インフルエンザやA型肝炎、破傷風などは「不活化ワクチン」であり、妊娠中でも安全に接種できます。

特にインフルエンザは妊婦がかかると重症化しやすいため、流行シーズンと渡航が重なる場合は事前の接種が推奨されます。

このように、感染症とワクチンの関係性を正しく理解し、渡航前に主治医と相談して、必要な予防策を講じることが重要です。

まずは「ワクチンナビ」で最寄りのトラベルクリニックを検索し、渡航スケジュールに合わせた接種計画を立てておくと安心です。

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記事担当:ワクチンナビ編集部

「ワクチンNavi」 は渡航前に確認しておきたい感染症の情報や、旅行・渡航に役立つ豆知識など様々な情報を発信しております。

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